FREAKS

チームの心臓として

ディエゴ ピトゥカインタビュー

特集

ディエゴ ピトゥカ

2023/6/26

来日3年目の今シーズン、本人も自身の出来に手応えをつかんでいる。
文字どおり、“チームの心臓”として攻守に奮闘するディエゴ ピトゥカに、ボランチが担うべき役割やピッチ上でのあるべき姿について話を聞いた。

100%はもちろん
200%の力を出し切る

PHOTO


後半戦に差しかかろうとしている2023シーズン、ここまでのチームの戦いぶりをどう振り返りますか?

「リーグ開幕戦で勝てたことはとてもポジティブだったのですが、そのあとからよくない流れに突入してしまいました。思うように勝てない時期が続いたなか、個人的に忘れられない一戦が、リーグ第8節の神戸戦です。ホームで1─5と大量失点を喫して敗れ、一気に目が覚めたというか、選手全員が意識を切り替える大きなきっかけになりました。第9節新潟戦以降は連勝することができ、チームとしていい状態にあるとは感じていますが、まだまだ改善点はたくさんあると思っています」

神戸戦から新潟戦までの約1週間で、どのような部分が変わったのでしょう?

「選手一人ひとりの考え方だと思います。なかでも、『チームメート同士が、もっとピッチ上で助け合わなければいけない』という意識が高まりました。味方のためにもっと走らなければならない、もっとカバーし合わなければならない。選手全員がこのような姿勢を再認識したことで、岩政監督が求めることを体現できるようになり、その積み重ねがチーム全体の力となって、いい流れを持ってくることにつながったのではないかと思います」

岩政監督からのアプローチにも、何か変化はありましたか?

「特に大きな変化はありませんが、僕らを後押ししてくれる、よりやる気を高めてくれるような言葉を投げかけてくれています。選手にとって、監督のそういった言動はとてもありがたいし、重要なものとなっています」

これまでのキャリアで多くの監督から指導を受けてきたと思いますが、ピトゥカ選手が見る岩政監督とは?

「プロサッカー選手だったということもあり、僕らに対する言葉遣いや振る舞いにとても気を使ってくれているし、選手の心理を理解してくれていることはとても大きいです。苦しい状況を抜け出したとはいえ、岩政監督も現状にまったく満足していないと思います。もともと勉強熱心なタイプであり、『チームをもっとよくしていきたい』と、常に改善点や修正点を洗い出してチームに落とし込もうとしてくれています。だからこそ、僕らは岩政監督が求めていることをピッチ上でより実現したいと思うし、岩政監督の助けになることも僕らに与えられた役目の一つ。お互いをリスペクトする精神がいい状態で保てている限り、これからもチームとして正しい方向へと歩んでいけると信じています」

監督と選手のいい関係性が築けているのですね。

「そうですね。チームが置かれた状況はもちろん、監督やスタッフたちからのアプローチがいい刺激になり、選手一人ひとりがアントラーズというビッグクラブのユニフォームを着ることの重みを、改めて感じられたのだと思います。つまり、100%を出すことはもちろん、200%の力を出し切ることのできる選手が、アントラーズに勝利をもたらすことができるのだと、チーム全体が再確認したのです」

ピッチ上のピトゥカ選手の姿からも、アントラーズの一員として戦おうとする意識の高まりが感じられます。

「今のアントラーズは平均年齢が若いチームです。だから、若手選手や新加入選手たちには、僕を含めた経験のある選手たちが、これまでのキャリアをもとに、できる限りプラスに働くようなアプローチをしなければいけません。序盤戦の苦しい状況を抜け出すことのできた要因の一つには、経験豊富な選手たちを中心にさまざまなシーンで話し合い、選手間の意思疎通を図ってきたことも挙げられると思います。また、岩政監督とも多くのコミュニケーションを重ねてきましたので、チームが抱える課題や問題を一つひとつ潰していくことができたのではないかと思います」

PHOTO


今季はとてもいい状態で
サッカーに取り組めている

リーグ開幕戦からスタメンでの出場が続きました。前半戦の自分自身の出来について、どのように評価していますか?

「今シーズンは、自分としてもいい状態でシーズンを送れているのではないかと手応えをつかめています。個人的にとても幸せな気分を感じながら日々のトレーニングや週末の試合に臨めているので、家族も今の状況を幸せに感じてくれています。自分が幸せだから家庭にも幸せな空気を持って帰れているのか、それとも家族が幸せだから自分も幸せな気分でいられるのか、どちらなのかはわかりませんが、僕自身がとてもいい状態を維持できていることは間違いないと思っています」

5月以降、ピトゥカ選手のSNSアカウントには、家族との外出風景やリフレッシュする姿がたくさんアップされていました。

「ちょうど僕の両親が日本に来ていたので、できるだけ日本国内のさまざまなところに連れていってあげようと考えていました。妻はいつも、日本の観光地や美しい景色が見られるところをインターネットで調べてくれているんです。それらを頼りにいろいろなところへ出かけました。僕も妻もまだまだ知らない日本の絶景スポットがあると思うので、娘も含めて、これからも家族で多くの場所を訪れてみたいと思っています。もっとも、充実したオフを過ごしているだけでなく、日々のルーティンである娘の送り迎えも、きっちりとやっていることを皆さんにお伝えしておきます(笑)」

ピトゥカ選手の言葉からは、常に家族への愛情が感じられます。

「今の自分がいるのは両親のおかげであり、これまでのキャリアを通して、僕がサッカーをやめることなく今なお続けていられるのも両親のおかげです。そしてサッカーを続けてきたなかで妻と出会い、日々よりよいサポートをしてくれていますし、彼女との間には一番の宝物である娘もいます。僕は本当にすばらしい家族に恵まれた人間であり、これからもずっと愛情を注ぎ続けたいと思っています」

PHOTO


アントラーズに加入して以来、1年目より2年目、2年目より3年目と、心身ともにピトゥカ選手のコンディションは高まっているように見えます。

「確かに、そのとおりかもしれません。加入1年目の21年は、最愛の家族と離れて日常を過ごさなければなりませんでしたし、サッカー面も生活面も、あらゆる部分で日本のやり方に慣れるのに精いっぱいでした。2年目の昨シーズンは、試合中にイライラしてしまうことも少なくなく、自分のベストパフォーマンスを披露できたとは言い難いところがあります。ただ、そういった面も教訓にしながら、前に進んできたつもりです」

そして、この23シーズンが加入3年目となりました。

「先ほども話したとおり、今シーズンは自分でもとてもいい状態でサッカーと向き合えていると思っています。ピッチ内外における取り組みでも、栄養士やパーソナルコーチをつけたことで、多くの方にサポートをしてもらいながら、いいコンディションをキープすることができています。自分としても心身の状態のよさに手応えを感じていますから、そういうところが過去2年との違いとなって表れているのかもしれません」

シーズン後半戦に向けては、どのような展望をイメージしていますか?

「もちろん、岩政監督がこの先も僕に信頼を寄せて、起用し続けてくれることを願っています。それと同時に、やはり僕はアントラーズを上位に導くのではなく、このチームにタイトルをもたらすために移籍してきたので、ピッチに立っている以上、現状に満足することなく、アントラーズが本来いるべき順位へと押し上げていきたいと思っています」