鹿行の道を巡る〜北浦の湖岸の夏〜

2020.08.14(金)
鹿島神宮の一之鳥居は東西南北に4カ所ある。その中で神宮の象徴ともいえるのが西の一之鳥居だろう。

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水上の鳥居としては日本最大で、高さ18.5メートルを誇る。北浦と鰐川を分ける神宮橋のたもとに立つこの観光スポットは、北浦湖岸を走る場合の起点にしやすい。

私もここで力をいただいてから北浦左岸の堤防を北上していくことが多い。河川と同じく湖沼も上流から下流に向かって右側が右岸、左側が左岸となる。

北浦の場合、左岸に鹿嶋市、鉾田市、右岸に潮来市、行方市、ちょっとだけ鉾田市が位置する。

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左岸を北に向かって走ると、左に北浦、右に水田という景色がずっと続く。稲が実り始めたので、水田に案山子(かかし)が立っている。トンビ型の凧が風に舞っている。これも案山子の役割で、鳥追いカイト鷹というらしい。

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どういうわけかビニール製のトラが四方を囲んでいる水田もある。これで効き目があるのだろうか。

北浦沿いではないが、あまりに早く立てたため、丈が高くなった稲に埋まってしまい、首から上しか見えなくなっている案山子(腕には鉄砲)がある。身を隠して、そっと獲物を狙っているようではないか。

何の利もないが、鹿行を走ると、案山子事情に詳しくなる。

週末になると、北浦にはバス釣りの愛好家が訪れる。車のナンバーを見ると、関東各県から集まり、長い時間を過ごしているのがわかる。霞ヶ浦ほどではないが、風を切って堤防を走る自転車愛好家も数多い。

ランナーにもぜひ「鹿行の道」を味わってほしい。それには、ロッカーやシャワーを備えた「ランナーズステーション」が必要なのかもしれないが。

本格的な夏の訪れとともに草むらが深くなり、水田の脇に立つ小さな鳥居が半ば埋まってしまっている。藪から響いてくるキリギリスの鳴き声が夏を強烈に訴える。この地域にはいったいどれだけのキリギリスがいるのだろうと思わせるほど、どこまで走っても、夏のアピールは続く。

北浦沿いを走るたびに2019年3月の茨城100kウルトラマラソン in 鹿行(ROKKO)での苦闘を思い出す。3月の北浦は風が強く、北上する大会の後半は強烈な向かい風との闘いが延々と続いた。

75キロ地点を越えたあたりから北浦大橋が見えてくるが、湖があちこちで湾曲しているため、なかなか橋に近づけない。それがまた、きつかった。

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春先に比べると、夏の間の風はないようなものだ。稲穂を揺らす、さわさわとした音が気持ちいい。もちろん、それは私が日差しが身を焼くほどではない早朝に走っているからではある。

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文・写真:吉田(地域連携チーム)