ACADEMY FREAKS INTERVIEW

第2回 中村充孝の技術論 “待てる”選手になれ 「一対一を怖がっていたら、サッカーは楽しくない」

 

 現在、中村充孝がスクールで重視しているのは、技術だ。ただ、それは単なるテクニックではない。“ボールを怖がらなくなるための技術”を、子どもたちに伝えようとしている。(第2回/全3回)

 

――今、スクールで指導するなかで、一番重視していることは?

ドリブルですね。やっぱりドリブルができるようになるまでに一番時間がかかると思うんですよ。俺自身もずっとそこをやってきたし。結局、ボール持つのが怖いから逃げたくなる。でも、“絶対取られへん”って感覚があれば、もっと楽しくなるんですよ。

 

―― “怖さ”という言葉が印象的です。

一対一って、みんな怖いものなんですよ。取られるかもしれんし、失敗するかもしれん。でも、サッカーって一対一の塊なので。そこを怖がっていたら話にならない。だからまず、“怖くない”を作ってあげたい。自由にボールを扱えないから怖いんですよ。「じゃあ、自由に扱えるようになろうや」という話なんです。

 

――具体的には、どんなことを伝えているんですか?

最近よく言ってるのは“間合い”ですね。例えば、「相手がどれぐらい近づいてきたら怖いのか。その距離を自分で理解しろ」という話をしています。

 

――“間合い”は、子どもたちにも伝わるものですか?

全部は分からんと思います。でも、何となく分かる子はおる。「ここまでは怖くない。でも、この距離入ってきたら反応せなあかん」。その感覚を持てと言っています。その距離に入ってきた瞬間が、自分のテリトリーから出なあかんサインや」って。そうすると、相手が入ってくる瞬間を“待てる”ようになるんですよね。

 

――そこから“かわすタイミング”が生まれる?

そうそう。変なフェイントとかいらないんですよ。結局、相手が入ってくるタイミングを見てかわしたらいい。実際にゲーム形式の練習で、それを狙っている子も出てきました。“あ、待ってるな”って分かる子もいる。

 

――現役時代、“見る”ことについてもよく話されていましたね。

“見ろ”ってよく言うけど、何を見るのか、何のために見るのかを知らないと意味がないんですよ。人によって見る場所も違う。だから“ここ見た方がいいよ”というのは具体的に伝えています。“見ろ”だけやと、子どもは分からんから。

 

――トラップの考え方も印象的です。

同じトラップでも、相手がどこにいるかで全部が変わるんですよ。なぜ、そこに止めたのか。なぜ、前を向いたのか。そこを説明しながらやっています。ただ止めるだけじゃ意味がない。状況の中でどう止めるかが大事やからね。

 

――プレーで見せることも重視するところですか?

両方ですね。見せるだけでも伝わらんし、言葉だけでも分からん。見せたとしても、結局、“おお、すごい!”ぐらいで終わっちゃうから。そのプレーをなぜやったのかを伝えないと意味がないと思っています。

 

――今の子どもたちを見ていて感じることは?

うまいです。俺らの時代よりも絶対にうまい。でも、一対一を怖がってる子も多い。使われる側になっているというか……、自分で何かする前に、周りを使おうとする子が多い気がします。だからまず、自由にボール扱えるようになってほしいですね。

 

――現在のトレーニング内容は?

かなり複雑にしています。コーンもいっぱい置くし、細かいタッチから急にスピードを上げたり、単発で終わらないようにしています。いろいろな動きを続けながらやらせている感じです。今までより、もっと複雑な刺激を入れたいと思ってやっていますね。

 

――自身の原体験も影響していますか?

めちゃくちゃあります。中学のとき、コーンをピッチの端から端までずっと並べられてドリブル。コーンにボールが当たって、ちょっとでもズレたらやり直し。そんな練習をずっとやっていました。最初はバラバラになるんですけど、「これがお前の今の技術や」と言われて。そこから繰り返し練習して積み上げていった感じですね。

 

――当時の経験を今、アウトプットしている感覚もありますか?

そうですね。当時、教わっていたコーチにも連絡しました。「どんな練習していましたっけ?」って。やっぱり、自分のベースになっているので。そのときは意味が分からなかったけど、今になって“こういうことやったんやな”と思います。

 

――技術はすぐには身につかない?

今できる必要はないと思っているんですよ。子どもたちにも「今が一番下手くそでいい」と言っています。技術って、半年後とか一年後に急に出たりするので。だから今は、“知ること”が大事かなと。

 

――子どもたちにどんな選手になっていってほしいですか?

使われる側じゃなくて、自分で何かできる選手ですね。結局、やっている本人が一番楽しんでいる選手って、見ていても面白いんですよ。