J1連覇を果たすことはできなかった。最終節、ジュビロ磐田戦。ヤマハスタジアムに乗り込んだ鹿島は最後までゴールネットを揺らすことができず、0-0の引き分けに終わった。2位に転落し、タイトルを逃した。
1週間前、満員の聖地に歓喜の時は訪れなかった。カシマスタジアムに柏を迎え撃った、第33節。チケット完売のホーム最終戦、勝てば優勝という最高のシチュエーションだったが、1点が遠かった。放ったシュートは実に23本。しかし、ゴールネットを揺らすことはできなかった。失意のスコアレスドロー。それでもともに戦う背番号12が大きなチームコールを鹿嶋の青空に響かせる。限られた数しか参戦できないヤマハスタジアムのビジタースタンドへ、ファミリー全員の思いとともに。誓いを胸に、最終節へ向かう。
11月28日に練習を再開した選手はひたむきにボールを追い、さらなる向上を期した。29日には第33節第2日が行われ、2位の川崎Fが1-0と勝利。優勝争いの決着は最終節の結果に委ねられることとなった。
決戦前日のクラブハウス。指揮官は練習前後にチームを集めた。「良い時も悪い時もこのメンバーで乗り越えてきた。その集大成が今日の練習であり、明日であるということ。いつも通り、明日の試合にチーム全員で勝つために、準備をしていこう」。シーズン序盤の停滞、負傷者の続出、指揮官の交代。決して平たんな道のりではなかった。大会敗退の屈辱と向き合う夜が3度もあった。それでもチーム一丸で、総力戦で突き進んできた。そして迎える、今季最後の90分だ。
穏やかな青空に恵まれた磐田に、アントラーズレッドが続々と足を運ぶ。発売から間もなくしてチケット完売となった決戦。タイトルマッチ特有の高揚感と緊張感がスタジアムを包んだ。ビジタースタンドを情熱が埋め尽くし、勝利への渇望と連覇への決意がチームコールとなって降り注がれた。
今季最後の90分、指揮官は不動のメンバーを先発リストに並べた。GKは曽ケ端、最終ラインは右から西、植田、昌子、山本と、揃って日本代表に選出された面々が並ぶ。ボランチは三竿健斗とレオ シルバのペアで、2列目には遠藤とレアンドロ。そして前線では土居と金崎がコンビを組み、虎視眈々とゴールを狙う。ベンチにはGKのクォン スンテ、伊東、永木、帰還を果たした安部、小笠原、ペドロ ジュニオール、鈴木がスタンバイ。ベンチから外れたメンバーも磐田へと向かい、魂を込めてともに戦う。試合を重ねるごとに逞しく進化し、ついに代表に名を連ねるまでになった健斗は言い切った。「選ばれなかった選手や応援してくれる人のために頑張りたい」。思いを背負い、ピッチに立つ。
14時3分、戦いの火蓋が切って落とされた。公式戦全勝のセカンドユニフォームで大一番に臨んだ鹿島は開始早々の2分、金崎が敵陣に少し入った位置から思い切りよくロングシュート。枠を逸れたものの、得点への渇望を体現してみせた。
立ち上がりから激しいマッチアップの連発となり、肉弾戦の様相を帯びていった。出足の速いプレスを敢行してきた磐田に対し、鹿島は押し込まれる展開が続く。前線で起点を作れず、セカンドボールの攻防から自陣深くまで突破される場面が何度もあった。それでも、複数で囲い込んでボールを奪う守備を徹底。苦しみながら耐えしのぎ、時計の針を進めていった。
しかし11分、アクシデントが鹿島を襲う。ペナルティーエリア内で相手のドリブル突破に対応し、身体を投げ出した西が負傷。プレー続行不可能となり、右サイドバックに伊東が送り出された。
思いがけない形で、早くも1人目の交代を強いられることとなった鹿島。15分経過後も磐田の攻勢は続いた。両サイド深くまで攻め込まれる場面も少なくなかったが、身体を張って応戦し、決定機を作らせることはなかった。ただ、なかなか攻勢に転じることができずに30分が経過。前線の金崎や土居がパスを引き出そうと腐心したが、起点を作ることができなかった。

それでも43分、遠藤が浮き球に反応し、競り合いを制してペナルティーエリアに入る。クロスに金崎が飛び込むと、相手DFにブロックされて右CKを獲得。遠藤が蹴ったボールに反応した植田がヘディングシュートでゴールネットを揺らした。ついに訪れた瞬間。しかし、植田の後方で相手と交錯し、もつれあいながら倒された昌子のファウルという判定で得点は認められなかった。抗議の意を示しても、覆ることはない。前半はスコアレスで終了した。
ビジタースタンドを埋め尽くしたアントラーズレッドは、ハーフタイムも勝利への渇望を歌声に変えて戦い続けた。ピッチへ帰還した選手たちを鼓舞し、そしてともに戦う。最後の45分が始まった。
前半とは打って変わって、敵陣でのプレータイムを増やして攻勢をかけたのは鹿島だった。健斗が鋭い読みとプレスでセカンドボールを拾い続け、波状攻撃を仕掛けていく。48分、金崎が左サイド深くから中央へ折り返すと、ペナルティーエリア右奥に走り込んだ伊東がトラップからシュート。しかし、相手GKに阻まれてしまった。52分には右サイドの背後を取った土居の折り返しに金崎が飛び込んだが、枠を捉えることはできなかった。55分にもセカンドボールを拾ったレオが強烈なミドルシュートを放ったが、相手GKの正面を突いてしまった。
0-0のまま、60分が経過した。次第にスペースが空き始めてオープンな展開となっていく。磐田にセットプレーを与える場面も多くなったが、カウンターから敵陣ペナルティーエリアへ迫るプレーが増えていったことも事実だった。70分にはレアンドロが敵陣(中央)を縦へ突破したものの、シュートまで持ち込めず。76分、大岩監督は2枚目の交代カードに鈴木を指名。背番号9は左サイドを主戦場とし、身体を張ったポストプレーで起点を作った。

