INTERVIEW
高円宮杯プレミアリーグへの展望
鹿島アントラーズユース 柳沢敦監督

2023シーズン、アントラーズユースは高円宮杯プリンスリーグ関東で優勝し、プリンスリーグプレーオフを勝ち抜いた。そして2024シーズンは2019シーズン以来となる高校年代最高峰の舞台、高円宮杯プレミアリーグEASTで戦う。高校3年生が卒業して新たなチームで挑むなか、柳沢ユース監督が描く新シーズンへの展望とは(取材はリーグ開幕前に実施しました)。
高いレベルを日常とした強化
東京国際大学、東洋大学、早稲田大学、筑波大学……。
新シーズンに向けて実施している練習試合の数々。そこには大学名がずらりと並ぶ。ひとつ上のカテゴリで戦う相手との対峙を繰り返しながら、高いレベルを日常とした強化が進んでいる。
「僕自身、コーチとして見させてもらった2年間に高円宮杯プレミアリーグを体感しました。やはり全体的なレベルはもちろん、フィジカル面も含めて甘くないリーグだと思っています。そのなかで戦うことを踏まえると、大学生に対しても堂々と戦える力がないといけません。日常から高いレベルにすることで成長してほしいという狙いがあります」
当然、試合中にうまくいかない場面もある。入寮がそれぞれのタイミングになってしまうこの時期は、メンバーがそろわない難しさもある。近年では年代別代表に選ばれる選手が増えて喜ばしい反面、チームを作り上げる難しさにも直面しているのが現状だ。毎年、新チームで始動するアカデミーならではの難しさと向き合いながら、柳沢監督は今年も現状に合わせたチームづくりを進めている。
「今までやってきた形は、いい守備からいい攻撃につなげていくことです。(ボールを)奪い切った瞬間に、相手のバランスが悪いところを突いて決め切る。そこは今年も変わらず表現していきたい。昨年のチームと比べるとまだ欠けているところがあるので、そのベースを上げていくことと、試合を重ねていくなかで成長していかないといけません」
今年はシーズン中もメンバーを固定できない可能性がある。
「今年は徳田誉と松本遥翔がトップチーム登録(2種)になりました。基本的に試合時であっても、必ず(2人が)いるかどうかが分からない状況です。その意味では、今いるメンバーでどう構築していくかを考えると、やはり個々の特長を生かしながら(のチームづくり)になっていくと思います」

曽ケ端GKコーチと話し合う柳沢ユース監督
「納得いかない」。2023年夏、選手から監督への提案
チームをまとめる手応えとして、昨年にいい形で成功体験を得た。
「昨年はひさしぶりに海外遠征を経験できました。修学旅行でオーストラリア、大会参加でインドネシアに遠征できて、チーム内での理解が深まった。外国籍選手との試合経験だけでなく、いつもと違った環境もすごく大事なんだと感じました」
8月に実施した、レアル・マドリードやFCバルセロナとも対戦したインドネシアへの海外遠征でのことだ。ピッチ外で“ゆるみ”を感じた柳沢監督は、選手たちを集めて声をかけた。だが、選手たちは言われたことに納得がいかなかった。ミーティングを終えると、3年生が自主的に集まって意見をまとめ、改めて柳沢監督のもとに話をしに行った。
「海外だから僕自身も、何かあったらいけないと、いつも以上にナーバスになっていたところもあって、チーム全体にピッチ外の部分で訴えた場面がありました。そのときに、彼らも彼らで言い分があって、しっかりと意見を持って改めて言ってきた。それを僕自身も冷静に聞き入れて、その後につなげられた。ピッチ外の面でもすごく大きい遠征でした」
起こった出来事は変わらない。大事なことは、次にどう活かしていくか。言われたことをそのままにせず、自らの意思を表現してきたことを、柳沢監督は反論ではなく「自主性の表れ」として前向きに捉えた。
「やはり3年生との会話は、チームの一体感にもつながることを実感しました。言葉にして相手に伝えることによって、その言葉に対して責任を持たなければいけなくなる。本来ならその場で解決するのがいいのでしょうけどね。それでも、みんながまとまって意見を言ってきたことは、すごく良かったと思っています。彼ら自身もそこからひとつ大人に成長できたのかなと思うし、その後の行動も、彼ら自身から変わってきた部分が見えました」
この夏の時点で、まだシーズン折り返し地点だ。多感な高校年代40人からなるチームは、その後もいろいろな出来事に直面した。コミュニケーションを取っては選手の変化を感じ、それがいい意味にも悪い意味にも転じる様子を見てきた。そんななかでも柳沢監督自身、選手たちに伝え続ける上でブレない軸を持っていた。
「どうやって自覚を持って取り組めるか。萎縮してサッカーをやっていても、絶対にうまくならない。その意味で、自覚を持って変わるときが一番成長できるときだと思うんです。(選手たちは)いい意味で変わってくれたかなと思います」
そのまま言葉を続ける。
「あとね、周りのスタッフたちもうまく振る舞ってくれたことが影響していて、僕だけだったらたぶん、そこまでうまくいかなかったと思うんです。いろんな人に話をしながら、みんなで成長できたなと思います」
チームはまとまり、それが結果にも表れていく。小さな一つひとつの積み重ねが、高円宮杯プレミアリーグ昇格へとつながった。

