PICK UP PLAYER PART1

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「サッカーはチームスポーツです。あくまでチームの成績で評価されるものであって、チームの顔になりたいとか、ベストイレブンを獲りたいとか、そういった意識はまったくありません」

  2019年1月、シーズンの目標を聞かれたレオ シルバは迷うことなく「タイトル獲得」と答えた。2013年に来日してから今年で7年目、アントラーズに加入してから3年目のシーズンを迎えたが、獲得したタイトルはACLとFUJI XEROX SUPER CUPのみ。今年こそは国内タイトルも獲りたい。強い決意と覚悟をもって2019シーズンに臨んだ。

 かくして、背番号4は今年も素晴らしいパフォーマンスをみせた。球際の強さは健在で、ここぞという場面で競り負けることはほとんどなかった。ボールを託せば、卓越した技術で相手をいなし、独特のリズムで時間と空間を支配する。長短のパスを織り交ぜながら攻撃を操り、夏場はチームメイトも驚愕するほどのスタミナで縦横無尽にピッチを駆け巡った。さらには、攻撃の最終局面まで顔を出し、自ら試合を決めるシュートを何度も沈めてみせた。年齢を重ねるごとに、力の抜きどころと入れどころを心得て、プレーの円熟味が増している印象を受ける。

 そんなレオの優れた能力を知っているチームメイトでも、驚きを隠せなかったのが、明治安田J1第6節・名古屋戦での「5人抜きゴール」だ。試合終盤の81分、中盤でボールを受けたレオは、パスコースを探しながら、姿勢良くドリブルを開始した。相手の守備陣に隙を見つけると、独特な細かいタッチでボールを叩きながら、するすると相手選手の間を抜け、最後は長いリーチを活かしたブロックで相手選手を抑えながら、ゴールへと流し込んだ。技術と身体能力、そして、経験が詰まったこのプレーは、4月度のJ1月間ベストゴールに選出された。

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 このゴールに象徴されるように、今年で34歳を迎えたレオだが、加齢の影響は全く感じられない。負傷離脱を余儀なくされる期間こそあったが、オフ返上でトレーニングを行うなど、チームへの献身を尽くして早期復帰を実現させた。J1全18クラブの監督および選手による投票で決まる「2019Jリーグ優秀選手賞」の受賞は、敵味方問わず、多くのフットボーラーに認められている証だろう。チームが好調を維持していたとき、ピッチの中央には間違いなくレオの存在があった。

 だが、個人賞を受賞したところで、レオの心が満たされるはずがない。目標はあくまでタイトル獲得だ。視線は過去ではなく未来、天皇杯だけを見据えている。「チームが一つになることが大切。お互いの信頼があれば、必ず成し遂げられるはずです」。レオは力強く語っていた。

 新国立で戦う初めての決勝。円熟のプロフェッショナルが、アントラーズを令和初の天皇杯制覇へと導く。



PART2 伊藤 翔 編はこちらからご覧ください。

PART3 セルジーニョ 編はこちらからご覧ください。

PART4 内田 篤人 編はこちらからご覧ください。

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