FREAKS vol. 322(2022/7)より 〜Talk about TEAMMATE 最終ラインから見る景色〜

2022.07.26(火)
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三竿健斗にとって前線からチームを鼓舞する同年代の鈴木優磨、最終ラインを担う関川郁万、安西幸輝、常本佳吾はどのような存在なのか。

ボランチからCBにポジションを移したことで見える景色を語る。

今シーズンの三竿健斗は、ポジションをボランチからCBに移し、後方からチーム全体を支えている。同年代の鈴木優磨が復帰したことで、前線からもチームを鼓舞する声が発せられるようになった。だが、三竿は「まだまだ足りない」と話す。

「優磨が復帰して、同じ考えを持った選手が増え、周りに対してもそれが基準だと思ってもらえるようになったことは大きいと感じています。でも、それをチーム全体でやっていかなければならない。試合中、後ろから前線までは距離もあり、声が届かないことも多い。ピッチの中央やサイドからも今どうすべきなのか、今はどうしたいのかといった声が出ることで、もっとチームは強くなっていくと思います」

最終ラインを担う三竿はそれぞれの個性をどのように融合しようとしているのか。CBとしてプレーすることで感じているチームメートの特長やそれぞれを生かす術を語ってもらった。

Talk about Yuma SUZUKI
三竿健斗が語る鈴木優磨
優磨が言うから勢いが出る
一方で頼りすぎないチームに

2018シーズンのときから、点を取るだけでなく、味方からボールを引き出し、自ら相手選手を一人はがして局面を打開するプレーをしていました。海外で経験を積み、戻ってきた今シーズンは、ゲームを組み立てる部分にも参加する選手になったと感じています。レアル・マドリードでいえばカリム・ベンゼマ、トッテナムでいったらハリー・ケインのようにゲーム作りにかかわりながらも、アシストやゴールを決めてくれる。攻撃での存在感は以前よりも増したように思います。

ただ前線に張りついているだけでなく、中盤まで下がってくるので、相手のCBとしてはどこまで優磨についていくか、判断に迷いますし、中盤で数的優位を作られてしまうとボールが奪えなくなる。今シーズン、自分がCBでプレーしていることもあり、CB視点で見てしまうのですが、相手にとってはかなりつかみにくい、嫌なFWだろうなと思っています。

チームメートとして見ると、常に空いているスペースを狙ってくれているし、時間を使うべきときには横にボールを動かしてくれている。特に僕がフリーになり、右足でボールを蹴れる状態になったときに、相手DFの裏を狙って走り出してくれるので、タイミングや呼吸は合わせやすい。それもあって、ロングボールを蹴る前から動き出してくれるだろうなというイメージを持ちながらプレーできるので、より判断スピードを上げることができています。DFを背負ったときにも、体の直線上にパスを出せば、絶対にボールを収めてくれる。パスの出し手としては、かなり楽をさせてもらっています。

加えてリーダーシップも発揮してくれている。もともとアントラーズで結果を残してきた選手でもあり、海外でのプレーを経て、より言葉に説得力は増しています。結果を残していて、存在感のある優磨が言うからこそ、チームに勢いをもたらしているところがある。自分がここ数年、一人でやろうとしていたことを、一緒になって発信してくれているので、そういった意味でも助けられています。

細かい部分を挙げると、やはり戦う姿勢です。相手よりも走る、局面に競り勝つ。それを先頭に立って自らが体現してくれているので、流れに乗れていない選手がいれば「やれよ」と言ってくれますし、失ってはいけないところでボールを奪われたときには、ストレートに「ダメだ」と言うことができる。チームに対して、自分たちがそうした言葉を発信していることを考えると、お互いにキャリアを重ねて、年をとったんだなとも思います(笑)。

その一方で、チームが優磨に頼りすぎてはいけないとも感じています。YBCルヴァンカッププレーオフステージの福岡戦は、綺世(上田選手)が日本代表で不在だったこともあり、優磨が攻撃の組み立てに参加してしまうと、ペナルティーエリアのなかにターゲットとなる選手がいなくなってしまう課題を露呈しました。個人的には優磨にはペナルティーエリアのなかで勝負してもらいたい。今以上に相手にとって怖い存在になってもらいたいですし、点も取ってもらいたい。そのためには、もっと周りがゲームを作る部分や相手をはがす作業に取り組まなければいけないと感じています。相手にとって、彼だけを抑えておけばいいと思わせてしまうような状況は、チームとしてふがいなくもある。

優磨がゴールに専念できる状況、ゴール前で勝負できる回数を増やすことで、本当の鈴木優磨の〝怖さ〟が発揮されるはずです。

Talk about Ikuma SEKIGAWA
三竿健斗が語る関川郁万
強気なプレーは頼りになる
普段は礼儀正しくてかわいい

郁万(関川選手)は全体的に能力が高い。身体能力や運動能力が高く、フィードをはじめとする技術も高い。あとは、自身でも言っていますけど、いいときと悪いときの波をなくすだけだと思います。今シーズンは、コンスタントに試合に出ていることで、だいぶ、そうした波も小さくなっていると思います。ただやっぱり、どこかで集中が途切れてしまう時間帯や瞬間がある。試合中に隣りにいて感じることもあるので、90分間、集中力を持続できるように。常に前向きになれる言葉をかけ続けることを意識しています。

