FREAKS vol. 324(2022/9)より 〜すべてはアントラーズのために〜

2022.09.26(月)
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アントラーズに加入してから3年目を迎えたエヴェラウド。
練習中も試合中も、常に全力を出し尽くしている自負がある。
持てる力のすべてをアントラーズの勝利に捧げるために。

もはや引き分けや敗戦は
許されない状況にある

──エヴェラウド選手にとって、来日3年目のシーズンが終盤戦に突入します。
「もちろん、この先もすべての試合に全力で臨んでいきますが、現時点でタイトル獲得の可能性が最も高い大会は天皇杯になります。準々決勝以降の3試合に向けて、集中して取り組んでいかなくてはなりません。リーグ戦は上位に位置しつつも、首位の横浜FMとは勝ち点差が開いているのが現状です。ここまでの戦いのなかで、横浜FMも勝利を逃した試合がいくつかありました。しかし、同じようなタイミングで僕らも勝ち点を取りこぼしてしまい、第23節の直接対決では敗戦を喫し、思うようにその差を縮めることができませんでした。ただ、それらはもう過去のこと。ここまでの戦いぶりや直接対決での敗因についてはしっかりと分析して受け止めつつ、僕らは先を見据えて戦い続けます。対戦相手に対するリスペクトはしっかりと胸に刻みながらも、ここから先は何が何でも勝利を手にしなければなりません。もはや引き分けや敗戦は許されない状況にあると強く認識しています」

──約2年半、アントラーズの一員として戦ってきたなか、Jリーグに対してはどのような印象を持っていますか?
「日本のサッカーには、インテンシティの高さとダイナミックさがあると思っています。この二つの要素が90分間を通して発揮されていますし、Jリーグでは仮に0─3というスコアであっても、負けているチームは最後の最後まで絶対に諦めません。3点ビハインドで残り時間が10分を過ぎたとしても、『まだ3─3まで追いつける』『逆転して4─3に持ち込める』と信じて戦い続けている姿がとても印象的ですし、試合終了のホイッスルが鳴るまでまったく気の抜けないリーグになっています。また、日本人選手の技術レベルは非常に優れたものがあります。僕はサウジアラビアでプレーした経験があります。アジアという地域で考えると、確かにAFCアジアチャンピオンズリーグではサウジアラビアのチームが近年は結果を残していますが、リーグ全体に関していえば、サウジ・プロフェッショナルリーグよりもJリーグのほうが選手個々の技術レベル、チーム同士の競争力が高くて魅力的だと思っています」

──先ほども名前が挙がりましたが、今シーズンの明治安田生命J1リーグでは横浜FMが首位に立っています。
「横浜FMは長年一緒にプレーしている選手が多く、監督が代わろうともチームが持つコンセプトを継続しながらチーム強化を図っている印象があります。ウイングの選手がサイドに大きく開き、チームとしてもピッチをワイドに使っています。選手同士のコンビネーションも長けていて、お互いの立ち位置を確認しなくても、それぞれが信じ合ってパスを出すし、パスを受けようと走り込んでいる。これらは昨日、今日の練習で構築できるものではなく、長年の積み重ねによって身につけられるものですから、横浜FMというクラブの地道な努力を素直にたたえたいと思います。そのなかで、リーグ戦の残り試合数や勝ち点差を考えると横浜FMに追いつき、追い越すのは簡単なことではありませんが、可能性が残されている限り僕らは最終節まで全力で戦い続けます。残りの試合は全勝するという強い覚悟を持って、日々の練習に取り組んでいくつもりです」

ファン・サポーターの皆さんへ
喜びと笑顔を届けたい

──来日初年度の2020シーズン、エヴェラウド選手はリーグ戦で18ゴールを挙げ、Jリーグベストイレブンにも選出されました。翌年に向けた去就についてはさまざまな選択肢があったなか、アントラーズの一員として戦い続けたいという熱い思いを明言しました。
「そのとおりです。あのころに抱いた気持ち、あのころに考えたことは、22年の夏を迎えた今なお、何も変わることなく僕の心に宿っています。当時も今も、僕のなかには揺らぐことのない夢や願望があるんです。『アントラーズのために戦いたい』『アントラーズのために自分の力を出し切りたい』『アントラーズの勝利に貢献したい』。そのためにも、僕自身は20シーズンのような状態に戻れるよう、毎日必死に取り組んでいます。ファン・サポーターの皆さんも、当時のようなプレーや活躍の再現を期待し、楽しみにしてくれていると思いますし、努力を続けていけば必ず結果につながると信じて、日々のトレーニングに臨んでいます」

──ファン・サポーターの皆さん同様、エヴェラウド選手の“復活”を期待しているのが鈴木優磨選手です。シーズン開幕当初から「エヴェさん本来の力を早く引き出してあげたい」と口にし、明治安田生命J1リーグ第19節柏戦では自身が獲得したPKのキッカーをエヴェラウド選手に託しました。
「個人的に、優磨(鈴木選手)に対しては本当に感謝の気持ちでいっぱいです。同時に、グループのなかでリーダーシップを発揮し、常にチームのことを考えながら行動している姿に感銘を受けています。僕に対する発言や行動も、何よりもチームのことを最優先しているからこその振る舞いです。特に優磨や僕のようなFWの選手にとっては、ゴールを決めることによって目立ちたいという気持ちがあると思います。彼の言動にはその気持ちを超越した、チームを第一に考えるという思考がありますし、僕も逆の立場であればそのような振る舞いでチームに貢献したいと思っています。これは優磨に対してだけ言っているのではなく、すべての仲間が対象です。どのポジションの選手であっても、心身のコンディションが上がれば上がるほどチーム内の競争力は高くなり、日々の切磋琢磨がチームの成績へとつながっています。この先の終盤戦では、そのような部分でもチームの力になりたいと思っています。優磨についてつけ加えると、今シーズンの残りの試合でもしっかりチームの中心として活躍してくれると思いますし、この先何年にもわたってアントラーズを代表する選手の一人として存在感を示し続けることは間違いないでしょう」

