ACADEMY FREAKS INTERVIEW

“アントラーズらしさ”とは何か。選手を見る目と、早期選考のジレンマ

 

アカデミースカウト鼎談 第2回
本山雅志、鳴海勝也、鈴木基悦

 

アカデミースカウトの仕事は、「うまい選手」を探すことだけではない。

アントラーズのサッカーにフィットし、将来トップチームで戦える可能性を見極めること。そして、成長途上にある小中学生を「いつ、どう評価するか」という難題に向き合うことでもある。

第2回は、3人が大切にしている“見る目”と、“アントラーズらしさ”について。(第2回/全3回)

初めて見る試合で、何を見ているのか

──初めて見る試合や選手は、どんな目線でチェックしているのでしょうか。

本山 一番は「内部との比較」です。今アカデミーのなかにいる選手たちと比べて、何が足りないか、どんなピースを外から補いたいか、という視点を常に持っています。そのうえで、成長期なので身体的な部分、これからどれぐらい伸びそうかという要素も見ますし、アントラーズはトップも含めて技術を非常に求められるクラブなので、「止める・蹴る」がちゃんとできるかは必ず見ますね。

鈴木 それは1年目の僕でもすごく感じます。内部のレベルが高いので、外を見に行ったときに「内部より上かどうか」は自然と基準になりますよね。

鳴海 僕は、まず“光るものがあるかどうか”を見ます。ボールが集まってくる選手なのか、スピードなのか、フィジカルなのか、ボールを失わない技術なのか。トップレベルの選手って、見た瞬間に「おっ」と思わせる何かを持っているんですよね。その「おっ」を感じたうえで、「このレベルなら通用するけど、もっと上に行ったらどうか」をイメージしながら見ています。

本山 「どのレベルならいけるか」はよく話しますよね。「このリーグなら無双してるけど、もう一段上だとどうかな」とか。

鳴海 そうですね。そこを冷静に見るようにしていますね。

鈴木 僕はまだ1年目なので、まずは「全体をちゃんと見る」ことを一番意識しています。試合で気になった選手がいれば、次は練習を見に行きます。試合と練習で態度が変わらないか、トレーニングのなかでどう振る舞っているか。そのうえで、コーチや親御さんに話を聞いて、「その子がどんな人間なのか」を確かめていくイメージです。

本山 そこは“探偵”っぽいところあるよね。

鈴木 本当にそうです(笑)。話をうのみにしないで、自分の目で確かめるのはすごく意識しています。

 

“アントラーズらしさ”をどう見極めるか

──よく「アントラーズらしい選手」という言い方をしますが、皆さんはそれをどう定義していますか?

本山 一言で言えば、「諦めない選手」ですね。球際で強く行けるか、最後の最後まで追いかけられるか。そういうメンタリティはすごく大事です。あとは、性格がいいこと。負けず嫌いで、でもチームメイトや相手をリスペクトできる選手。そういう人間性の部分も含めて「アントラーズらしさ」だと思っています。

鳴海 技術やフィジカルが高いのは前提として、「この選手が将来トップのユニフォームを着ている姿が想像できるかどうか」はよく考えますね。うまいだけではなく、苦しい状況で踏ん張れるか。試合の流れを自分たちのほうに持ってこようとする粘り強さがあるか。そういう選手は、やっぱり目に留まります。

鈴木 小学生で言うと、「アントラーズが好きかどうか」もすごく大きいと思います。練習会や大会で「アントラーズに行きたいです」と自分から話しかけてくれる子もいますし、そういう選手は自然と目に入ります。クラブを好きでいてくれる選手は、きっと努力も続けられるし、苦しいときにもう一歩頑張れる。そう信じています。

本山 アントラーズ好きな選手のほうがいいよね。「アントラーズ愛」がある子は、やっぱり伸びる。

鳴海 内部の子たちもそうですよね。ずっとここで育ってきて、「トップに行きたい」と言ってくれるのは本当に嬉しいです。

 

情報に“踊らされない”ために

──指導者や親御さんから情報をもらうことも多いと思いますが、その扱い方で意識していることはありますか?

本山 正直、良いことしか言われないことも多いです(笑)。だからこそ「本当かどうか」を自分で確かめないといけない。コーチが言っていること、自分の目で見た印象、親御さんの話、チームメイトとの関わり……。いろいろな情報を集めたうえで「この選手はこういう子なんだ」と、自分たちの側で答え合わせをしながら決めていきます。

鈴木 「この子、どうですか?」と聞いたときに、親御さんは当然いいことを言ってくれますしね(笑)。

鳴海 そこはちゃんと“差し引き”して考えないといけないですね。スカウトって、ちょっと“探偵”みたいなところがありますよね。「いい選手ですよ」と言われても、それだけで「じゃあ獲りましょう」には絶対ならない。自分で何度も見て、練習にも足を運んで、いろいろな角度から見ていく。失敗も成功も含めて、経験を重ねるしかない仕事だと思います。

本山 まだ僕らも“浅い”部分はあるので、チャレンジを増やしながら、失敗と成功を積み上げていくしかないですね。

鈴木 でも、チャレンジしないと何も分からないですからね。慎重になりすぎず、でも冷静に、というバランスは意識しています。

 

 早期選考の現実とジレンマ

──小学生・中学生は成長のスピードもバラバラです。そのなかで、オファーのタイミングは難しそうですね。

本山 正直、とても難しいです。小学生で言うと、ここ数年、スカウトのタイミングがどんどん早くなっていて、小学5年生の夏には決まり始め、小学6年生の11月にはほとんどの“いい選手”が進路を決めています。本当はもっと長い目で見てあげたいんですよ。小学6年生の夏まで見れば、体つきも変わるし、サッカーIQも技術も大きく変わってくる。でも、そうしているとこちらが出遅れてしまう。そのジレンマは常にあります。

鈴木 今は小学6年生の試合を見に行っても、「あの子はもう決まったよ」と聞くことが多いですよね。

鳴海 最近は、小学5年生の夏にはもう決まり始めていて。少し前までは小学6年生に入ってから、という感覚だったんですけど、どんどん前倒しになっています。

鳴海 中学生も同じですね。すぐに決めてくれる選手もいれば、1年かけて悩む選手もいる。内部の編成やポジションのバランスもあるので、早く動いたほうがいいケースもあれば、じっくり見たほうがいいケースもある。地域によっても全然違います。関東は決まるのがすごく早いですけど、九州や四国は少しゆったりしていて、小学6年生でもまだ決まっていない選手がいる大会もあります。そのなかで、内部の決定タイミングとも擦り合わせながら、毎年「今年はどう動くか」を考えている状況です。

本山 この前の四国の三連休なんか、まだ決まっていない6年生もいましたからね。地域差はかなりありますね。

鈴木 早く決めることが必ずしも“良いこと”ではないのは、みんな分かっているんです。内部でも、一度早い段階で編成を固めたあとに、「あれ、この子すごく伸びてきたぞ」という選手が出てくることもある。だからこそ、内部スタッフともよく話をしながら、「今年はどこまで待てるか」「外部へのオファーはどのタイミングにするか」を調整しています。

鳴海 内部が早く決まりすぎると、上がれなかった子がその後グッと伸びてくることもありますからね。その逆もある。だから毎年、動向を見ながら「今年はどういうスケジュールで動くか」を微調整している感じです。

本山 難しい仕事ですけど、それだけ“伸びしろのある年代”を見ているということでもあるので。その分、やりがいも大きいです。