「未来をともに築く」〜鹿島アントラーズクラウドファンディングプロジェクトの未来〜

2020.10.07(水)
ホームタウンの理解と協力がなければ、今回のふるさと納税型クラウドファンディングプロジェクトは、実現しえなかった。

プロジェクトの開始前から、「ホームタウンの代表として、鹿嶋市がふるさと納税型クラウドファンディングを実施し、アントラーズを支援することを決めました(錦織 鹿嶋市長)」と、鹿嶋市、そして他のホームタウン4市(潮来市、神栖市、行方市、鉾田市)から大きな理解と協力を受けていたが、それはこの30年の間、鹿島アントラーズがホームタウンと築いてきた関係性の証でもある。

今回のクラウドファンディングプロジェクトを踏まえ、これからアントラーズとホームタウンがどのように関係を深めていくのか。本プロジェクトの中心として動いた2人の対談から、その未来を知る。

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寺嶋博信(鹿島アントラーズ マーケティンググループ 地域連携チーム):
今回実施しました鹿島アントラーズクラウドファンディングプロジェクトでは約1ヵ月半という短い期間で、1億3,000万円を超える寄附金が全国のファン・サポーターの皆様から集まりました。コロナ禍という難しい状況の中でも、クラブを厚くご支援いただいたことにアントラーズファミリーの力を改めて深く感じました。この場をお借りして、改めて深く感謝申し上げたいと思います。

茂垣さんからは今回のプロジェクトについて、鹿嶋市としての感想をいただきたいと思います。

茂垣諭(鹿嶋市 政策企画部 政策秘書課):
率直に言って、「やって良かった」、「集まって良かった」、「やっぱりアントラーズってすごいな」ですね。「やって良かった」というのは、寄付者の皆様のコメントを全て読ませていただきましたが、本当にグッと来るものばかりでした。皆様の思いを深く感じられたと同時に、ホームタウンとアントラーズの結束を改めて内外に示せたということが、このプロジェクトを「やって良かった」というところだと思います。

「集まって良かった」というのは、アントラーズはやっぱり勝利にこだわるクラブ。「1億円」という大きな目標を掲げて「集まりませんでした」というのは、アントラーズとしては通用しないところだと思います。最終的に1億円を超える大きな金額が集まったので本当に良かったです。

そしてこのコロナ禍でみんなが大変な時期なのに、「アントラーズを応援しよう」という思いがファン・サポーターの方々、そして市民の皆様から多く寄せられ、アントラーズが持つ、みんなの心を惹きつける力は改めてすごいなと感じたところです。

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寺嶋:
このホームタウンにあるクラブとして、我々は鹿嶋市をはじめホームタウンのご協力があったからこそやり遂げることのできたプロジェクトだと思っています。そして全国のファン・サポーターの方々にも、鹿嶋市とクラブの関係性を知ってもらえるいい機会になりました。他の地域に住んでいらっしゃる方には、もしかすると見えにくいかもしれない自治体とクラブのつながりも示せたことが、我々にとっても大きかったかと思います。今回のプロジェクトに関して、市民の皆様からはどんなお声を頂戴しましたか?

茂垣:
コロナ禍の影響でみんなが苦しい思いをしている中でも、「アントラーズへの支援」という形のクラウドファンディングを行ったことについて、私たちのところにご批判など厳しいご意見は一件も来ていません。むしろ今までにないような取り組みをスピード感を持って実行できたことに関して、「関係各所をよくぞ説得してくれた」とか「(クラブと)支え合う関係が、Jリーグの理念に合っている」といったお話をいただきました。

寺嶋:
本当にJリーグが掲げる地域密着の理念を示すことができたプロジェクトだと思います。こういった観点から、他の自治体からも色々なご質問やお問合せが来ているそうですね。

茂垣:
横浜F・マリノスさんのホームタウンである横浜市さん、名古屋グランパスさんのホームタウンである豊田市さんなどから、今回の「ふるさと納税」方式についてのご質問をいただきました。例えば、集まった寄附金をどのようにアントラーズに渡すのかといった手続き面に関してですね。行政的にも前例のないやり方だったので、どういった手続きが必要なのか、そしてプロジェクトのきっかけから設計まで、関心を持っていただきました。

また大分で市議をされている、元日本代表の高松大樹さんは実際、鹿嶋市まで視察に来てくださりました。直接、今回のプロジェクトに関してご説明できたことを嬉しく思います。

