PICK UP PLAYER

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「怪我なくできたのが良かったです。リーグ戦もカップ戦も、コンスタントに試合に絡めたのは、自分の最低限の目標でした。自分がアントラーズに来てから、一番出場時間も長かったですし、そのあたりは自分も満足しています」

 2019シーズン、永木亮太は本職のボランチだけでなく、右SBとしても起用された。ファイターとしての気質が強いゆえ見逃されがちだが、元来、ボールを前へ運ぶ推進力やセットプレーのキッカーを任されるほどのキック精度、さらには戦局を鋭く読む戦術眼も兼ね備えている。隠れた万能型プレーヤーとして右SBにも適応し、アントラーズ加入後では最多となるリーグ戦31試合に出場した。

 右SBでの起用はほとんど経験がなく、初めは戸惑いもあったようだが、実際にプレーすると新たな発見があったという。「SBは最終ラインの一角なので、一つのミスが失点につながる。ミスに対する責任の重さを感じた。だから、要求することも変わっていった」。ピッチ上での立ち振る舞いや周囲への声かけ、ボールの配給先やパスの強弱ーー。見える景色が変われば、意識も変わった。慣れないポジションを懸命にこなしたことで、多くの気付きと成長に繋がった。

 そして2020シーズン、永木はこだわりの強いボランチで勝負に挑む。レオ シルバ、小泉慶、三竿健斗、名古新太郎とライバルは強力だが、ポジションを譲るつもりはない。昨年の試行錯誤の日々は、必ず今季に活かされる。「ザーゴ監督と目指すサッカーで攻守の肝になるのはボランチ。楽しみながらやっていきたい」。永木が語る言葉からは、昨季勝ち得た自信と新たな挑戦への期待が感じられた。

 しかし、いざシーズンが始まると、出場機会に恵まれない期間が続いた。ACLプレーオフ、ルヴァンカップ初戦はベンチスタート、明治安田J1開幕戦はベンチ外。中断期間明けの第2節、第3節もベンチスタートだった。当然、フラストレーションは溜まっていただろうが、それを表には出さない。チームのため、ひたむきにトレーニングを続けた。

 そして、ようやく第4節のアウェイ浦和戦で今季初めて先発の座を掴んだ。「もう勝つしかない。勝てばみんなの士気もさらに上がると思う。勝ち点3を必ずとりに行く」と、確固たる決意で試合に臨んだ。強い気持ちはプレーに現れた。中盤の球際勝負へ積極的に飛び込み、溢れ出る闘志で味方を鼓舞する。また同時に、持ち前の器用さを活かして、ビルドアップにも貢献した。後方からボールを丁寧に繋いでいく新たなフットボールスタイルに適応しながら、ここまでチームが表現できなかった「戦う姿勢」を全面に出し、味方へと熱を伝播させていった。試合はセットプレーからの失点で0-1と悔しい敗戦に終わったが、永木がチームへ与えた影響は大きかった。

 浦和戦の敗戦で今季の公式戦連敗は6に伸びてしまった。苦しいチーム状況が続くいまこそ、永木の真骨頂である「不屈の魂」が必要だ。ピッチを誰よりも献身的に駆け巡る姿、気持ちのこもった激しいタックルは味方に勇気を与える。そして、勝利を掴むためならば、仲間との衝突も厭わない。気の抜けたプレーをみせた味方に対しては、躊躇なく激しい檄を飛ばす。でも、それは淀みのない純然たる勝利への情熱ゆえ。仲間もそれをよく理解しているからこそ、自然と周囲に熱が伝播していく。表裏のない、ありのままの姿でぶつかることで、組織に貢献できる稀有な才能の持ち主だ。

 かつて永木は尊敬する小笠原満男TAについてこう語っていた。「もっと頑張らないといけない。周りの選手へそう感じさせる存在だった」。加入して5年目、自分もアントラーズらしい選手になってきたという自負がある。「ベテランの域に入ってきたので、もっとチームを引っ張らないといけない」。責任感は増し、勝利への渇望も強くなった。

「勝つことを目指して戦う。勝たないと。この状況を打破できない」

 我々の背番号6は誰よりも戦える。先発でも途中からでも、必ずその燃え滾る情熱と勝利への渇望をピッチで表現してくれるはずだ。すべては勝利のためにーー。今夜も永木亮太とともに戦おう。

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