SPECIAL INTERVIEW
ジュニア年代の育成
アントラーズスクール 増茂慎介チーフコーチ

アントラーズスクールは現在、茨城県と千葉県の計21カ所で開校している。
子どもたちがフットボールの喜びを感じるためのクラスから、より競技性の高いスペシャルクラスや強化クラスも設け、それぞれが切磋琢磨している。
そんなアントラーズスクールを支える増茂慎介チーフコーチに思いを聞いた。
女子のスクール生も増えてきた
―まず、増茂さんがスクールチーフコーチになった経緯を教えてください。
「2016年からスクールに関わるようになりました。アントラーズに来たのは2011年。当時、ユースチームの監督にブラジル人のキッカ氏が就任し、その通訳兼コーチとしてアントラーズに加わり、2015年まではユースのスタッフを務めました。指導者としては20年ぐらいのキャリアになります」
―アントラーズスクールの特徴はどんなところでしょうか?
「まず、スペシャルクラスや強化クラスといった、より競争力の高い選手を育てるためのクラスも設けていることが一つの特徴として挙げられると思います。子どもたちにフットボールの喜びを感じてもらうための普及のミッションと、アントラーズでプロになるような選手を輩出していくための育成のミッションの両方を果たしていかなければならないのが、アントラーズスクールの特徴でもあるのではないでしょうか」
―そういったスペシャルクラスや強化クラスを設けている効果はどのようなところにありますか?
「スペシャルクラスや強化クラスはジュニアやジュニアユースの指導者も担当します。また、それらのクラスに通っている子どもたちも、ゆくゆくはジュニアやジュニアユースでプレーすることを目標にしているはずなので、子どもたちにとっては目指している場所の指導者から直接フットボールを教えてもらうことで、次のステップへ向けて必要なことを習得するスピードもより早まる利点もあることでしょう。また、それらのクラスで育成された選手たちが実際にジュニアやジュニアユースに加わったときに、よりスムーズにチームに溶け込めることもメリットだと思います」
―実際にスクールからジュニアやジュニアユースに入った選手の割合はどのくらいでしょうか?
「鹿島エリアでは、ジュニアやジュニアユースの8割以上がスクール出身者です。ノルテエリアやつくばエリアはそれぞれの地域性もありますので、3つのエリア全体で見ると、7割くらいですかね」
―アントラーズスクールの発展については、どのようなことを感じていますか?
「近年では女子のスクール生も増えてきたことを実感しています。ノルテエリアとつくばエリアにはそれぞれ女性の指導者がいて、女子のスクール生を増やす努力もしています。これから、さらに女子のスクール環境は発展していくだろうと感じます」
―プロ選手の輩出などの実績面での発展についてはいかがでしょうか?
「今シーズンでいえば鈴木優磨選手と垣田裕暉選手が2トップを組んでいましたが、2人ともアントラーズスクールの生え抜き選手です。沖悠哉選手や舩橋佑選手もスクール生からトップへと駆け上がった選手たち。そういったトップで活躍する選手が何人か出てきたのは、スクールとして発展している証だと思います。ただし、アントラーズが策定したKA41という育成指針では、2041年までにトップチームのスタメンの半数以上を生え抜き選手で占めることを目標にしていますので、その視点ではまだまだ足りないことも事実です」
―生え抜き選手の重要性についても考えをうかがえますか?
「もちろん、チームを形成する上では他のチームから移籍してくる選手も極めて大事な存在だと思います。例えば、下位カテゴリーのチームで苦労を重ねてきたり、ずっとアントラーズに入りたいと思って努力を積んできたり、日本代表の実績を引っ提げてきたり、そういった選手もチームには必要になるでしょう。ただ、アントラーズアカデミーで育った生え抜き選手というのは、このクラブに恩義を感じている選手が多い。もう根っからアントラーズのスピリットを持っている生え抜きの選手たちは、そういった思いが土台にあるため、そんな状況でも力を発揮できるのではないでしょうか。そういったクラブへの忠誠心の強さが生え抜き選手にはあると思います」

エンブレムの恩恵を受けながら活動している
―一方で、スクールにはフットボールを始めたばかりの子どもたちも数多く在籍しています。そういった子どもたちへの指導において、大切なことは何でしょうか?
「やはり、フットボールの喜びを感じさせることです。あと、あいさつをすることや後片付けをすることなども促しています。それほど厳しく指導するつもりはありませんが、フットボールは団体スポーツなので、そういった団体行動でのマナーや礼儀は身につけてほしいと思っています。また、スクールの役割として、子どもたちにとってのコミュニティを作る場になるメリットもあることでしょう。例えば小学生ならば、基本的には限られた学区内にしかコミュニティができないかと思いますが、アントラーズスクールに通うことで学区外、あるいは他の市町村に居住する人とも友だちになることができますよね。他の地域に同じ目的、好きなフットボールを介して友だちができることはすごくいいことでしょう。いろいろな地域の人同士が触れ合うのは大切なこと。そういったコミュニティが増えていくことも子どもたちにとってはいいことだと思います」
―アントラーズスクールのコーチ陣に求めていることは何かありますか?
「このエンブレムに泥を塗らないことです。これは、アントラーズスクールのコーチになりたくて面談を受けに来る人たちにも必ず言っていることです。アントラーズの先人が苦労を重ねてその価値を高めていった誇り高きエンブレムですから、コーチたちもこのエンブレムを胸に刻むにふさわしい行動を常に心がけてもらいたいです。むしろ、我々コーチ陣はそのエンブレムの恩恵を受けながら活動している立場なのですから」
―最後に、未来に向けた取り組みとして、自信を持って行っていることを教えてください。
「冒頭でも話したように、自分自身は2015年まではユースのスタッフを務めており、2016年からスクールに関わるようになりました。当時、スクールでの1年目はいろいろと活動の様子を見て、自分なりにこれから何をするべきかを考えていました。その翌年の2017年に出した答えは、スクール生の増員よりも、まずはジュニアやジュニアユースなどにつなげる育成システムの整備を優先的に早く取り組むことだろうと。それまでは、スクール活動として他地域に遠征して試合をする習慣がなかったので、自分はそれに違和感を覚えたんです。ジュニアやジュニアユース、さらにはユースやトップを目指す選手を育てるためのスクールなのに、積極的に実戦経験を積ませることができていないのではないかと。なので、スクール生をたくましく育成するために、例えば熊本県へ行ったり、東北へ行ったり、積極的に遠征に行くようになりました。当時もスペシャルクラスや強化クラスはあったものの、試合よりもトレーニングばかり。しかも少人数のスクールだったので、パーソナルトレーニングのように見えることもありました。そういったところにテコ入れをするために、自分自身はマイクロバスの運転免許を取得して、スクール生たちをどんどん遠征に連れて行ったのです。そうして我々も努力を重ねて育てた代が今の中学3年生。夏の全日本クラブユース選手権(U-15)大会でベスト4という成績を収めてくれましたので、一つ結果に結びついたことをとてもうれしく思っていますし、アントラーズの未来に向けた取り組みとして努力してきた自負があります。これからも我々の方針転換が実を結んで、継続的に結果を残していってほしいです」
