PREVIEW



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 明治安田J1第4節、アントラーズは完全アウェイの埼玉スタジアム2002に乗り込み、浦和レッズと対戦した。試合は立ち上がりから均衡した展開となった。中盤で激しい球際の勝負が繰り広げられ、互いにゴール前の決定機はつくらせない。意地とプライドがぶつかる白熱した試合内容となった。スコアレスで迎えた後半、試合が動いたのはセットプレーからだった。52分、山中のフリーキックを岩波に折り返されると最後はエヴェルトンに決められ、浦和に先制を許してしまう。その後、アントラーズは途中出場の遠藤や上田らを中心に猛攻を仕掛けたが、同点に追いつくことはできず、このまま、0-1で試合を終えた。

 試合後、指揮官は「あれだけ多くのチャンスをつくりながら決めきることができなかった」と、決定力不足を悔やんだ。最後の3分の1のエリアでほんのわずかなズレが生じて得点を奪えない。中断期間明けの課題が、この日も結果として現れてしまった。

 それでも、今季公式戦無敗と好調の浦和相手に試合を支配し、決定機は数多くつくった。チームがみせた確かな成長の証といえる。指揮官も「チャンスを作ることは非常に重要なことであり、特に後半は自分たちがやろうとしているサッカーを表現することができていた」とポジティブに語り、「選手たちは自信をもって戦っているし、トレーニングから(課題に)取り組み続けてくれている。下を向く必要はない」と、変わらぬ自信を覗かせた。この先、ずっと無得点が続くことはあり得ない。焦ることなくやるべきことを続けていけば、必ず道は開けるはずだ。

 遠藤は次のように言う。

「負けてしまったことはもちろん悔しい。ただ、悲観するゲーム内容ではなかった。連敗をしている中で勝たなければいけないという気持ちが強くなり、その焦りがマイナスになってしまった。トレーニングでは落ち着いてできているので、落ち着いてプレーをしていけば、もっとチャンスを作ることができるはず」

 幾多もの栄光と苦難、どちらも味わってきた遠藤は、落ち着いた表情で語っていた。ちょっとした変化で勝負の結果は一変する。目前の試合の勝利にこだわる姿勢は、もちろん大切だが、その場しのぎになっては意味がない。信念をもって挑戦を続けていれば、必ず結果はついてくる。何かきっかけが一つさえあれば、状況は大きく好転するはずだ。

 さあ、カシマスタジアムでの有観客試合は約半年ぶりだ。声を出しての応援、ならびに指笛、手拍子などは禁止されているが、同じ場にいる存在は選手たちの後押しになるだろう。選手、監督、スタッフ、サポーターの思いは一つ。みんなで勝利を掴もう。若き選手たちが中核を担ういまのアントラーズは、一つ目の困難を乗り越えれば、飛躍を遂げられるはずだ。逆境を跳ね返す力は、チームを結束させ、また強くさせる。シーズン序盤に苦しんで、苦しんで、みんなで勝ち取った一つの勝利が、チームに自信を与え、未来への礎になる。これまでも常勝鹿島はそう築かれてきた。

 絶対に勝つ。そして勝ち続ける。変革期を迎えたアントラーズが再び新しい黄金時代を築き上げるために。この与えられた試練を乗り越えれば、また一つ強くなれる。窮地にたったいまこそ、選手、スタッフ、監督、サポーター、全てのアントラーズファミリーが力を結集し、この難局を乗り越えよう。その先には、きっと輝かしい栄光の未来が待っているはずだ。

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