
ジュニア、ジュニアユース、ユース、そしてトップチームへ。
鹿島アントラーズアカデミーでは、一貫した育成体制のなか、選手を「内部で見て育てる」ことを何よりも大切にしている。ジュニアユースの選手がユースの練習に参加し、ユースの指導者は日頃からジュニアユースの試合映像を確認して個々の成長をスタッフ間で共有する。カテゴリーを超えて、“目が届く関係”が続いていることこそ、クラブ育成の強みだ。
「夏休みの時期はジュニアユースの選手がアカデミーハウスに入り、ユースの練習に参加できます。そうやって上のカテゴリーに触れることが“個の育成”につながると思っています」
そう語る鈴木修人アカデミーマネージャーは、選手を送り出す立場であると同時に、内部で育てる責任を誰よりも意識している。一方、ユースに中学3年生が加われば、当然出場機会を失う上級生も出てくる。そのときのマネージメントをどうするのか。本田拓也コーチや岡本秀雄コーチをはじめとしたユーススタッフが寄り添ったコミュニケーションで支えながら、選手たちは互いに競い合い認め合う日々だ。
「そこも含めて“競争”なんですよね。上に呼ばれる子がいれば、出られない子もいる。でも、そういう現実を受け止めながら、向上心を持って成長できる環境が作れています」
指導の根底にあるのは、技術や戦術よりもまず「人間性」だ。
ただし、「良い人」だけでは終わらせない。
「人間性がないと育ちません。でも、人が良すぎても育たないと思っています。プロになるような選手は、どこか変わっている。そこを抑え込まずに伸ばしてあげることが大事なんです」
アントラーズには、そんな個性を見抜き、活かしてきた伝統がある。鈴木マネージャーがその象徴として挙げるのが、現在トップチームで存在感を放つ舩橋佑だ。
「正直、ユース時代の力だけを見れば他にも昇格候補の選手はいました。でも、メンタリティがあった。『アントラーズが好きだ』という気持ちで腐らずやり続けていた。その姿を見て、満男さん(小笠原ユースコーチ兼アカデミーアドバイザー)が“上げるべきだ”と推してくれたんです。結果的に、それが今の活躍につながっています」
その“推し”が実を結び、今季の舩橋はリーグ戦28試合に出場。そのうち18試合で先発し、出場時間は1454分、2得点を記録している。また、チャンス創出の基準となるラストパスは17本を記録し、チーム内で鈴木優磨、小池龍太に次ぐ3位の数値を残している。
「舩橋選手がいまチームの中で堂々と戦えているのは、彼がアントラーズの“中”で見続けられてきたからこそ。性格も強さも弱さも含めて、彼の多くを理解してトップに送り出せた。だからこそ、ブレない選手になっているんだと思います」
数字だけでは語れない「勝たせる力」を身につけるべく、苦しい試合でも折れないメンタルをベースに、日々成長を重ねている。そのすべてが、アカデミー時代から積み上げてきた“鹿島らしさ”の証だろう。
「今の時代、海外へ行く選手も多い。でも、アントラーズでなんとかしたい、ここで恩を返したいと思ってやれる選手が強いと思うんです。そういう選手が出てくると、アカデミーで育てている意味がはっきりと見えてきます」
“個”を育てることと“クラブで育てる”ことは、決して別物ではない。人間性や競争心、そしてクラブへの愛着までも含めて育てていく。その連鎖こそが、鹿島アントラーズというクラブの「土台」であり、「未来」そのものなのだ。