PREVIEW

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 2019年を振り返ると、様々な困難に直面してきたことが思い出される。主力選手の海外移籍、過密日程によるコンディションの低下。なかでも最も苦しめられたのは、怪我人の続出だ。

 今季はキャプテンの内田篤人をはじめ、三竿健斗、犬飼智也、レオ シルバなど、主力選手が入れ替わり立ち替わり負傷離脱し、メンバーを固定して戦うことが出来なかった。フットボール界に“たられば”は存在しないが、「もし怪我していなかったら...」と思わず考えてしまうーー。

 それでも、指揮官はチームを維持した。ポジション変更だけを例にとっても、町田浩樹と永木亮太をSBに、白崎凌兵やセルジーニョをサイドハーフに、土居聖真をトップ下に、名古新太郎をサイドハーフに起用して戦いを続けた。また、小池裕太、上田綺世、小泉慶、相馬勇紀といった途中加入の選手たちもすぐにチームへ適応させたことも見逃せない。選手一人ひとりの能力を見極め、限りある戦力のなかで、チームの維持に努めた。

 その結果、ACLでは準々決勝まで進出し、YBCルヴァンカップも準決勝まで駒を進め、リーグ戦でも第28節で首位に立ち、シーズン終盤まですべての大会で優勝を狙った。2019シーズン、国内3冠の可能性を最も長く持ち続けていたのがアントラーズだ。

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 しかし、どれだけ上位へ食い込んだとしても優勝出来なければ、失敗とみなされる。すべての試合に勝利する、獲れるタイトルはすべて獲る。アントラーズがアントラーズであるためには、勝利を、優勝を貪欲に求めていかなければいけない。

 アントラーズで17年間もの長い月日をともにした大岩剛監督は、もちろんその責務を理解していた。「アントラーズはすべてのタイトルを獲らなければいけないクラブなので、その結果に対する責任はやはり自分にあると思っています。勝敗の責任はすべて自分が取ると、選手たちにはいつも言ってきました」。様々な不運に見舞われながらも、責任をあくまで己のものとした。

 かくして、大岩監督の今シーズン限りで退任が発表された。天皇杯決勝は大岩監督がアントラーズの一員として臨む、最後の試合となる。絶対にタイトルを獲得し、有終の美をもって、彼を送り出さなければいけない。

「天皇杯は選手やファン、サポーターに感謝するとともに、個人的にも縁のある大会なので、一緒に勝ち取りたい」

 大岩監督にとって、現役生活最後の大会が天皇杯だった。その天皇杯では、クラブにタイトルをもたらした。そして、指揮官として最後の大会も天皇杯だ。もちろん、今回も再現を目指す。狙うは優勝のみだ。

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 選手たちの気持ちも一つにまとまっている。「剛さんに有終の美で終わってもらいたいし、剛さんと長くやってきて、いい形で別れたいですし、選手たちもタイトルを獲らないといけないと思っているので、いろんな意味を含めて、タイトルを獲りたいです」。永木亮太が選手全員の気持ちを代弁して語ってくれた。

 選手、監督、コーチ、スタッフ、サポーター、アントラーズを愛する者であれば、想いは一つ。2020年元日、大岩監督とともに、新国立で21冠目のタイトルを獲る。

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