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チームの心臓として

ディエゴ ピトゥカインタビュー

特集

ディエゴ ピトゥカ

2023/6/26

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ボランチにとっては
辛抱強く戦うことが大事

「ボランチ」は、ブラジルの公用語であるポルトガル語で、「ハンドル」「かじ取り」という意味を持つ言葉です。ブラジル人であるピトゥカ選手は、このボランチというポジションにはどのような役割が求められていると解釈していますか?

「ブラジルでプレーしていたころ、さまざまな監督とコミュニケーションを取るなかで、『ボランチはチームの心臓だ』という言葉を何度も耳にしてきました。攻撃時には前線でのプレーが求められますし、守備時には失点をしないように後方のエリアで守らなければいけない。90分間にわたって多くの運動量と走行距離が求められますし、ピッチ中央に立つポジションなのでボールに触る機会もかなり多くなってきます。その意味では、まさにチームの心臓であり、一つの専門的な役割をこなしていればいいというわけではありません」

ピトゥカ選手は、小さなころからボランチ一筋なのでしょうか?

「当初はトップ下の選手だったんです。父も、息子にはサッカーにおける花形のポジションであるトップ下でプレーし続けることを願っていたようですが、年齢とキャリアを重ねるなかで、徐々にポジションが下がっていきました。最終的には、ボランチや左SBでプレーする機会が増えましたね」

ボランチの選手として成長するにあたり、参考にした選手や影響を受けた指導者がいれば教えてください。

「選手を一人挙げるならば、以前、ブラジルのサントスで一緒にプレーしたレナト。スペインのセビージャやブラジル代表の一員としても活躍した、とても優れたボランチです。チームメートとして、彼から学ぶことは本当にたくさんありました。また監督では、サントス在籍時の19年に指導してもらった、アルゼンチン人のホルヘ・サンパオリ監督です。チーム全体への細かな指示はもちろん、サンパオリ監督は選手一人ひとりに対して、『こういうプレーを期待している』『この部分をもっと成長させてほしい』というリクエストが多く、求めるレベルもとても高かった。さらに、必要であれば練習以外の時間でも、技術面、戦術面をはじめ、細かな指導、指摘をしてくれるタイプでした。ディエゴ・ピトゥカは、サンパオリ監督の指導を受けたことで、ボランチの選手として大きく飛躍することができたといっても過言ではありません」

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ピトゥカ選手は実に多くの球種を蹴り分けられ、試合中はショート、ミドル、ロングなど、多彩なパスでチームを動かしています。

「小さなころから、『君のストロングポイントは精度の高いパスだ』と、父に言われ続けていたことよく覚えています。とはいえ、もともと多くの種類のボールを蹴り分けられたわけではなく、サッカー選手としてのキャリアを歩みながら、日々磨いてきたつもりです。ファン・サポーターの皆さんのなかにはご存じの方もいるかもしれませんが、今でも僕は、チームの全体練習終了後、ショートパスやロングパスを何本も何本も蹴り続けています。これまでの経験から、練習で取り組んだことは決して裏切らないと信じていますので、まるで何かに取りつかれたかのように、毎日何本も何本も蹴り続けているんです」

攻撃のコントロールはもちろん、相手のカウンターに対しては誰よりも早く反応し、自陣深くまで長い距離を走る姿が印象的です。個人的に、ボランチでプレーするうえで特に意識しているのはどのようなことでしょう?

「ボランチとしてプレーするときに大事になるのは、辛抱強く戦うことだと思っています。相手チームがパスワークに優れ、ボールポゼッションで上回られる展開のなかでは、長い時間走らされることもあるし、ときには無駄走りも多くなる。時間を追うごとにスタミナは消耗していきますが、それでも耐え続け、自分たちにチャンスが巡ってくるまで辛抱強くいなければならないのです。また、自分がボールを持ったときには、試合展開を読む力が必要になってくるでしょう。『攻撃のテンポを上げるべきか』『細かくつないでリズムを作るべきか』など、チームとしての攻撃の形を選択するためにも、試合の流れをしっかりと把握しなければなりません」

試合中は、チームメートのコンディションを見極めることも必要ですね。

「そのとおりです。例えば、対戦相手が優れたパスワークを特長とする場合、前線の選手が相手のボールホルダーを追いかけ続ける場面が増え、必然的にプレーの強度も高くなります。その展開において、自分たちが中盤でボールを奪い返したからといって、プレッシャーをかけるために直前まで全力で走り続けていた選手に早いタイミングでボールを送っても、決して効果的な攻撃は生まれないでしょう。そういう意味でも、試合の流れを読まなければいけないのです。ボールを奪い返した瞬間、どれだけ自分がいい状態だったとしても、チームメートの準備が整っていないことは多々あるので、どのような瞬間もベストな判断ができるように、常にピッチ全体を見続けていなければなりません」

ピトゥカ選手の一つひとつのプレーが、ボランチをやっている若年層の選手たちのお手本となっています。もしユース世代の選手たちにアドバイスをするならば、どのような言葉をかけますか?

「ボランチを務めるうえで不可欠なことは、トラップやパスの質の高さはもちろん、適切なマークの仕方、運動量、ハードワークする姿勢、辛抱強く戦い続けるためのメンタル、そして試合展開を読む力など、挙げればきりがありません。そのため『これが大切』とは言い切れず、『すべてが大切』であることを認識していてほしいと思います。たまに小学生や中学生から、『将来はピトゥカ選手のようなボランチになりたい』というメッセージをもらったり、声をかけてもらうことがあります。大きな喜びを感じつつ、そう言ってくれる皆さんには、必ずこう答えるようにしているんです。『君はディエゴ・ピトゥカを目指すのではなく、必ず僕よりもいい選手にならなくてはいけないよ』と。あらゆる選手たちに幸運が訪れることを祈っています」

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