ACADEMY FREAKS INTERVIEW

第1回 杉山哲の現在地 「最初がスクールで良かった」 GKコーチから"育成者"になれた4年間

 

 今季から鹿島アントラーズユースのGKコーチに就任した杉山哲は、現役引退後すぐに育成の現場へ戻ったわけではない。最初の4年間を過ごした場所はスクールだった。3歳児から中学生まで。サッカーを始めたばかりの子どももいれば、プロを目指して競技に打ち込む子どももいる。その4年間を振り返ったとき、杉山は何度も同じ言葉を口にした。

「本当に、最初がスクールで良かったと思うんです」

 GKコーチとしてだけでは見えなかった景色。その時間が、今の杉山哲という指導者を形作っている。

 

――ユースGKコーチとしてシーズンをスタートしました。今はどんな感覚ですか?

本格的なサッカーに戻ってきたな、という感覚がありますね。もちろんスクールもサッカーなんですけど、やっぱりユースは勝負の世界なので。映像を見たり、試合を分析したり、勝敗に向き合ったり。その意味では、ひさしぶりにサッカーの最前線に戻ってきた感覚があります。

 

――スクール時代とは大きく違いますか。

違いますね。スクールは本当にいろんな子がいるので。サッカーを始めたばかりの子もいれば、競技志向の子もいる。3歳、4歳のクラスも担当していました。もちろんボールは使うんですが、まずはサッカーを好きになってもらうことが大事なので。その中でも、ものすごく上手い子がいたりするんですよ。でも一方で、普通に砂いじりを始める子もいる(笑)。そういう子たちと向き合う時間があったのは、自分にとってすごく大きかったですね。

 

――GKコーチとしてのキャリアを考えると、遠回りに見える人もいるかもしれません。

そうですね。でも、自分は全然そう思わなかったんです。むしろ今は最初がスクールで良かったと思っています。もし、最初からユースでGKコーチをやっていたら、見えていないものがたくさんあったと思うので。

 

――例えばどんなことでしょうか。

GKコーチって、どうしてもGK中心になるんです。もちろんチーム全体のことも考えますが、まずはGKをどう伸ばすかが仕事になる。でも、スクールでは違いました。競技志向のクラスやスペシャルクラスも担当させてもらったんですけど、その中ではチーム全体をどう成長させるかを考えるようになった。誰と誰を組み合わせるのか。どういう環境を作れば成長するのか。どういう声掛けをすれば変わるのか。そういうことを考えるようになったんです。

 

――GKコーチという枠を超えた視点ですね。

そうですね。一時期は本気で、もしかしたら今後はGKコーチではない道に進むかもしれないな、と思ったくらいでした。それくらいチーム全体を見る面白さがありました。

 

――スクールは指導以外の仕事も多かったと思います。

多かったですね(笑)。イベントもありますし、遠征の準備もあるし、参加人数も気にしなきゃいけない。スクールって、サッカーだけじゃないんですよ。売り上げの部分もそうだし、運営の部分もそうだし、本当にいろいろな仕事がある。

 

――実際に経験したからこそ見えたこともありましたか。

ありましたね。スクールスタッフって本当に大変なんです。自分なんて周りがすごく気を使ってくれていたので。でも、若いスタッフたちは本当にいろんなことをやっていました。指導だけじゃなくて、イベントもやるし、準備もするし、集客も考える。だからもっと評価されていいと思うんです。

 

――それは経験しないと出てこない思いですね。

本当にそうですよね。ユースは本当に育成に集中できる環境です。でも、それってスクールやジュニアやジュニアユースのスタッフが支えてくれているからなんです。だからこそ、彼らの存在は絶対に忘れてはいけないなと思っています。

 

――今回、ユースでの指導を決断した理由は何だったのでしょうか。

簡単には決められなかった。ただ、この世界はチャンスが何回も来るわけじゃないからこそ今のタイミングでユースのコーチを引き受けました。

 

――ユースにいくことが決まってからはどんな準備を進めていったのでしょうか。

少しずつ気持ちを切り替えていきました。現役時代は、どんな練習をしていたかなあとか。GKコーチからどういう声を掛けられていたかなあとか。現役時代のことを思い出したり、メモをしたり。でも、振り返れば振り返るほど、やっぱりスクールの4年間が大きかったなと思うんです。

 

――なるほど。

今、自分はGKだけを見ているわけじゃないんですよ。もちろんGKコーチですけど、チーム全体を見るようになったし、人を見るようになった。選手をどう成長させるか。どういう環境なら伸びるのか。そういうことを考えるようになった。それは間違いなくスクールで学ばせてもらったことです。

 

――今だから言えることですね。

本当にそうですね。当時は大変だと思うこともたくさんありました。早く育成に行きたいなと思ったこともありました。でも今振り返ると、スクールでの4年間があったから今があると本当にそう思います。