寺嶋:
他の自治体からも注目されたプロジェクトだったわけですね。

茂垣:
そうですね。ただ皆さん、「鹿嶋市とアントラーズの関係性だからこそ、できたことですね」と仰っていました。

寺嶋:
そう言っていただけるのは、本当に嬉しいです。鹿嶋市にとって、改めてアントラーズがあるということの意義は何だと思いますか。

茂垣:
私自身、アントラーズが大好きで鹿嶋市に移住してきた人間です(笑)。業務として「移住促進」も担当しており、「鹿嶋市に移り住みたい」という方々の相談も承るのですが、「鹿嶋市のイメージってなんですか?」とお伺いすると、皆様、「鉄の町、鹿島神宮、アントラーズ」と口をそろえて仰います。逆に市内の高校生にインタビューする機会があったので、同じことを聞いてみたら、やっぱり「鉄の町、鹿島神宮、アントラーズ」だと。外からの認知も内に住んでいる市民の皆様のアイデンティティーにも、アントラーズというものが深く刻まれているのだと思います。

市役所の中でも、昨日の天気と同じレベルで、週末の試合の話になりますからね(笑)。いい話、悪い話それぞれありますが、それで一日がスタートします。アントラーズというクラブは人が集まる、賑わいの場という側面がフォーカスされているかもしれませんが、これまで地域にしてくれた社会貢献活動という面でも、市民にとって、また市外の皆様にとっても社会的な存在になっていると私は思います。

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寺嶋:
アントラーズが"日常のもの"であることは大変嬉しいことです。鹿嶋市として、これからアントラーズに期待したいことはありますか?

茂垣:
これからの鹿嶋市とアントラーズの関係という観点でいえば、期待したいことは2つあります。1つは、これまで"プロフットボールクラブ"としてのアントラーズとのお付き合いが前面にありました。これからは今年初めにメルカリ、アントラーズ、鹿嶋市で包括連携協定を結んだことによって、"ビジネスサイド"のアントラーズと一緒に「まち作り」をしていきたいなと考えています。もう1つは、アントラーズという"会社"の持つスピード感や変化に対するレジリエンス(適応能力)、そしてメンタリティーですね、これらを行政としてもモデルや規範として学ばなければいけないし、取り入れていかなければならないと思います。アントラーズに刺激を受けながら、行政としても変わっていかなければならないと考えています。

寺嶋:
フットボールという側面だけではなく、会社全体としてクラブを見ていただいていることは大変ありがたいですね。お互いがお互いを支えていければ、今後もより良い関係性を築くことができるかと思います。

茂垣:
私たちの社会が変容していき、デジタル化も進み、生活の基盤となる仕事の面でも生産性や効率性を見直していくスピードが加速化していくと思います。今回のクラウドファンディングプロジェクトのきっかけも、実はアントラーズと鹿嶋市がこの地域に"スマート化"していこう、そのための資金をクラウドファンディングで集められないかというアイデアにありました。コロナ禍の影響の推移も見つつ、「スマートシティープロジェクト」も、改めてアントラーズ、そしてメルカリの力を借りながら、推進していきたいと考えています。

寺嶋:
今後の状況がどうなるかというのは、お互いに注意していかなければいけないと思いますが、まずはフットボールが日常に戻って来つつあります。全国各地のファン・サポーターの皆様でカシマスタジアムが満員になる景色をまた見られる日も近い。その将来が早く訪れることを心待ちにするとともに、この苦しい状況の中でもアントラーズを支えてくださったファン・サポーターの皆様に改めて深く感謝申し上げたいと思います。また鹿嶋市からもメッセージがございましたら、お願いいたします。

茂垣:
今回、総額で1億3,000万円、そして2,500名を超える皆様から、鹿嶋市を通してアントラーズを応援したいという熱い思いをいただきました。鹿嶋市としてお預かりした寄附金は大変な状況にあるアントラーズへ速やかにお渡しして、コロナ禍、さらに将来の困難な状況においても、持続可能なクラブ経営体制や運営体制を作っていく機会にしていただければと思います。

これからもファン・サポーターの皆様からは、鹿嶋市と強いアントラーズに期待していただければと思います。

寺嶋:
今回、直接届けていただいたファン・サポーターの皆様の熱い思いを胸に、我々アントラーズとしては鹿嶋市をはじめとするホームタウンとともに新たな未来を築き上げ、そして皆様に勝利と元気を届けていけるように努めていきたいと思います。これからも引き続きよろしくお願いいたします!

茂垣:
よろしくお願いいたします!



【プロフィール】

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寺嶋 博信(てらしま ひろのぶ)
鹿島アントラーズ マーケティンググループ 地域連携チーム
1986年 宮城県亘理郡山元町生まれ
大学院修了後、民間企業や障がい者スポーツ団体勤務を経て、2018年4月に鹿島アントラーズへ入社、マーチャンダイジングを担当する。2019年9月より現職となり、ホームタウン各市との連携や地域企業とのライセンスビジネスなどを担当


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茂垣 諭(もがき さとし)
鹿嶋市 政策企画部 政策秘書課 課長補佐
1980年 茨城県つくば市生まれ
大学卒業後、民間企業を経て、2006年に鹿嶋市役所へ入庁。2019年より現職となり、地方創生、復興交付金事業、スマートシティー事業などを担当。幼少の頃から熱烈なアントラーズサポーター