──3月には負傷箇所の治療のためブラジルに帰国しましたが、6月の復帰以降は出場時間やゴール数を増やしつつあります。
「負傷した箇所の状態やフィジカル的なコンディションについてはもう何も問題ありません。懸念点としては、サッカー選手として大事な要素の一つである試合勘の部分です。試合勘を戻すには試合に出場し続ける必要がありますし、たとえ公式戦のピッチといえども、やはり15分や20分ほどの出場で取り戻せるほど簡単なものではありません。終盤戦では少しでも出場時間を増やすこと、継続して試合に出場することを目標に努力を続けていきたいと思っています。もちろん、選手起用については監督に決定権がありますから、僕としては与えられたタイミング、そのときの試合状況に応じて、どのようなプレーをすることがアントラーズに最も貢献できるのかを考えながらピッチに立つつもりです」

──コンディションという点においては、日本の夏の酷暑への対応も難しい部分があるのではないですか?
「寒さと暑さであれば、どちらかというと僕は寒さのほうが得意なのですが、ある程度の暑さであれば全然苦にならないタイプです。でも、日本の夏は気温よりも湿度が高すぎて、その独特の暑さに適応するのは大変だと感じています。特に8月は、午前中といえども屋外で練習を行うのに適した環境とはいえません。そのため、猛暑が始まった7月下旬からは練習後にすぐシャワーを浴びて、自宅に帰ってエアコンを効かせた部屋でリラックスしています。もう昼間は絶対に出かけません(笑)。日本で暮らす皆さんも同じような感覚かもしれませんが、これまでに経験した過去2年間よりも、今年の日本の夏はより暑くなっているのでないかと感じています」

──この先、より多くの試合でゴールをマークしていくため、エヴェラウド選手はどのようなことに取り組んでいるのでしょう?
「やはり練習がすべてであり、特にゴールは練習の賜物だと感じています。ゴールを奪うための形やパターンはFWの選手として深く追求していますし、MFやDFの選手とも話し合いながら細かな部分を調整しています。FWとしては、どれだけ縦パスを出してもらえるか、クロスを上げてもらえるかという部分が自分の役割、つまりゴールという結果に直結してきます。その点で、この先の戦いではチームメートとより呼吸を合わせることでもっといいボールが入ってくると確信していますので、練習中にみんなでタイミングを合わせていきたいと思っています。また決定力という部分については、全体練習が終わった後に個人的にシュート練習を繰り返し、得点の確率を高めるための努力を行っています。チームとしての形を磨きつつ、一選手としての能力を高め続けることが、ゴールにつながるのだと考えています」

──6月にはカシマスタジアムで「声出し応援運営検証試合」が開催されました。ピッチ上でアントラーズのファン・サポーターの存在をどのように感じましたか?
「声出し応援が一部で解禁された福岡とのYBCルヴァンカッププレーオフステージ第2戦は、一サッカー選手として本当に感激しました。ファン・サポーターの皆さんの力の大きさを改めて実感したのです。僕ら選手はどのような試合であっても、どのような時間帯であっても、全身全霊をかけて戦いに挑みます。ただ、サッカー選手とはいえ一人の人間でもありますから、時間帯によっては足が重いと感じたり、息が上がって苦しいと感じるときもあります。そんなときにスタンドからのチャントを耳にしたり、皆さんの声援を聞くと、心のスイッチが勢いよくオンに切り替わります。『まだまだ戦わなければ』『もっともっと戦おう』という気持ちが一気に噴出し、いつしか心のなかに大きな闘争心がみなぎってくるのです。それがホームであればなおさら高まりますし、選手にとって皆さんの声援の有無はものすごく大きな違いがあります。『大きな違い』という簡単な表現だけでは適切に僕の気持ちを表せないような気がしますが、ファン・サポーターの皆さんの声援とその存在が、選手にとってはとてつもなく大きな要素であるということをぜひ認識してもらいつつ、引き続きアントラーズにエールを送ってもらいたいと思っています」

──ファン・サポーターの皆さんも、終盤戦のエヴェラウド選手の躍動に期待しています。
「僕の活躍を信じて待ってくれているファン・サポーターの皆さんには心から感謝していますし、その期待に応えられるように日々努力することを誓います。戦列に復帰してから、努力の成果を表現できる瞬間もありますが、やはりもっと長く、継続的に努力の証や自分の能力を発揮していかなくてはなりません。その姿をイメージしながら、僕は惜しむことなくアントラーズのために全力を尽くしていきます。クラブとしてはもちろん、ファン・サポーターの皆さんにとっても、これほど長くアントラーズがタイトル獲得から遠ざかっている状況は受け入れられるものではないでしょう。特にファン・サポーターの皆さんはここ数年で悔しい思い、悲しい思いをたくさん味わってきたと思いますので、今シーズンは必ずタイトルを獲得し、真っ先に皆さんへ喜びと笑顔を届けたいと思っています。それがこれまで支えてくれた皆さんへの恩返しになるとともに、クラブにとっては将来に向けた勇気や自信になるのではないかと思うのです。そのためにも、引き続きアントラーズへの応援をよろしくお願いします」

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