アントラーズのサステナビリティの考え方

鹿島アントラーズは、「未来の世代が安心してサッカーを楽しめる環境を守る」という想いのもと、ピッチでの勝利と同じ情熱で、地球・人・地域の未来と真剣に向き合います。

この姿勢を、クラブのサステナビリティ方針「ずっと同じ夢を ~ With Antlers, For Sustainability ~」に明確に示しました。

※「ずっと同じ夢を」というタイトルは、クラブ創設初期から掲げてきた「Football Dream 〜同じ夢をみよう〜」の精神を、これからも途切れさせることなく受け継いでいくために策定したサステナビリティ方針を象徴する言葉です。
時代が変わり、環境やフットボール、地域の在り方が大きく変化していくなかで、これからも同じ夢を見続けるためには、クラブが持続し続けるための基盤――環境を守り、地域とともに成長し、次の世代へ価値観を受け継いでいくことが欠かせません。創設期から続く鹿島アントラーズの Football Dream を未来へつなぎ、クラブ内外すべての仲間とともに、これからも同じ夢を見続けていくという決意が込められています。

アントラーズは、「勝利」を追求するのと同じ情熱で、持続可能な社会の実現にも取り組みます。
持続可能な社会づくりは、クラブの競争力を高め、地域とともに成長し続けるための中長期的な経営方針でもあります。

アントラーズのサステナビリティは、「Planet(地球)」「Family(地域・パートナー)」「Spirit(哲学・ガバナンス)」という3つの領域を柱と据え、それらと密接に関連する7つの重要テーマに対して、具体的な施策と目標を設定しています。

サステナビリティ方針の3本柱

Planet(地球)

クラブの活動による環境への影響を最小限に抑え、気候変動に適応した持続可能な競技環境を守ります。

Family(地域・パートナー)

地域社会やパートナー企業と連携し、地域の課題解決と持続的な発展をともに実現します。

Spirit(哲学・ガバナンス)

教育や発信を通じて、サステナビリティへの関心と行動を広げ、地域や社会にポジティブな影響を届けていきます。

テーマ毎の方針とコミットメント

1.気候変動に対する基本方針

背景

  • ・気候変動やプラスチックごみの増加、資源の減少といった地球規模の環境問題は、スポーツ業界も無関係ではありません。
  • ・気温の上昇や異常気象は、人々の暮らしや自然、生態系に大きな影響を与えており、今、行動を起こさなければ、その影響に対応するのはより難しく、コストも増大していきます。
  • ・スタジアムや試合運営にとどまらず、資源利用・水管理・生態系保全・調達など、クラブのあらゆる活動を通じて環境への影響を最小化し、持続可能な未来の実現に取り組みます。
  • ・スタジアムやクラブハウスでの取り組みに加え、SNSや地域連携を通じて、誰もが参加できる仕組みを広げていきます。

主な目的

  • 1. クラブの活動による環境への影響をできる限り小さくすること。
  • 2. 気候変動に適応し、安心して試合ができる環境を守ること。
  • 3. 誰もが参加しやすい形で環境保護を広げること。

取組方針

  • ・サプライチェーン全体で温室効果ガス(GHG)の排出を減らすため、環境に配慮した選択肢を広げます。
  • ・取引企業やサプライヤー、外部の関係者と国内外の優れた事例を共有し、ともに脱炭素化と環境負荷の削減を進めます。
  • ・「持続可能な調達方針」に基づき、低炭素な資材や食品などの調達を促進します。
  • ・選手、アカデミー選手、コーチ、スタッフに向けての教育を通じて、気候変動に関する理解と行動変容を支援します。
  • ・クラブ内外のコミュニケーションを通じて、誰もが地球環境を守る取り組みに参加できる仕組みを整えます。
  • ・気候変動によるリスクがクラブ運営・施設・従業員の安全に与える影響を把握し、適切に管理します。
  • ・クラブが関連するすべての施設において、エネルギー使用状況を定期的にモニタリングし、環境法規や各種基準を遵守しながら体系的なエネルギー効率化計画を実施します。
  • ・必要に応じてCASBEE(建築環境総合性能評価システム)や省エネ法などの認証・法制度との整合を図り、エネルギーの最適化と排出削減を継続的に推進します。
  • ・ファン・サポーターとともに、日常生活の中で脱炭素社会に貢献する行動を広げるためのコミュニケーションを行います。

