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「1年間試合に出続けて、タイトルを獲りたいと強く感じました。オファーをもらったとき、迷うことはなかったです」

 1月8日、チーム始動日。初めての練習を終えた永戸勝也は、クラブハウスで覚悟を語った。「今日ここに来て、身が引き締まる思いになりました。また下の方からやっていかないといけないですね...」。今回が人生初の移籍。表情からは僅かな不安が伺えたものの、未来への期待がそれ以上に溢れ出ていた。ここから新たな挑戦が始まる。

 千葉県佐倉市出身の永戸にとって、アントラーズは子どものころから遠からぬ存在だった。幼少期にはカシマスタジアムで試合を観戦したこともある。「一緒に行ったのは、家族だったか、チームでだったか...。(サポーターは)真っ赤だなぁ、という印象があります」。当時のことは、はっきりと覚えていないようだが、「しっかりサッカーを見始めたのは、2007年頃からだったので『常勝鹿島』のイメージがありますね」と、強いアントラーズを見て育ってきた。移籍を決める際にも「出身が千葉なので」と幼少期の記憶が後押ししたようだ。

 プロに入ってからもアントラーズの印象は変わらない。ただ、対戦相手として戦い、改めて「強いというイメージ」が増したという。「本当に気持ちよさそうにやっているなと...。好き放題やられてしまった印象でした」。だからこそ、このチームで挑戦してみたい、そんな気持ちが強くなった。

 1月23日、新体制発表で永戸は改めて決意を表明した。「ありきたりな言葉にはなりますが、このチームに恥じないプレー、責任感のあるプレーをしないといけないと思います」。アントラーズレッドのユニフォームに袖を通し、改めて責任を感じた。

「僕は決して上手い選手ではありません。まずは泥臭く、身体を張るプレーを基本としています。ただ、昨年のアシストはすべて左足でした。(自分の左足で)チームに貢献したいです」

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 1月28日、ACLプレーオフ。出場すれば、永戸は初めてアントラーズ戦士としてカシマスタジアムで戦うことになる。

 十数年前、真っ赤に染まるスタンドで揺れた一人の少年がピッチへと向かう。セットプレーのボールをセットする背番号17、特別な左足から放たれたボールは、美しい軌道を描く。ゴールネットが揺れ、スタンドが沸き立つ。そんな光景が目に浮かんでくる。

「サポーターの皆さんを惹きつける良いチャンスだと思うので、自分の持てる100%のプレーを出したいと思います」

 これまで以上の結果を残し、己の価値を示す。そして、夢であるタイトル獲得へ。全てをかけて戦う準備は整った。新たな背番号14、永戸勝也が左足を振り抜いたその先に、歓喜の瞬間が待っている。

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