ACADEMY FREAKS INTERVIEW

“オンとオフ”が育てた強さ。 Jユースカップ優勝の舞台裏とは。「努力する選手にはチャンスを」。

 

INTERVIEW
鹿島アントラーズ
本田拓也ユースコーチ

 

2025Jユースカップ制覇ーー。その裏側には、「オンとオフ」を明確に切り替え、選手の心を解き、成長を引き出す指導哲学があった。

頂点へたどり着くまでの軌跡に何があったのか。鹿島アントラーズユースを率いた本田拓也コーチに聞いた。

 

ーー2025Jユースカップ優勝、おめでとうございます。率直に振り返って、今はどんな思いですか?

ありがとうございます。振り返ると、やっぱり”日常の強さ”がすべてだったなと感じています。1stラウンドで柏に負けて得失点差の話になったとき、「もうとにかく得点を取りに行こう」と割り切ったんです。秋田、山形との試合では多くの選手を使って点を重ねて、そこから一気に流れが変わりました。鳥栖や広島のように、身体的に強く早生まれやオーバーエイジの選手がいる相手でも、うちの選手は本当に強かった。日々鍛えられているという自信は、全国大会でも揺らぐことはなかったですね。

ーー全国大会のレベルと比べても、“鍛えられ方”の差を感じました?

全然違いました。特に長距離移動をしてもパフォーマンスが落ちない。決勝の110分も、移動翌日とは思えない強度で戦えていました。試合の90分だけでなく、その前の準備段階から積み上げてきたものが、全国大会でこそ表れたと思います。

ーーそこまでのベースを作れた理由は?

夏が大きかったですね。プレミアリーグに出ていない選手を中心に、フィジカルもボールを使った高強度のトレーニングもかなりやりました。試合やって、翌日にまたトレーニングして……。そのサイクルを耐え抜いて這い上がってきた選手がチームのベースになった。あの夏はターニングポイントでしたね。

ーー決勝の指揮は初めての経験でした。緊張は?

まったくなかったです。選手時代のほうが緊張していましたね(笑)。監督としては送り出すだけ。そのなかで自信を持って送り出せました。これまでの10カ月で積み上げてきたものがあるので、やるべきことは全部やった、という感覚がありました。

 

 

「オンとオフ」を作る指導哲学。守備の“メリハリ”にもつながる思考

ーー監督として指揮を執るのは今年からですね。

そうです。岐阜でも監督はやっていないので、本当に初めてです。プレミアリーグの後半戦からやらせてもらっているのですが、僕自身すごくいい経験をさせてもらっています。今回も軸になる選手がいたので、安心感がありました。ダブルボランチの琉偉(DF6大貫琉偉)と勇和(MF27福岡勇和)、代表から帰ってきた幸暉(DF22倉橋幸暉)。この3人が真ん中でドッシリしていたので、本当に頼もしかったです。

ーー日々の指導で意識しているポイントは?

オンとオフをはっきりさせることですね。90分全部集中しろなんて無理ですから。練習でも自分の番が来たらしっかりやる。水を飲むときは少し笑っているくらいでもいい。でも、ポゼッション練習に入ったらギュッと集中して、球際で強くいって奪い切る。そのメリハリを徹底しています。

ーーその考えは現役時代から?

そうですね。監督によっては「ずっと集中しろ」という方もいるけど、無理なんですよ。試合でもハーフタイムで一度切れるじゃないですか。そこでリラックスできる時間がある。僕自身がそうだったので、選手にもメリハリをつけさせたいと思っています。

ーー選手の変化は感じましたか?

感じましたね。最初は全員が真面目な顔でずっとやっている印象だったけれど、途中からはプリンスリーグのメンバーがトレーニングの合間に笑顔を見せるようになった。オンとオフの切り替えが自然とできるようになったのだと思います。ただ、ずっとオフの選手もいるので(笑)、そこはガツンと言ってオンに戻しますけどね。

ーー鹿島らしい前からのプレスや球際の戦いが印象的でした。

そこも「全部行け」というわけじゃなくて、行く場所と行かない場所をしっかり整理していました。FWがプレッシャーをかけてサイドに誘導して、チームとして決まった取り所に相手が入ってきたら、一気にスイッチを入れる。そのメリハリも、普段のオンとオフの考え方とリンクしていた部分があったと思います。

ーーコミュニケーションの距離感も大事にしていますね。

必要なときに、必要なだけ。寄り過ぎず、放っておくわけでもない。そのさじ加減は常に考えています。現役のとき、(トニーニョ)セレーゾ監督がケガで苦しい時期の僕に「期待している」と伝えてくれた。その言葉の温度感や距離感は、いまの僕の指導にも活きていると思います。どの選手にも平等に良いことと悪いことを明確に伝えて、常にコミュニケーションを取るようにしています。

ーー選手を外すときも理由を伝える?

必ず伝えます。僕自身、現役時代に理由も言われず外された経験があって、あれは本当にキツかった。一言だけでも理由を言われれば、次に向けて進めるんです。だから誰であってもフラットに評価して、必ず理由を説明する。これは大事にしています。

 

日々の努力を本田拓也ユースコーチから認められてチャンスを勝ち得たFW47福田竜正


努力を見逃さず、チャンスを与えて得たタイトル。優勝がもたらした変化と、三冠への道

ーー前半は点が取れずヤキモキする展開でした。どう見ていましたか?

福ちゃん(FW47福田竜正)がどんどん仕掛けてくれて、長いボールも織り交ぜながらの展開でしたが、相手は嫌がっていた。自分たちの形も作れていたので、1点入れば絶対に変わると思っていましたが、決勝はまた別物ですからね。取れなかった部分は、次に向けた良い課題になったと思います。

ーー決勝で福田選手をいきなりスタメンに抜擢しました。

後半戦、本当に良かったんですよ。紅白戦でも相手チームで存在感があったし、朝練に自主的に取り組んでいて日々努力する姿を見ていた。その姿勢も含めて「チャンスを与えよう」と。しっかり結果も残したので自信にもなっただろうし、他の選手にも「努力は見ているよ」というのが伝わったのではないかと思います。

ーー競争原理も健全に働いていますね。

はい。一回出たからといって安泰ではない。育成には鼻を折ることも、自信をつけることもどちらも必要。心が痛むときもありますよ。頑張っているのに、相手との兼ね合いで違うタイプの選手を使うこともある。でも、そこもきちんと理由を伝えて、次に向かわせる。繊細な時期である高校年代だからこそ、丁寧に向き合う必要がありますね。

ーー今回の優勝は、選手にとってどんな意味があったと思いますか?

すごく大きかったと思います。早生まれやオーバーエイジを使わない公式戦のレギュレーションのなか、17歳以下が真っ向勝負をして勝ち切った。選手たちにとって大きな自信になったはずです。

ーー実際に変化を感じますか?

感じますね。川崎Fとのプレミアの試合でも凌月(MF30三好凌月)が決勝に続いてスタメンでフル出場して、チームとしては追いつかれても逆転できた。着実に力がついてきている証拠ですね。

ーー史上初の三冠へ、期待が高まっています。

本当に多くの方に応援していただいて、ここまで二冠を獲れました。三冠を目指す上で、決勝の舞台である埼玉スタジアムに足を運んでいただけたら、選手たちはもっと力を出すことが出来ます。ぜひタイトルの瞬間を一緒に味わってもらえたらうれしいです。