コミットメント

  • ・Scope1・2・3の温室効果ガス排出量について、SBTiの基準に整合した科学的根拠に基づく削減目標を設定します。2030年までにScope1+2を2021年度比で42%、Scope3を2023年度比で25%削減、2050年までに全体で90%以上の削減(ネットゼロ)の実現を目指します。
  • ・目標および進捗状況については、クラブ公式ウェブサイト上で公表します。
  • ・全拠点で100%再生可能エネルギーによる電力を使用することを目指します。

2.環境負荷の少ない移動

背景

  • ・スタジアム観戦やクラブの活動に伴う、ファン・サポーター、選手、スタッフの移動は、多くの温室効果ガス(CO₂等)を排出しています。
  • ・特に、公共交通機関の選択肢が限られており、自家用車での来場が中心となるメルカリスタジアムでの試合日は、排出ガスによる環境負荷が多く発生しています。
  • ・アントラーズは、こうした現状を踏まえ、クラブ運営および観戦活動に関わるすべてのアントラーズファミリーが、環境への負荷を抑えた移動手段を選択しやすい仕組みを整え、推進していきます。

主な目的

  • 1.クラブ全体として移動に伴う温室効果ガス排出量を減らすこと。
  • 2.地域・パートナー企業と協働し、ファン・サポーターの観戦体験を損なうことなく、環境にやさしく利便性の高い移動環境を実現すること。

取組方針

  • ・ファン・サポーターの移動
    • ・来場者の移動に関するあらゆるデータ(交通手段、平均距離、所要時間、渋滞状況、1台あたりの乗車人数など)を定点的に収集・分析し、観戦体験を損なうことなく、環境負荷の少ない移動への転換を継続的に支援・改善していきます。
    • ・公共交通(鉄道・バス)や相乗り、自転車、徒歩など、環境への負担が少ない移動手段の利用を促進します。
    • ・来場者が居住地や移動距離、観戦スタイルに応じて最適な手段を選べるよう、地域やパートナーと連携し、サステナビリティと利便性・快適性を両立したアクセスの選択肢を広げていきます。
  • ・選手・クラブスタッフの移動
    • ・チームバスや社用車の段階的なEV・ハイブリッド化を進めます。
    • ・出張・遠征では公共交通機関の利用や相乗りを優先し、リモートワークやオンライン会議を活用して不要な移動を削減します。
    • ・また、クラブハウスやスタジアムにEV充電設備を整備し、再生可能エネルギーによる電力活用を推進します。

コミットメント

  • ・環境にやさしい移動手段を可能な限り促進・推進するために、試合日における来場者の移動データを継続的に把握・分析し、その結果を毎シーズン公表します。
  • ・スタジアム来場に伴う移動の環境負荷を減らすため、来場者一人ひとりの移動に伴う温室効果ガス排出量の可視化と削減に取り組みます。
  • ・観客数の増加による排出量の上昇も踏まえ、ホームゲーム来場時の環境負荷を少しずつ減らす仕組みを整え、ファン・サポーターとともに持続可能な観戦スタイルへの移行を進めていきます。

3.資源循環

背景

  • ・アントラーズの活動では、試合日やイベントなど日常的に多くの資源が使われ、廃棄物も発生します。特に試合やイベントの際には、飲食容器や飲食物の食べ残しなどのごみの量が課題となっています。
  • ・スポーツクラブだからこそできる、ごみの分別、回収したごみの循環を通じて、試合運営においても資源循環を目指します。

主な目的

  • 1.スタジアムやクラブハウスをはじめとするすべての施設において、資源の分別・回収・リサイクル体制を整え、廃棄物の再資源化を徹底すること。
  • 2.使い捨てプラスチックの削減やリユースの仕組みづくりを進め、ごみ発生を抑える運営を実現すること。

取組方針

  • ・ごみの資源循環と分別促進
    • ・クラブ施設やスタジアムで発生する廃棄物は、分別・回収後に適切な事業者を通じて可能な限りリサイクルプログラムへ再資源化します。
    • ・プラスチック・紙・缶・食品ごみなど、素材別のリサイクルルートを明確化し、資源として循環に転換します。
    • ・飲食や物販では、分別しやすくリユース・リサイクル可能な素材・容器を採用し、来場者が自然に分別行動を取れるように導線上へ分別ステーションを配置します。
    • ・ごみ箱の種類・形状・表示・色分けを工夫し、来場者が直感的に分別できる環境を整備します。
  • ・使い捨てプラスチックの削減と代替素材の導入
    • ・試合日やイベントで使用されるトレー・カトラリー・カップなどの使い捨てプラスチックを廃止し、紙・木・竹・植物由来の生分解性素材へ切り替えます。
    • ・ノベルティや配布物についても使い捨てプラスチックを段階的に廃止し、再利用可能なグッズやノベルティへ移行します。
  • ・クラブ全体での3R推進(Reduce・Reuse・Recycle)
    • ・クラブとして「Reduce=不要なものを持ち込まない」ことを徹底し、それが難しい場合は「Reuse=再利用」を優先、最後に「Recycle=リサイクル」を進めます。この原則を全従業員・関係者に周知し、日常業務のあらゆる場面で実践します。

