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止まらず、動き続ける

樋口 雄太インタビュー

特集

樋口 雄太

2023/6/26

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樋口が止まってしまうと
チームも止まってしまう

現代フットボールにおいて、多くのポジションで役割は変わってきています。今、中盤の底を担うポジションの役割をどのようにとらえていますか?

「一昔前までのように、守備だけをやっていればいいとか、攻撃だけをやっていればいいといったポジションではなくなったと思っています。どちらかしかできない選手は評価されなくなったとすら感じています。攻守において高い要求を遂行しつつ、なおかつゴール前に顔を出してフィニッシュに絡むなど、多くの役割と、幅広いエリアでのプレーを求められるポジションになってきています」

樋口選手の1試合におけるヒートマップ(プレーしたエリアを可視化したデータ)を見ても、確かにピッチ全域に及んでいます。

「このエリアだけを守っていればいいとか、ここからやらせなければいいといったように、ポジションを固定や限定できなくなっている難しさは感じています。だからこそ、やはり動けないボランチや走れないボランチは淘汰されてしまいますよね。ボランチは、ありとあらゆる場面に顔を出せる選手が評価される時代に突入しています」

今季でプロ5年目を迎えていますが、ボランチとしての成長をどのように振り返りますか?

「プロになり、壁にぶち当たった1年目は、自分で何かをするのではなく、周りに、それも近くにいる選手にボールを預けることしかできませんでした。自分の選手としての評価を上げるために、自らチャレンジするというマインドも足りなかった。むしろ、ミスをしないことばかりを考えてプレーしていたように思います」

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変わるきっかけはあったのでしょうか?

「鳥栖時代は1年半近く出場機会を得られず、ようやく試合に出られるようになったときも、当初はチームとして求められている役割を最低限こなすことしかできませんでした。それが徐々に出場機会を得て自信がつき、チームの中心になっていったことで、変わってきたように思います。そこから、チームとして求められていることだけでなく、プラスアルファとして、自分の特長やよさも発揮できるようになりました」

プレーの幅は、アントラーズに加入してからも広がっているのでしょうか?

「鳥栖時代とアントラーズでプレーしている今とでは、自分のプレースタイルはかなり変わってきていると感じています。アントラーズのサッカーで自分を生かすには、こういうプレーがいいのではないかと探りながら、確立してきたと思っています。実は少し前にも、自分のプレースタイルについて考えさせられる出来事がありました。それはチームが連敗していた時期に、吉岡宗重フットボールダイレクター(FD)から言われた言葉でした。『雄太が動きを止めてしまうと、チームの流れも止まってしまう。雄太が動き続けることで、チームはうまく機能していく』と。その言葉が強く心に刺さり、改めて自分自身のプレーを振り返りました。そのとき、調子がいいときは動き続けることができているけど、調子が悪いときは立ち止まってしまう時間が長くなっているように感じました。吉岡FDのアドバイスを聞いてからは、自分のなかで意識も変わり、どんなに試合でミスをしようとも、どんなに試合で調子が悪かろうとも、立ち止まることなく動き続けるようになりました。その結果、チームの流れが滞る時間帯も減り、自分がボールにかかわる回数も増え、徐々に自分の変化も実感するようになってきています」

プレーも、成長も止まることのない樋口選手が、追い求める理想のボランチ像について聞かせてください。

「自分自身に物足りなさを感じているのはアシスト、ゴールにかかわるプレーが少ないことです。アシストという数字においては、セットプレーでキッカーを務めている関係もあって記録は残せていますが、流れのなかからのアシストは決して多くありません。起点になるプレーで、ゴールにかかわることはありますが、まだまだ決定的な仕事は少ない。ラストパスの精度や種類、アイデアを追い求め、そこにこだわっていかなければ、さらにワンランク上の選手に到達することはできないと思っています。自らのゴールも含め、数字にこだわっていければと思っています」

シーズンも後半戦に突入していきます。ここからチームが上を目指していくために大切になってくることは何でしょうか?

「昨季もそうでしたが、今季も上位チームや強豪といわれる相手との直接対決を落としています。国立競技場で戦って2─0で勝利した名古屋(当時3位)のように、そのとき上位にいる相手からは必ず勝ち点3を得ることが重要になっていきます。そうした上位との直接対決を制することができなければ、シーズンの最後を笑顔で締めくくることはできないと思っています。また、今季を戦っているチームメートを見ると、本当に層が厚く、タイトルをつかめるだけの力があると感じています。このチャンスを個人的にも逃したくはないですし、だからこそ、誰が試合に出ても勝てるような空気感をチーム全体で作り出し、1試合1試合を勝ち抜いていくことができればと思っています」

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技術力と攻撃力に機動力が合わさり多彩になる

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