ACADEMY FREAKS INTERVIEW

選手への声のかけ方、そしてオファーの裏側。3人が目指すスカウト像とは

 

アカデミースカウト鼎談 第3回
本山雅志、鳴海勝也、鈴木基悦

 

アカデミースカウトの仕事は、ピッチサイドで選手を“見る”だけでは終わらない。

指導者や保護者と対話し、選手とクラブの未来を一緒に描くところもスカウトの役割だ。

最終回は、オファーまでのプロセスとコミュニケーションの難しさ、そして3人が目指すスカウト像について。(第3回/全3回)

指導者・保護者への声のかけ方

──大会や試合に行ったとき、まずはどのように行動するのでしょうか。

本山 大きな大会であれば、まずは主催者の方に挨拶に行きます。「アントラーズとして見させていただきます」とお伝えしてから、試合を見始める感じですね。

気になる選手がいれば、そのチームの監督さんに「◯番の選手が気になったんですが、どんな子ですか?」と話を聞きます。親御さんがいれば、可能な範囲で様子を見ることもあります。

鈴木 ただ、あまり話しすぎると「オファーが来るのかな」と勘違いさせてしまう可能性もあるので、そこは気をつけています。ジュニアの年代なんかは特に、ちょっと興味があって見に行っただけなのに、「オファーされた」と噂だけが一人歩きすることもあるので、“つかず離れず”の距離感を大事にしていますね。

鳴海 「かわいい選手ですね」とか、つい言っちゃうんですよね(笑)。それがどこかで「オファーされた」に変換されていたりして。

本山 そうそう。「この子も話しましたよね?」って言われて、「いやいや、そんな話してないですよ」ってこともあります(笑)。

鈴木 僕はまだ名刺を配るところからですね。四国の大会に行ったときも、まずは指導者の方々に挨拶をして、「いい選手がいたら情報をいただけると助かります」とお願いしました。すごく話してくださる指導者もいれば、あまり多くを語らない指導者もいます。そのときに「どうすれば心を開いてもらえるか」「どうすれば本音を引き出せるか」を考えながらコミュニケーションを取っています。

本山 ハルさん(鈴木)は“ママキラー”ですからね(笑)。お母さん世代、おばあちゃん世代の心をつかむのがうまい。

鈴木 いやいや、そんなことないです(笑)。でも、一父兄としての目線は活かせているかもしれません。

鳴海 僕が一番意識しているのは、「アントラーズの印象を悪くしないこと」です。エンブレムをつけて行っていなくても、初対面の方にとっては「目の前にいる自分がアントラーズ」なので、身だしなみや話し方、振る舞いには気をつけています。距離感も大事で、近づき過ぎると期待させてしまうし、離れすぎると何も伝わらない。そのバランスはいつも考えながら接しています。

本山 「仲良くなりすぎる」のも難しいよね。毎日メッセージが来たりもするから(笑)。でも、それだけ信頼して連絡をくれるのはありがたいことです。

鳴海・鈴木 それモトさんの人柄だからっす!(笑)

 

オファーまでのプロセス。アントラーズが持つ“武器”とは

──「この選手をオファーしたい」となったとき、どんなステップを踏むのでしょうか。

本山 ジュニアもジュニアユースも、基本的には一度練習参加に来てもらいます。僕らスカウトは外で何度も見ていますが、ユースやジュニアユースの監督・コーチはその選手を知らないことが多い。なので、実際にトレーニングのなかでプレーしてもらって、コーチ陣にも見てもらうことが最初のステップです。

鳴海 ジュニアユースの場合は、「ノルテ」「つくば」「鹿島」それぞれのチームに合う選手かどうかも考えます。遠方から引っ越してくる選手は、基本的には鹿島のジュニアユースとアカデミーハウスが前提になりますし、関東圏の選手であればノルテやつくばのほうが環境的に合うケースもある。そこは編成や家庭の状況も含めて、かなり細かく話し合っています。

鈴木 正式なオファーの際には、書面も用意します。寮に入る場合は費用や生活のルール、学校のことなども含めて説明した資料をお渡しして、「この条件でお預かりしたいです」とお話をします。ただ、子どもが「どうしてもアントラーズに行きたい」と最初から決めてくれていて、書面は後から整えるだけ……というケースもあります。そういうときは、こちらとしてもすごく嬉しいですね。