コミットメント

  • ・チーム施設及びスタジアムから発生する廃棄物のリサイクル率を50%以上とし、ファン、サポーターとともに資源が循環するスタジアムの実現を目指します。
  • ・試合日のスタジアムを含むすべての関連施設において、使い捨てプラスチックの利用廃止を目指し、代替素材の導入やリユース可能な仕組みづくりを進め、使い捨てプラスチックに依存しない運営を実現します。

4.水資源

背景

  • ・水は、私たちの暮らしや自然環境に欠かせない大切な資源です。
  • ・食事や農作物、動植物の生態系はもちろん、ピッチの散水やクラブ施設での利用、試合日の飲料提供など、アントラーズの活動にも多くの水が必要です。しかし、異常気象や都市化、人間活動の影響により、地域や世界で水資源の持続的な確保が難しくなっています。
  • ・アントラーズは活動の中で水を大切に使い、無駄をなくす取り組みを進めます。

主な目的

  • 1.スタジアム、クラブハウス、練習場など全施設で水利用を最適化し、原単位での水使用量を継続的に削減すること。
  • 2.散水・清掃・トイレなど非飲用用途における地下水等の活用を拡大し、上水道への依存を段階的に低減すること。
  • 3.ファン・サポーターおよびクラブ従業員を含むアントラーズファミリー全体で、水を大切に使う意識を育み、次世代へ豊かな水環境を引き継ぐこと。

取組方針

  • ・日常における責任ある水利用
    • ・すべてのクラブスタッフがクラブハウス等で行う日常業務の中で節水を意識し、清掃・散水・飲料提供などにおいて責任ある水利用を実践します。
    • ・ファン・サポーターに向けた啓発活動を通じて、日常生活の中で水を大切に使う意識を広げ、アントラーズファミリー全体で水環境の保全に貢献します。
  • ・クラブ施設における持続可能な水利用
    • ・使用エリアや時間ごとのデータを定期的に把握・分析し、改善ポイントを特定したうえで、より効率的な水利用を実現します。
    • ・試合日におけるトイレ、厨房、清掃などの水使用量をモニタリングし、効率的な利用を実現するため、必要に応じて段階的な設備改善や投資を行います。
    • ・ピッチの芝生の散水には地下水や雨水などの資源をより積極的に活用し、上水道への依存を段階的に減らします。
    • ・雨水や再生水の活用を進めるため、今後の設備改修時には再利用可能な配管・貯水タンクの設置を検討します。

コミットメント

  • ・スタジアム、クラブハウス、練習場を含むすべての施設における水使用量の可視化を進め、用途別・施設別のモニタリング体制を整備します。その上で、地下水・雨水などの再利用をこれまで以上に拡大し、上水道への依存を段階的に低減します。
  • ・将来的には、全施設の水利用データをもとに具体的な削減目標を設定し、その進捗を毎シーズン公開します。(※現状の水利用状況を十分に把握した後、実態に即した目標年と削減量を設定し、クラブ公式ウェブサイト上で公表します。)

5.自然と生態系の保全

背景

  • ・アントラーズのホームタウンやクラブ施設のまわりには、たくさんの木々や生き物が暮らしています。私たちの活動は自然と深く結びついており、その豊かさを守ることは、未来のサッカー文化を育てることにもつながります。
  • ・もし地域の自然と生態系が失われると、水や食料、気候の安定といった自然からの恩恵が失われ、私たちの生活も大きく影響を受けてしまいます。

主な目的

  • 1.クラブの全施設・全活動における自然への負荷を最小化し、生物多様性の保全に取り組むこと。
  • 2. ホームタウンの自然を守り、ファンや子どもたちが安心して楽しめる環境を未来へ引き継ぐこと。

