新国立競技場での記念すべき初の天皇杯決勝、ヴィッセル神戸と対戦すると前半に2失点を喫する。後半に入ると、決定機を何度かつくったものの決めきることは出来ず、このまま0-2で敗れた。
12月21日の準決勝、カシマスタジアムでV・ファーレン長崎を3-2で破った。試合後に指揮官が「非常にタイトな試合で、勝ち上がることが第一だった。決勝に進むことができてよかった」と振り返ったとおり、長崎に押し込まれる時間帯が長く続く難しい展開を余儀なくされた。それでも、チーム一丸となって守備を行い、新国立競技場で行われる初めての決勝へ進出を決めた。
「今シーズンやってきた改善と継続を次の決勝に向けて再び繰り返して、必ずタイトルを獲ろうという話を選手たちにした」
選手、コーチ、スタッフとして17年間ともに戦った大岩剛監督を有終の美をもって送り出そう。今シーズン味わった幾多もの悔しさを糧に、指揮官への感謝を胸に、シーズンラストマッチへと突き進んでいった。
迎えた2020年元日、新国立競技場に続々とアントラーズファミリーが詰めかけた。ここから新たな歴史が築かれていく。スタジアムは天皇杯決勝にふさわしい緊張感に包まれた。
キックオフ1時間前、先発メンバーが発表された。ゴールマウスはスンテが守る。最終ラインは右から永木、ブエノ、犬飼、町田が入った。ボランチは三竿とレオがコンビを組む。サイドハーフは右に名古が入り、左は白崎が務める。前線の2トップは、セルジーニョと伊藤が組んだ。ベンチには、曽ケ端、内田、山本、関川、土居、中村、有馬が座る。
14時37分、アントラーズのキックオフで戦いの火蓋が切られた。
立ち上がり、アントラーズはゴール裏から送られる力強い声援を背に受けて、積極的に攻撃を仕掛けていった。だが、時間の経過とともに神戸に押し込まれていく。
前半10分、この試合初めてのピンチを迎えた。セットプレーのクイックリスタートでロングボールを入れられると、ペナルティエリア内左で西に折り返されて、最後は古橋にゴール前でシュートされてしまう。決定的な場面となったが、守備陣が素早く古橋に寄せたこともあり、シュートは枠を外れ、失点には至らなかった。
さらに、13分にもピンチが訪れる。古橋に左サイドを強引に突破され、グラウンダーのクロスを入れられた。ゴール前で藤本にフリーでシュートされたが、これは大きく枠を外れた。
立ち上がりのピンチを凌いだアントラーズだったが、15分を経過したあたりから相手陣内でセットプレーを連続で獲得し、神戸を押し込んでいく。しかし、決定的なシュートを放つまでには至らなかった。
すると、18分にアントラーズは痛恨の失点を喫してしまう。右サイドからポドルスキにペナルティエリア内に進入されると、角度のない位置からシュートされる。シュートはGKスンテが弾いたが、味方選手に当たり、ゴールへ吸い込まれてしまった。
リードを奪われたアントラーズは、26分にフリーキックからチャンスをつくる。キッカーの永木がペナルティエリア内に入れたボールはクリアされたが、そのクリアボールをセルジーニョがボレーでゴールを狙う。決定機だったが、これは枠の上へと外れてしまった。
チャンスの後にはピンチが訪れる。27分、大崎がペナルティエリア手前からパスを出すと、反応した酒井がゴール前でフリーのポドルスキへラストパスを送る。これをポドルスキが左足で合わせてゴールネットを揺らした。だが、これはパスを出した酒井がオフサイドの判定でゴールは認められず、失点は免れた。
