ACADEMY FREAKS INTERVIEW

第3回 中村充孝の原点と育成論 「技術は、あとから出るもの」

 

 中村充孝の技術論には、明確な原点がある。それが、中学時代に積み重ねた個人技術のトレーニングだった。今、スクールで子どもたちへ伝えている感覚の多くは、その時代に培われたものだという。

 

――今の子どもたちの吸収の早さに驚いていましたね。

めちゃくちゃ早いですね。こっちが言ったことを、その日のうちにやろうとする子もいるし、“あ、今それ狙ったな”って分かる瞬間もある。もちろん、技術としてすぐできるわけじゃない。でも、“知っている状態”でやるのと、何も知らずにやるのとでは、全然違うんですよ。

 

――知ること自体が大事?

そうですね。たとえば、“なぜ、そこにトラップするのか”とか、“なぜ、今そこを見るのか”とか。そういうのを知っているだけで、練習の質って変わるんですよ。今すぐ出来なくてもいい。でも、その感覚を持っているだけで、半年後とか一年後に急に変わったりする。技術って、そういうもんやと思っているんで。

 

――中村コーチの技術の原点はどこにありますか?

中学時代ですね。個人技術の練習をめちゃくちゃやらされていました。コーンをずっと並べて、ちょっとでも当たったらやり直しとか。最初はバラバラになるんですけど、「これがお前の今の技術や」と言われて、また繰り返す。

 

――かなり細かい練習ですね。

細かかったですね。でも、その積み重ねが今につながっていると思う。結局、技術って反復なのでね。最初は意味分からんかったですけどね(笑)。でも、今になって“こういうことやったんやな”って思います。

 

――当時の経験を、今の指導にも落とし込んでいるのですか?

そうですね。今も複雑な練習をいっぱい入れています。単純な反復だけじゃなくて、いろいろな状況を作りながらやらせている感じです。当時の指導者の存在が大きかった。今も連絡を取っているのですが、どういう練習をしていたかを聞いたり、電話でやり取りをしています。やはり自分のベースになっている人なので。第二の俺を作ろうとしているらしいですけど、なかなか出てこないみたいです(笑)。

 

――それはなかなか難しいでしょう(笑)。今の子どもたちはどう映っていますか?

うまいですよ。俺らのときより、全然うまい。でも、逆に“サッカーっぽく”なりすぎている感じもある。

 

――“サッカーっぽい”とは?

ポゼッションとか、フォーメーションや形とかですね。それも、もちろん大事なんですけど、その前に技術がないと無理やと思うんですよ。結局、大きくなったらみんな戦術は教えてもらうものだから。今はもっと技術に振っていいと思っています。小学生年代で形ばかり覚えても、結局は自分で剥がせなければ選手として止まってしまうので。

 

――特に重視している部分は?

一対一ですね。怖がらないこと。そこを避け続けると、結局どこかで止まってしまう。今の子は、やはり“失敗したくない”がまず先に来るんです。取られたくないし、ミスをしたくない。だから、すぐにパスへ逃げたり、簡単な方を選択したりする。でも、結局サッカーは一対一の連続やし、そこから逃げ続けていたら、どこかで壁に当たる。もちろん、パスも大事。でも、自分でボールを持って、自分で剥がせる選手じゃないと、上にはいけない。だから、今は「失敗してもいいからとにかくチャレンジしろ」というのは、結構言っていますね。

 

――体がまだ出来上がっていない年代だからこそ、その考えを伝える難しさもありそうですね。

そうなんですよ。スピードある子が、そのままスピードだけでいっちゃう。でも、絶対にどこかで壁に当たるんですよ。そのときに技術がないと苦しくなる。

 

――現役時代、技術タイプでしたね。

そう、だからスピードがないぶん、どのタイミングで抜こうかと。現役時代、5メートル範囲のスピードは速かったから、それをどこで使おうかと。自分の中では一瞬だけ速ければいいと思っていた。ずっと速く走るのではなくて、そのスピードをどこで使うか。その感覚が大事やと思っています。一瞬の5メートルだけ速ければ抜けるんですよ。だから今の子にも、「ずっと速く行こうとするな」という話をしています。使いどころを覚えろと。

 

――スピードの“使い方”の話ですね。

そうそう。速いやつは速いでいい。でも、その武器をどう使うかを知らないと意味がない。スピードだけで行ける時期ってあるんですよ。でも、絶対に止まるときが来るから。そのときに、“じゃあ、どう抜くのか”という感覚を持っているかどうか。それを今から体に馴染ませておかないと、後からやれと言われても無理やと思います。

 

――今の子どもたちに感じる“もったいなさ”はありますか?

ありますね。うまいのに、失敗したくない感じが強い。もっと楽しんでやればええのにって思うときがあります(笑)。変に正解を探そうとするというか。“こうしないとダメ”みたいになり過ぎている。でもサッカーって結局は、自分で感じて、自分で選ぶスポーツなので。だから、もっと自由でいいと思っています。

 

――育成年代で一番大事だと思うことは?

やっぱり技術ですね。技術があるからサッカーが楽しくなるし、考えられるようになる。まず、そこがないと、派生も何もないと思っています。

 

ーー最後に、今子どもたちに残したいものは?

自分の感覚ですかね。今は分からなくても、“そういうことやったんやな”って、後から思ってくれたらいい。結局、誰しもが絶対に壁にぶつかるので。そのときに、ちょっとでも思い出してくれたらうれしいですね。