強気なプレーと見た目で相手に怖さを与えられるのも、CBとしては最大の強み。その時点で相手FWとの精神的な駆け引きで、一歩リードできていますからね。対人も強く、1対1で相手に抜かれたとしても、それを助け合う関係性が築けていると思っています。自分がボールを奪いにいって相手に入れ替わられた際に、後ろでカバーしてくれたときは頼もしさを感じています。その信頼関係があるからこそ、自分はまた積極的にボールを奪いにいくこともできているんですよね。

試合を見ていればわかると思いますが、郁万は、特に空中戦に強さを誇っています。正面から来るボールはまずはじき返してくれるし、相手と競り合っていても、その頭上からたたきつけるようにクリアできる。あの身体能力は本当にうらやましいですね。

強面な風貌の郁万ですが、普段は礼儀正しくて、こちらの言葉に素直に耳を傾けてくれるところがかわいいんです。試合中も常にこちらの提案を聞いてくれる。もしかしたら、チームで一番、郁万が素直だと思うくらい(笑)。だからこそ、集中が切れそうになっていたり、落ち込んでいるときには褒めて、気持ちを持ち直してもらうように働きかけています。

アントラーズのCBとしては、相手のエースを封じること。セットプレーで得点を奪うこと。この二つは伝統としてしっかりと受け継いでいきたい。結局のところ、最後は点を取るFWとマークしているDFとの1対1の勝負になる。いくらチームが前線から頑張って守備をしてくれていても、最後の最後で、CBが抜かれて失点してしまえば、意味がない。「後ろにはオレらがいるから大丈夫」と思ってもらえるような存在がアントラーズのCBだと思うので、そこを2人で目指していければと思っています。

Talk about Keigo TSUNEMOTO & Koki ANZAI
三竿健斗が語る常本佳吾&安西幸輝
対人に強く守備で頼れる常本
さらなる攻撃参加を期待する安西

CBとして、SBに対してはそれぞれの特長を踏まえたポジショニングを取ってもらえるように考えています。右SBのツネ(常本選手)は対人の守備が強いので、攻撃時にはリスク管理も含めて、ボランチが前に出ていって空いたスペースを埋めてほしいと話しています。逆に左SBの幸輝くん(安西選手)は攻撃が持ち味なので、攻撃時にはボランチの位置まで並んでも大丈夫だと伝えています。前に勢いのある彼のプレーは、チームの強みでもあるので、なるべく後ろを気にせず、アグレッシブな意識を持ち続けてもらいたい。そのために、僕をはじめ、他の選手で補う、もしくはスライドして、彼を前に出させることを意識しています。でも最近は、ツネも積極的に攻撃に顔を出すようになり、幸輝くんが後ろでバランスを取ってくれることも多くなってきているので、ツネに「戻ってこい」と言う機会が増えました(笑)。

SBは走力のある選手が務めるポジションなので、「戻ってこい」と言えば、すぐに戻ってこられるスピードがある。本当はCB2枚で守ることが理想ですが、どうしても2人だけだと、カウンターを仕掛けられた際には抜かれてしまうこともある。そのため、SBのどちらか1人を加えた3人で対応できるようなバランスを心がけています。

特に試合を重ねてきた最近の傾向としては、相手も僕らの戦い方を分析し、SBが攻撃参加するために上がった後ろのスペースを突かれています。今後、失点を減らしていくためにも、先制点を奪うまではバランスを保つ意識をチーム全体に浸透させられたらと考えています。

個々に目を向けると、ツネは守備で1対1に負けないし、広範囲をカバーできるので、DFとしては頼もしい存在です。強いていえば、攻撃参加したときに、クロスを相手選手に当てないでほしい(笑)。せっかく相手を抜いてクロスを上げても、相手に当ててしまうと、そこからカウンターを食らってしまう可能性がある。だから、せめてペナルティーエリアのなかまでボールを届けてくれたらと思っています。

幸輝くんは正直、もっとできると思っています。左利きではないので、左サイドでは縦に抜き切ってクロスを上げるのは難しいかもしれないけれど、逆にドリブルでなかにカットインしてシュートを決めるくらいのプレーを見せてほしいんですよね。

幸輝くんとは東京Vジュニア時代からの付き合い。ピッチ外では、いつもふざけてみんなを笑わせ、雰囲気を明るくしてくれますが、ピッチではもっとやれることを僕は知っています。それこそ、東京Vユース時代は、オーバラップしないと、そのたびに冨樫(剛一)さんに怒られていましたからね。今はチームのバランスを考えて、自分で制御しているようにすら感じています。だからこそ、後ろを気にせず、思い切ってどんどんオーバーラップしてほしいと本人にも伝えています。

チーム全体で意見を言い合うことで
もっと意思疎通は図れる

シーズン後半戦に向けて、チームとしては一喜一憂することなく、先制しようが、先制されようが、試合は90分間あると考えて戦っていくものです。何ごとにも動じない精神力が必要だと感じています。そうした姿勢は、最後尾にいる(クォン・)スンテさんが一番、表現してくれています。それをスンテさんだけではなく、みんなも感じ取り、言葉や行動で示していかなければタイトルは勝ち取れません。試合中にそれぞれが思っていることや感じていることがあっても、言葉で周りに伝えなければわからないことも多い。監督も「試合中にもっとみんなでしゃべって、周りに伝えるように」と言ってくれています。ここから先の1つひとつの試合が、タイトルを獲れるかどうかの戦いになる。みんなで乗り越えていけるように、日々の練習や試合中の立ち居振る舞い、チームへの働きかけが大事になってくると思っています。

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