インドネシア遠征ではレアル・マドリード、FCバルセロナと対戦して経験を積んだ
全国レベルの個が一丸となって戦う
2024シーズンの中心となる新高校2、3年生のメンバーは、昨年にプリンスリーグ優勝、そして高円宮杯プレミアリーグ昇格を成し遂げて全国レベルへ駆け上がった。そこに新たに加わる新高校1年生も、同年代のトップレベルが集まっている。
昨年の高円宮杯U-15優勝メンバーである鹿島ジュニアユースから7人が昇格した:キャプテンMF平島大悟、DF米川彪音、DF林勘太、DF大貫琉偉、MF小枝源馬、MF三好凌月、FW福田竜正。
さらに、ノルテジュニアユースから昇格したFW物井慈元は、昨年の日伯友好カップで相手をいなしてミドルシュートを決めたゴールが注目を浴び、目の前で見たジーコCAが「彼が大会MVPだ」と推薦したほどだ。
また、外部から加入する選手は、鹿島JYのMF平島とともに年代別日本代表に選出される面々が集まった:FW吉田湊海(FC多摩ジュニアユース)、DF大島琉空(VIVAIO船橋SC)、DF元砂 晏翔仁 ウデンバ(FCフレスカ神戸)。
※DF大島は、JFA(日本サッカー協会)とのプロジェクトでスペインのレアル・ソシエダに約2週間(3月17日から4月2日まで)の留学に参加した。
「新チームになるということは、毎年ほぼ別のチームになるということ。そのなかで、新高校1年も、全国レベルの力を持つ、本当に頼もしくていい選手たちが入ってきました。本当にいい形に持っていってあげたいと思っています。ただ当然ながら、やはり1年の差は結構あって、フィジカル面はもちろん、慣れも必要です。まだまだ全体的に強化していくことと、チームのやり方をみんなが理解していく必要がある。全員が集まったのもまだ1、2回しかない。まだバタバタしていますね」
全員がそろうのは開幕直前の見込みだ。メンバーがそろわずとも、今できることをやっていく。大切にすることは変わらない。
「やはり毎日の練習で抜かずにやること。なんとなくこなさない、惰性でやらない。日々の成長が大切になっていきます。高円宮杯プレミアリーグで対戦する相手は、やはり個の能力が高い。高体連のチームもフィジカル的な強さが増してくると思うので、それに渡り合えるようにしていきたいですね。昨年の選手たちの頑張りによって、新しいステージに立てることになりました。またこの高校年代のトップレベルでいい結果を出せるように、そのなかで魅力ある選手を育てられるように。チーム一丸となってこれからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いします」