流れを掴めないまま迎えた38分、左サイドから西にクロスを入れられる。ニアサイドで犬飼がクリアを試みたが、後ろに逸らしてしまい、最後は藤本に合わせられ、ゴールネットを揺らされてしまった。VARにも判断が委ねられたが、得点が認められ、スコアは0-2となった。
前半はこのまま0-2のスコアで終了を迎えた。
後半開始からアントラーズは選手交代を行う。白崎との交代で土居をピッチへ送った。セルジーニョが右サイドハーフにポジションを移し、土居は前線に入った。
49分、アントラーズはセットプレーからチャンスをつくる。キッカーのレオから送られたボールがゴール前で混戦を生み、最後は伊藤がシュートする。だが、シュートは枠を捉えられなかった。
53分、アントラーズは二人目の選手交代を行う。名古に代えて山本を投入し、フォーメーションを4-4-2から3-4-2-1へ変更した。
布陣の変更からアントラーズが一気に流れを引き寄せる。57分、右サイドからセルジーニョが送ったクロスをファーサイドで相手GKがこぼし、こぼれ球を土居がシュートする。だが、これは相手選手のブロックに阻まれ、得点には至らなかった。
勢いづくアントラーズは、61分に再びチャンスをつくる。左からのクロスは相手選手にクリアされたが、クリアボールを拾ったレオがミドルシュートを放つ。だは、これは枠を捉えられず、得点には至らなかった。
立て続けにチャンスをつくっていたアントラーズだったが、その後はボールを握りながらも、神戸の素早いプレスを前に、決定機をつくれない展開が続く。
72分、アントラーズは最後の選手交代を行う。伊藤との交代で中村が投入された。しかし、80分にピンチを迎える。右サイドからのスルーパスでポドルスキに抜け出されると、最後は田中にシュートされる。決定的な場面だったが、シュートはGKスンテが好セーブで防ぎ、得点を許さなかった。
残り時間は10分を切った。ボールを動かしながら相手の隙を探るアントラーズだが、11人全員が自陣に戻る神戸の守備を前になかなかチャンスをつくれない。試合終盤まで諦めずにゴールを狙い続けたアントラーズだが、神戸の固い守備を破ることができなかった。このまま0-2のスコアで試合終了のホイッスルを聞いた。
新国立という晴れ舞台、眼前で神戸の優勝セレモニーを見届けた。この悔しさは絶対に忘れられない。タイトル奪還の決意を胸に刻み込み、来たる2020シーズンへ準備を進めていく。



・ボールを持ったら正確につなぎ、追い越す動き、前向きにプレーすることを意識しよう。
・最後まであきらめず、全員で戦おう!
・後半も同じようにプレーしよう。
・相手はプレッシャーをかけてくる。正しい判断をしていこう。
Q.得点が取り切れなかった要因は?
A.シーズンを通して、最後に得点を取れなくて苦労したが、今日も相手が先制し、しっかり守備をしてくるなかで、サイドを起点に攻撃を仕掛けることを徹底した。後半は立ち位置を変えて、サイドに人を増やして数的優位をつくって、得点を狙うということはできた。あとは最後の決めるという部分でもう少しアイデアが欲しかった。
Q.前半苦戦した要因は?
A.ミスマッチとよく言われるが、システムの戦いのなかで、我々はミドルゾーンでプレッシャーをかけながら最終ラインをスライドしながらコンパクトにするという意図がある。だが、どうしても最終ラインの後ろに重心がかかった。プレッシャーをかけないとラインを押し上げられないので、連動性が欠けていた。それは緊張感の影響かもしれないし、選手間の意思の疎通の影響かもしれなし。
Q.次のキャリアをどう考えているか?またこの敗戦は次につなががると思うか?
