攻撃のラストピースに。
リーグ戦も残り5試合。1試合1試合の重みは増していく。
大事な一戦で勝ち点3を得るには、チームとしての戦い方もさることながら
ゴールを奪い切る個の力が問われていく。
徳田誉と荒木遼太郎——ポジションにこだわりのある2人の色は、
チームを勝たせる攻撃のラストピースになる。
■やるべきことをやったうえで自分を出す
鹿島アントラーズは9月の明治安田J1リーグで4連勝を飾り、再び首位に立っている。
昨シーズンは同月の成績が2分1敗の未勝利。2024シーズンは1勝2分1敗、2023シーズンも3試合連続で引き分けだっただけに、まずは鬼門を乗り切ったといえるだろう。
その内容に目を向けると、第29節の湘南ベルマーレ戦(3-0)では濃野公人が今季初ゴールを記録し、第31節のセレッソ大阪戦(3-1)では松村優太が7試合ぶりとなる今季2点目をマークした。第32節の名古屋グランパス戦(4-0)では戦列に戻ったばかりの徳田誉が、自らの復帰を祝う2得点を挙げた。
明治安田J1リーグ得点ランキングでトップを走るレオ セアラと絶対的な中心選手である鈴木優磨がチームの攻撃をけん引しているとはいえ、まるで日替わりのようにヒーローが登場し、次から次に勝利に貢献している。
鬼木達監督は4連勝の要因として、個の成長に目を向ける。
「自分を出していかなければ意味がない。自分というものが見えてこないと、ピッチに立つことはできないと思っています」
そして、こう言葉を続けた。
「(最近は)迷いが少ない選手が増えてきた印象があります。チームとしてのやるべきことはありますが、そのなかでどのように自分を出していくか。それが徐々に出てきているように感じています」
自分を出す。それはすなわち、持ち味であり、個性に置き換えられる。
レオ セアラが決定力によってチームの攻撃を引っ張り、早川友基がシュートセーブによって守備を支えているように、それぞれが自身の持ち味をピッチで活かし、体現している。鈴木ならば得点と起点になるプレーであり、三竿健斗ならば中盤での守備力、小池龍太ならばポジショニングになるだろう。
松村優太のスピードや知念慶のデュエルが際立っているのも、自分を出している証であり、その輪は先発だけでなく、途中出場する選手たちにも広がり、チームとしての確かな強さになっている。
■勝ち切るラストピースとして期待する徳田と荒木の色
一方で、第33節のガンバ大阪戦はスコアレスドローに終わったように、目指す頂きが容易に到達できる道ではないことも、あらためて痛感させられた。
リーグ戦も残すところ5試合。より重みを増していく一戦一戦を勝ち切っていくには、チームとしての団結力、結束力もさることながら、個の成長や輝きが欠かせない。
勝ち切るための“攻撃のラストピース”として期待が高まるのが、徳田誉と荒木遼太郎の2人だ。
徳田はG大阪戦でPKを外して悔し涙を流したが、前述した名古屋戦で2得点を挙げたように、鈴木ともレオ セアラとも異なるストライカーとしての色を持っている。
徳田は言う。
「ペナルティーエリア内でのプレーこそが自分の強みだと思っています。シュートにも自信はあるので、そこは今までと変わらず強みにしていきたい」
名古屋戦の1点目が象徴しているように、相手DFのマークをかいくぐり、瞬時に前へと出られる動き出しはストライカーとしての魅力であり、2点目の豪快なミドルシュートが示す思い切りの良さも、彼にしかない色である。
また、荒木もトップ下というポジションで唯一無二の輝きを放ちつつある。名古屋戦で徳田が決めた1点目は、ペナルティーエリア内で荒木が粘り、相手DFの前に身体を入れて右サイドに展開していなければ生まれていなかっただろう。G大阪戦でも81分からトップ下のポジションに入ると、スペースが狭かろうが果敢にターンして前を向き、何度も縦パスを狙った。
荒木が言う。
「トップ下での仕事が楽しいし、自分はゴールに直結するプレーこそが持ち味だと思っています。それを今シーズンも変わらずにやり続けてきた。確かにトップ下のポジションはちょっと特殊だし、難しいプレーが求められるところはありますけど、そこでプレーできる選手こそ、オレはカッコイイと思っています」
鬼木監督も語るように、チームとしてやるべきことをやったうえで、それぞれが自分の色を出すことで、ゴールは生まれ、そして勝利は手にできる。
徳田も、荒木も自分にしかない個性にこだわり続け、自分にしかない色を知っている。その色は、チームに今までとはまた異なる景色を見せることだろう——そして、その個性こそがチームを勝たせる攻撃のラストピースになり、大事な一戦を勝ち切る力になる。
月刊「FREAKS」を継承した記事「FREAKS INTERVIEW」の10月は、「攻撃のラストピースに。」と題して、強烈な個性で輝きを放つ徳田誉選手と荒木遼太郎選手のインタビューを掲載します。プロローグに続き、徳田誉選手のインタビューを掲載しています。ガンバ大阪戦での悔しさをどのように活かしていくか。その思いを語ってくれています。