鹿行の道を巡る〜カシマ神社を巡った先に〜

2020.10.14(水)
鹿島アントラーズがアカデミックアライアンス(学術連携協定)を結んでいる筑波大学の学生さんたちが「必勝祈願カシマップ」(https://kashima-hakken.com/)という企画をネット上でスタートさせた。

全国に広がる鹿島神社、鹿嶋神社を探し、写真を投稿してもらおうという企画で、参画者が増えれば「カシマ」の名の広がりが見えてくる。地域の探究を地域の活性化につなげようという狙いもある。

私も試しに鉾田市にある「カシマ神社」を走って巡ってみた。スマホを頼りにして、ほっとパーク鉾田を起点に走り始めると、鉾田総合公園に近い住宅地の中に小さな鹿島神社が見つかる。


鳥居をくぐり、社林の中に潜り込むと、緑に覆われた異空間が広がり、奥にひっそりと赤い社殿が収まっている。そこは俗世と隔絶された小宇宙であり、一人でたたずんでいると身震いがする。

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県道の茨城鹿島線に出て北上していくと、細い木の鳥居が目に入る。ここも鹿島神社だという。鳥居をくぐって蜘蛛の巣だらけの細い急坂を上ると、ちっぽけな祠が座している。

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さらに北に向かうと茨城百景(昭和25年選定なので、資料にある所在地は鹿島郡)に選ばれている無量寿寺にたどり着く。親鸞が鹿島神宮参詣の折に立ち寄り、近隣住民の願い通り、幽霊を成仏させたと伝わる。

存在すら知らなかったが、山門をくぐってみた古寺が鹿島神宮にも縁があることを知った。偶然のめぐり逢いがあるから、この手のファンランは楽しい。まさに自分の脚だけを頼りにした小旅行だ。

無量寿寺の先で左折して巴川を渡り、南進したところに、森を背にした香取鹿島神社がある。国譲りの神話の主役であるタケミカヅチを祀る鹿島神宮とフツヌシを祀る香取神宮の香取、鹿島を冠する神社だが、ここもひっそりとしている。

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午前6時半、その静寂の中で鐘の音がおごそかに響いた。巴川を挟んだ向こうの無量寿寺の鐘なのだろう。川や森の営みと人の営みがシンクロしているのを感じる。

神社を離れ、巴川沿いの未舗装路を進む。この川は笠間市、小美玉市を経て鉾田市で北浦に注ぐ。このあたりの川幅は5メートルを少し超えるほどで、水深は膝あたりまでしかない。

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川の中に人影がある。蒲だろうか、葦だろうか、その根本を網で探っている。尋ねると、狙いはカワエビなどだという。どこにでもある川ではあるが、エビ獲りの姿が加わると風情が増す。

そのまま未舗装路を走っていくと、2007年に廃線になった鹿島鉄道線(石岡~鉾田)の鉄橋をくぐる。中学生の頃、いまでいう「撮り鉄」だった私は、こういう遺構を目にすると胸が躍る。

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鉾田市の鹿島神社を巡る気にならなかったら、この気持ちのいい道を辿ることはなかっただろう。これぞ「マイクロツーリズム」なのではないかと思う。自宅からさほど遠いところではない土地での偶然の小さな出逢いの数々に感謝する。

文・写真:吉田(地域連携チーム)

【参照】
筑波大学の学生有志による「必勝祈願カシマップ」サイトもぜひご覧ください!