取組方針

  • ・スタジアム・クラブハウスが所在する茨城県鹿嶋市とその周辺地域に広がる豊かな自然環境を尊重し、その保全に向けた取り組みを地域住民のみなさまと一体となって推進します。
    • ・クラブが所有する敷地内の野生生物とその生息地を尊重し保護します。
    • ・試合日の照明や音響が自然に与える影響を最小限に抑えます。
    • ・植栽や緑地の管理を通じて在来種の保全に取り組み、スタジアム周辺の自然環境を良好に維持する活動を地域とともに推進していきます。
    • ・自治体・地域団体・パートナー企業と連携し、ホームタウンの海岸等でのクリーンアップを継続実施します。回収したごみは現地で分別し、適切な処理・資源化へつなげ、美しく安全な海岸の維持と生態系の保全に努めます。

コミットメント

  • ・ホームタウンの生態系を守る活動を年3回以上実施し、その成果(参加人数、ごみの回収量など)を毎シーズン公開します。

6.調達

背景

  • ・アントラーズの活動には、ユニフォームやグッズ、サッカーボール、スタジアムでの飲食、試合運営に必要な資材など、さまざまな調達が関わっています。これらを持続可能な形に変えていくことは、クラブが地域と未来に責任を果たすために欠かせない取り組みです。
  • ・アントラーズは取引企業と協力し、環境への配慮、人権の尊重、公正な労働、多様性や地域社会への貢献といった観点を重視しながら、サプライチェーン全体で持続可能性を高めていきます。

主な目的

  • ・クラブ全体で「持続可能な調達」の考え方を共有し、関わるすべての取引企業とともに、環境・人権・地域社会に配慮した調達を進めること。

取組方針

  • ・アントラーズは、すべての調達活動において環境・社会・経済への責任を果たし、クラブの持続可能な成長と地域社会への貢献を両立します。
  • ・新規取引開始時には環境配慮や社会的責任の観点を確認し、地域や未来にプラスとなる調達を行います。
  • ・既存の取引についても、取引企業との対話を通じて継続的な改善を行い、より持続可能な調達体制の構築を目指します。
  • ・調達にあたっては、次の項目を重視します。
    • ・持続可能性のコミットメント
      • ・社会や環境に配慮する姿勢を明確に持ち、持続可能性を重要視すること。
    • ・長寿命価値への理解
      • ・長く使える、繰り返し使えるグッズやスタジアム資材を提供できる企業を優先すること。
    • ・倫理的な基準の保持
      • ・調達に関する透明性を確保し、適正賃金・安全衛生の確保など倫理的基準を満たしていること。
    • ・地域調達 / 地域雇用
      • ・地域に拠点を構え、地元での調達や製造を支援していること。
      • ・地域住民の雇用やキャリア機会の創出に積極的であること。
    • ・トレーサビリティの確保
      • ・可能な限り、原材料の由来、製造・加工拠点、認証取得状況などの証跡を把握できるよう努めること。

コミットメント

  • ・クラブは、調達活動全体を定期的に見直し、環境・社会的責任・公正取引の観点から持続可能な調達を実現します。
  • ・取引企業の選定にあたっては、環境への配慮や社会的責任への姿勢を重視し、クラブの理念や方針に賛同し、価値観を共有できるパートナーとの関係構築を優先します。

7.ひらかれた観戦体験

背景

  • ・アントラーズは、年齢・性別・障がい・国籍・立場を超えて、あらゆる人が安心して試合を楽しめるスタジアム環境を目指しています。
  • ・試合観戦はクラブと地域をつなぐ最も重要な場であり、「誰もがアクセスでき、快適に、安心して参加できる」ことが、真のサステナビリティにつながると考えています。
  • ・観戦体験の向上を通じて、多様な人々がサッカーを通じて出会い、共に時間を過ごし、地域全体にポジティブな循環を生み出していきます。

主な目的

  • 1.あらゆる人が安心・快適に観戦できるスタジアム環境を実現すること。
  • 2.スタジアム体験を通じて、地域と人がつながる観戦文化を広げていくこと。

取組方針

  • ・ユニバーサルデザインを基盤に、アクセシビリティ・安全性・快適性を重視した施設整備を段階的に進め、多様な来場者に配慮した運営体制を整えます。
  • ・試合や地域イベントを通じて、クラブ・ファン・地域が共に価値を生み出す「共創の場」としてのスタジアム文化を推進します。

コミットメント

  • ・すべての施設でユニバーサルデザインの観点から段階的な改善を進め、車椅子席、点字案内、音声ガイド、授乳室、静穏スペースなどの整備を拡充します。観戦体験に関する来場者アンケートを継続的に実施し、その結果を反映した改善を行います。
  • ・経済的・社会的背景に関わらず、地域の子どもや多様な層が観戦を体験できる無料招待・連携施策を継続します。