A.自分自身、この舞台で戦う喜びもありましたし、悔しさが次の糧になっていくと思います。
Q.これまでのキャリアを振り返って
A.監督としての2年半は試合数が多くて、チームビルディングやチームマネジメントの部分で非常に苦労した。これが僕のキャリアの大きなポイントになると感じている。監督に求められる戦術面やチームビルディングには自信を持つことができている。また監督の立場に立ちたいと感じさせられた。非常に充実した2年半だった。
神戸の前線にはいいポジショニングを取り、相手の嫌がるポジションでボールを受けるのがうまい選手がいるし、経験のある選手もいる。駆け引きの部分で負けないようにしていく。しっかりといいトレーニングができているし、神戸の対策もできている。決勝戦は、勝つか負けるかの二択しかない。自分たちが勝つことだけを意識してプレーをしていきたい。
【町田 浩樹】
神戸とはリーグ戦の最終節で対戦しているし、準決勝の長崎戦も同じようなシステムで戦っていた。準備はしっかりとできている。フォーメーションのミスマッチの部分を突いてくると思うので、守備時のスライドや、ポジショニングが重要になってくると思う。
【犬飼 智也】
神戸のやり方に対しての確認はできている。試合が始まったら、また状況が変わってくるかもしれないが、しっかりとそこは全員で確認作業をしていきたい。ゲームの中で相手の時間もあると思う。そこで我慢をする時間と、自分たちがアクションを起こしてやる時間をチーム全員で共有していくことが大事になってくる。
【ブエノ】
ここまで、みんなでいいトレーニングをしてきた。いい準備をして試合に臨んでいきたい。神戸は後方からしっかりとパスをつないでくるチーム。そして、素晴らしい選手がたくさんいる。ただ、自分たちのやることは変わらない。前線からプレッシャーをかけに行く。相手の流れになる時間帯もあると思うが、そこは我慢をしていく。
【名古 新太郎】
神戸は、準決勝で戦った長崎と同じシステムで来ると思う。自分のポジショニングや頭を使ったプレーが、より重要になってくると思う。チームとしてここまで準備をしてきたし、全員が共通理解を持ってできていると思う。まずは、受け身にならないことが大事。相手の時間になったときに、ボールを持たれていると思うのではなく、ポジティブに考えて積極的に守備をしていくことが大事になってくる。
前半は相手のやりたいようにやられてしまい、ほとんど自分たちが何もできずに終わってしまった。後半はシステムを変えてうまくいったが、点を取る力がなかった。不甲斐ない気持ちでいっぱい。
【町田 浩樹】
今日は完敗だと思う。前半は相手の攻撃にうまく対応していくことができなかった。後半はフォーメーションを変えたことで、うまくいくようになった。もう少し早く、自分たちで変えていくことができれば良かったと感じている。
【犬飼 智也】
早い時間で失点していなければ、また展開も違った。力不足だなと思う。2失点目は僕のミス。あのままならば、違った展開になっていただろうし、本当に悔いが残る。いいときは、どんなに苦しいゲームでも守りきっていた。どこかにスキがあったと感じている。
【三竿 健斗】
自分の不甲斐なさを痛感している。3バックに対して、自分たちがシーズンを通してたくさんやってきたが、最近はうまくいかなかった。後半は相手と同じシステムにして、やることがはっきりした。前半のうちに、自分たちで変化していけたらよかった。修正できないところが、僕たちの現状だと思う。何がいけなかったのかを自分でしっかり認識しないといけない。決勝の大舞台で自分たちの力を出せなかったのが一番未熟なところだと思うし、自分自身も納得のいくパフォーマンスを出せなかった。
【土居 聖真】
誰が悪いというわけではない。チーム全体として負けてしまった。神戸には、イニエスタ選手やポドルスキ選手など、ボールをおさめて落ち着かせられる選手がいた。自分たちは、ボールを奪ってもすぐ失ってしまう場面が多かった。神戸の方が一枚も二枚も上手だったなと感じた。後半は前半とは真逆のサッカーになったと思う。ただ、点が取れなかったことが悔しいし、失点の場面もいい崩しやシュートを打たれたわけではないので、なおさら悔しさを感じている。個人的にもチームとしても、もっと成長しなければいけない部分がたくさんあった試合だった。
【伊藤 翔】
相手の3バックのシステムに対して対策を練ってきたが、なかなかうまくいかない場面が多かった。後半はシステムを変えて、相手と同じシステムに変更してプレーして、うまくいった。ただ、前半の2失点が重かった。
【山本 脩斗】
得点差を考えて積極的に高い位置を取っていこうと思い、ピッチに入った。チームに推進力を与えることはあのポジションで出たからには、求められていることだと思う。後半はしっかり守備をしながらゴール前までボールを運ぶことができていた。ただ、点につながらず、敗戦してしまったので、悔しい。