「ジーコから興味をもたれたと聞いて即決しました。あれだけの方が自分を探してくれたことは非常に光栄なことですし、それに応えたいと思いましたから」
2018年8月、セルジは日本へやってきた。中東のクラブからオファーもあったが、心を動かしたのは、敬愛する母国のアイドルからの誘いだった。
ジーコTDは獲得に動く前、セルジのことを徹底的に調べていた。ブラジル選手権の映像を細かくチェックし、スタジアムにも直接足を運んで視察を行った。自身のコネクションを利用して、人間性やプロフェッショナルとしての部分も見極めた。「高い能力は持っているので、あとは本人が日本の文化や食事、生活に順応できればいい。非常に強い意欲で来ているはずだ」。慣れれば、活躍できる。ジーコTDは確信していた。
セルジ曰く、ジーコTDから加入当初にかけられた言葉は、「ブラジルでやってきたことをやりなさい」だけだったという。サッカーの神様がひたむきな努力を見てくれていた。そんな強い信頼とこの上ない喜びを感じた。「世界的なアイドルが近くにいて、僕をバックアップしてくれることは、本当に心強いです。だから、僕はこのクラブで全力を尽くします」。自分の能力を信じ、サポートしてくれている存在。母国から遠く離れた異国の地で闘う男にとって、どれほど心強かったかは想像に容易い。
「ジーコTDは闘争心を持って戦うことを一番最初に要求しています。国籍は問わず、ピッチの中で全力を尽くすこと。それをやり続けなければいけないと。全員が闘争心を持って戦えば、おのずと勝利が近づくと教えてくれました。それは自分も心掛けています」
もともとチームのために献身的に闘う選手だったが、ジーコTDの教えで、より一層、献身的に戦い、味方のため、チームのために、闘争心を燃やすようになった。決して独善的なプレーをみせることはない。仲間のため、勝利のためにプレーしている。
2019シーズンは2トップの一角だけでなく、サイドハーフでプレーする時間も増加した。当然、守備面での負担は重くなったが、セルジは与えられたタスクを完璧にこなした。逆サイドから上げられたクロスにしっかりペナルティエリアまで戻ってクリアし、カウンター時には素早くスプリントで味方のサポートに入る。チームへの献身的を尽くした。そして、守備のタスクをこなしたうえで、チーム最多となる公式戦20ゴールを記録した。その貢献度は計り知れない。
そんな共闘精神に溢れたセルジの原動力は、ジーコTDの存在だけでなく、常日頃から感謝を語るアントラーズファミリーの存在だ。
地球の裏側で受け入れられるのか。不安に駆られた来日して間もない時期。カシマスタジアムのスタンドから送られたアントラーズファミリーの大声援に勇気付けられた。「来日した当初から、スタジアム全体が僕の名前をコールしてくれた。あれは、本当に感激した。いまでも、毎試合僕の名前をコールしてくれるし、小さい子も僕の名前を叫んでくれたり、写真を撮りたいと言ってくれる」。セルジはとても嬉しそうに語っていた。
「このクラブはサポーターあってのクラブだと思います。彼らの後押しがなければ、僕たちは力を発揮できません。全員の合言葉は『タイトルを勝ち獲る』です。何よりもタイトルを強く意識しています」
愛するアントラーズファミリーへの感謝とともに。全員の気持ちを背負って、セルジが新国立のピッチで躍動する。
PART1 レオ シルバ 編はこちらからご覧ください。
PART2 伊藤 翔 編はこちらからご覧ください。
PART4 内田 篤人 編はこちらからご覧ください。