とにかくゴールを奪わなければならない。78分には金崎がペナルティーエリア内で反転し、強烈なボレー。しかし、相手GKの正面を突いた。81分にはカウンターからレアンドロがペナルティーエリア右奥へ突破。鋭い切り返しから左足で狙ったものの、枠を捉えることはできなかった。
大岩監督は82分、ペドロをピッチに送り出して得点への望みを託す。86分には伊東のクロスに山本が飛び込んでダイビングヘッドを放ったが、無情にも枠を越えた。最終盤は植田を前線に上げたパワープレーも敢行。しかし、最後の最後まで目的を果たすことはできなかった。
0-0で試合終了。最終節で首位の座を明け渡し、追い求め続けたものを手にすることはできなかった。勝ち点72、得失点差で2位。2017シーズンは無冠で終了した。

【この試合のトピックス】
・勝ち点72はクラブ最多記録タイ。前回は2007年だった。


・相手の嫌がる位置、もっとバイタルでボールを受けること。
・あと45分、お互い声を掛け合って、やるべきことを思い出そう。
・守備は常時最終ラインの背後を意識してケアすること。
Q. 西選手の負傷で交代枠を使ったが、ゲームプランへの影響は?
A. 彼は我々のキープレーヤー。彼の負傷が痛かったのは確か。しかし、その後、伊東やそのほかの選手が非常に戦ってくれて、前半の磐田の圧力にも決して下がらずにやってくれた。後半は特にアグレッシブにやってくれていたので、交代が痛かったのは確かだが、選手たちは非常によくやったと感じている。
Q. 川崎Fの状況をどのように把握して、選手たちに伝えていたか?
A. まったく情報は入れていない。選手にも伝えていない。まったく影響はなかった。
Q. シーズン途中での監督就任となったが、難しさを感じていたか?
A. 今、冷静になって考えることはできないが、就任以来、攻守ともにアグレッシブにやっていこうと話して、やってきた。選手も勢いをもってやってくれて、それが得点数にも表れていた。選手たちも自信を持ってやっていたと思うが、最後の2試合でなかなかうまく力を出してあげることができなかった。そこに、私自身の力のなさを感じている。もっとバリエーションだったり、選手起用によって変化を与えたりして、得点への形をたくさん作りだすことができなかった。
ここまできたら、何も言うことはない。相手がどこであっても勝つだけ。磐田にはホームで負けた借りを返す。選手、スタッフ、サポーターと一緒にやってきた集大成をこの試合に出したい。勝って締めくくりたい。
【曽ケ端 準】
磐田はセットプレーが強く、得点数にも表れている。前線に力のある選手がいるし、松浦選手も力がある。こちらのやり方はどのような状況でも変わらない。前線から制限していければいい。
【土居 聖真】
磐田は最少失点で、簡単にはいかない相手。どのような形であれ、前線の選手としてこじ開けないといけない。磐田戦はホームで得点を決めることができていないので、そういう意味でも勝ちたい相手。どんな形でも勝つことだけに目を向けたい。
【三竿 健斗】
勝つことを毎試合の目標にしてプレーしている。中村俊輔選手がセットプレーで良いボールを蹴るので、ファウルをせずにボールを奪う必要がある。ボールが奪われても回収し、つなげるパスを出せれば良い。それが攻撃の一歩になる。奪ったボールを確実に繋げることを意識してプレーしたい。
【山本 脩斗】
磐田は失点が少なくて安定している。自分たちのサッカーをして、得点を決めたい。チームで点を取って勝ち切りたい。やることははっきりしているので、勝つ戦いをしてしっかり終わりたい。
【遠藤 康】
柏戦は前半から良いテンションでできていたし、内容については悲観していない。チームでやるべきことをやれていた。磐田をどのように攻略して勝つか、ということだけを考えている。今シーズン、優勝するためにこのメンバーで戦ってきたので、成し遂げて終わりたい。ベンチに入れない選手の分まで頑張りたい。
【安部 裕葵】
柏戦に向けてコンディションを戻せなくて、チームに迷惑をかけた。試合に絡めるのは幸せなことだけど、勝たなければいけない。
プレッシャーの中でも良い仕事をして、その中で勝ち続けるのがアントラーズの選手としての使命。磐田の守備に手こずったのはが自分たちの弱さ。今日はどうしても勝ちたかった。
【昌子 源】
今は何と言えばいいかわからない。勝ちに来ていたので、川崎Fの途中経過は関係なかった。今日の試合は、あまり思い出すことができない。
【土居 聖真】
言葉にすることが難しい。何も残らない。悔しさしか残らない。チーム全員で招いてしまった。今は何も考えたくない。「これがあったから」というサッカー人生にしたい。
【鈴木 優磨】
自分がチャンスをもらったのに決められなかった。自分に対して腹が立つ。今は冷静に考えられない。この悔しさを必ず次につなげたい。