鹿行の道を巡る〜河川に挟まれた水の郷〜

2020.09.25(金)
神栖市から水郷道路の鰐川(わにがわ)橋を渡って潮来市に入り、外浪逆浦(そとなさかうら)、そして常陸利根川(北利根川)沿いを走る。

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水の郷だけに、このあたりには水神社(水神宮)があまたあり、走り始めるとすぐに一つ、二つ、三つと見つかる。河岸にはチュウサギが珍しく群れをなし、アオサギも数が多い。

堤防上を少し進むと東関東自動車道の常陸利根川橋(約330メートル)をくぐる。この橋の側面には自転車歩行者道が付いていて、実は歩いて(走って)川を渡れる。高速道路上からは確認できない、知る人ぞ知る歩道だ。

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常陸利根川の左岸が潮来市、右岸は千葉県香取市。茨城県との県境を成す利根川の北側に千葉県が食い込んでいる地域だ。利根川の川筋を変える河川改修によって、こういうことが起こった。

試しに歩道で香取市側に渡ってみる。周囲はほとんどが水田だ。まだ足を向けたことはないが、この先の東関東自動車道利根川橋にも同様の自転車歩行者道が設置されているという。住民にとって、この歩道がなかったらさぞかし不便だろうと想像する。

再び常陸利根川を渡って潮来市に戻り、堤防上を走ると遠方に筑波山が山容をのぞかせている。この山が見えるかどうかで空気の澄み具合がわかる。

常陸利根川にはボート競技の公認コースがある。2019年茨城国体が開催され、東京五輪のキャンプ地でもある。川の畔の「潮来市立ボートセンターあめんぼ」は100艇以上のボートを保管でき、この競技の普及・強化の基地になっている。

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川沿いを走っていると、早朝からトレーニングに励んでいるボート選手を見かける。オールを漕ぐ姿が悠然としている。ランニングと同様、ボート競技者の動きは非常にメカニカルであり、テクニカルだ。

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映画にもなったデイビッド・ハルバースタムの名著「栄光と狂気」を読んで以来、ボート競技者の孤高と荘厳にあこがれもし、恐れもする。 

このまま走って行くとJR鹿島線の鉄橋に至るが、そこまで行かず引き返した。鰐川橋に戻る前に少し寄り道をして、2012年に廃校になった旧徳島小学校(潮来市)に足を運んでみる。

映画などのロケ地にもなってきたというが、現在はどうなのだろう。校庭は深い雑草に覆われている。廃校が漂わせる何とも言えぬノスタルジーを味わう。

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ランニングでなかったら、寄り道をする気にはならなかっただろう。思いつきで道を変えてみる。そこに、いい道があり、味のある空間がある。

文・写真:吉田(地域連携チーム)