本山 本当に、子どもが「行きたいから行く」と言ってくれたら、それが一番いいんです。親御さんは当然、金銭的な部分や生活の部分も含めて悩まれるので、そこもしっかり説明しながら一緒に考えていく形になりますね。

──選手や保護者にアントラーズの魅力を伝えるとき、どんなポイントを強調していますか。

本山 まずは環境ですね。アカデミー専用のグラウンドやアカデミーハウス、トップチームに隣接した雰囲気。実際にスタジアムやユースの練習、トップのトレーニングを見てもらうと、ほとんどの子どもたちは目を輝かせてくれます。それでも選んでもらえないこともありますが、そのときは「それはそれで仕方ない」と思えるくらい、自信を持って勧められる環境だと思っています。

鳴海 トップチームが強くあり続けていることも、大きな武器です。福岡に行ったとき、中学生に「アントラーズの選手で誰が好き?」と聞いたら、「吉田湊海選手です」と返ってきたんです。まだプロ契約前のユースの選手ですよね。それぐらい、今のユースの活躍や存在感は全国に届いている。トップとユース、アカデミー全体がつながっているクラブだからこそ、「ここに来れば自分もそこを目指せる」とイメージしてもらえるのかなと思います。

鈴木 僕は、入ってからのサポート体制もアピールしたいポイントだと思っています。自分自身が一父兄でもあるので、親御さんが何を心配しているか、どこが不安なのかはすごく分かります。だからこそ、「お子さんだけでなく、ご家庭ごとしっかりサポートします」というスタンスでお話しするようにしています。

 

スカウトが“いつも持ち歩くもの”と目指すスカウト像

──スカウトの仕事で「これは必ず持って行く」というアイテムはありますか?

本山 傘ですね(笑)。突然雨が降ることも多いので。あとはノートとペン、名刺。子どもたちもいるので、飴をちょっとカバンに入れておいて、知っている子には「ほら」と渡したりもします。

鈴木 黒柳徹子方式ですね(笑)。

全員 (笑)。

鳴海 僕はスマホと名刺があれば、だいたいなんとかなるタイプです。メモも記録もほとんどスマホで済ませていますね。あとは時計。試合時間や選手交代のタイミングを見るうえで、腕時計は意外と重要です。

鈴木 僕はフリスクです(笑)。たくさんの人と話す仕事なので、失礼のないように。これから冬になると、防寒具も必需品ですね。長時間外にいる仕事なので、まず自分が元気でいないと、いいプレーも見逃してしまいますから。

本山 まあ、どれだけ道具を揃えても、最後に必要なのは「選手を見る目」と「選手を大事に思う気持ち」ですね。

鳴海 そのあたりは3人とも、しっかり共有できていると思います。

鈴木 はい。これからも3人で、いい選手をアントラーズに連れてこられるように頑張ります!

──最後に、皆さんが「こうありたい」と思うスカウト像について教えてください。

本山 まずは内部をしっかり見ること。クラブのなかで育っているいい選手をきちんと引き上げていくことが一番だと思っています。そのうえで、Jクラブが少ない地域や、環境的に恵まれていない場所にいる選手のなかから、「アントラーズに来ればもっと伸びる」と感じる子を連れてこれたら最高です。幼稚園の頃からスクールに通って、ジュニア、ジュニアユース、ユース、トップまで行く選手が増えていくこと。そのなかに、外から来た選手が刺激を与える関係がつくれたら理想ですね。

鳴海 僕はまず、アントラーズというクラブそのものをもっと勉強していきたいです。現場で指導してきた経験を生かしながら、このクラブが大事にしているものを自分のなかに落とし込んで、そのうえで「いい選手をしっかり見極めて獲得できるスカウト」になりたい。そして獲得して終わりではなく、その後も気にかけて、選手やご家族に寄り添い続けられる存在でありたいと思っています。

鈴木 僕は、まだ1年目で分からないことだらけですが、「アントラーズと出会えてよかった」と選手や保護者の方に思ってもらえるスカウトになりたいです。そのためには、自分自身が一番アントラーズを好きでいること。クラブの良さを誰よりも信じて伝えられる人間であることが大事だと思っています。

本山 最後きれいに持っていきましたね(笑)。

鳴海 完璧な締めでした(笑)。