ACADEMY FREAKS Vol.4

チャレンジ精神を持って

2024年アカデミー・スクール新スタッフ紹介 鹿島エリアコーチ

杉本真ジュニアユースコーチ/西畑瞭スクールコーチ/高橋覇気スクールコーチ

日々、アントラーズアカデミーで子どもたちにフットボールの素晴らしさを伝えるコーチたちは、どのようなフットボール人生を歩み、どのような思いを胸にフットボールと向き合っているのか。第4回は、2024年から鹿島エリアのコーチングスタッフとなった3名を紹介する。

選手時代に経験したことを還元できれば

高円宮杯 JFA 第35回全日本U-15サッカー選手権大会を制した鹿島ジュニアユースに、「強力な助っ人」(鈴木修人アカデミーマネージャー)が加わった。

「何よりも、選手が主体性を持って、自発的な行動をとること。それがフットボールの素晴らしさだと思っています。選手にそういったところを促しながら、成長させていきたい」

そう語るのは、2024年より鹿島ジュニアユースを指導する杉本真コーチだ。

現役時代は栃木SCの10番を背負うほどの技巧派MFだった。栃木SCではJ2とJ3で戦い、その後は千葉県のVONDS市原で関東サッカーリーグを経験した。「アントラーズのようなJリーグのトップクラブではプレーすることができなかったので……」と謙遜するも、「アントラーズからオファーをいただいたときは、まったく縁のない自分でいいのかと不安もあった」という。そのなかで、鈴木アカデミーマネージャーから「そのプレー経験も選手たちに伝えてほしい」と背中を押されて伝統のエンブレムを胸に宿す決心をした。

今では鈴木アカデミーマネージャーをはじめ、中野洋司アカデミーダイレクターや那須川将大つくばジュニア監督、鈴木智幸つくばジュニアコーチといった当時のチームメートにも囲まれて「心強いところもある」と本心を明かす。

鹿嶋にやってきた当初は、“日本一”に輝いた鹿島ジュニアユースの活動を目の当たりにして「本当に中学生なの?」と驚いた。

「高円宮杯で優勝する前もチームとしての勢いがあり、選手同士がまとまっていて、“勝つ”というオーラがすごくありました。選手たちはフットボール観やプレーのアイデアがすごく豊富で、なおかつそれを効果的に、的確にプレーに表現できます。衝撃的でした。実際にトレーニングを見たときも、トレーニングに入る前の準備や、入ってからの空気感……なんでも自発的に、高い基準を求めて取り組む選手がすごく多い。“アントラーズのスタイル”を感じました」

そんな中学年代最高峰のチームで、自身の果たすべき役割は明確だ。

「自分自身は、例えばスピードやパワー、高さといった身体能力に優れていたわけではないので、そういったところではプロで戦えなかった。ただ、そのなかでも正確に止めて蹴るだったりボールの置きどころなど、自分のできることをやってきたことでプロとして続けられた自負があります。選手時代に経験したことを鹿島ジュニアユースの選手たちに還元し、彼らの武器やプレーの選択肢を増やしてあげられればと思っています」

縁もゆかりもなかったアントラーズに呼ばれたゆえんを体現し、「フットボールの素晴らしさが詰まった環境を整えられる指導者になること」を目指して、杉本コーチは鹿島ジュニアユースとともに新たな戦いに向かう。

鹿島ジュニアユースに加わった杉本コーチ

誰にも負けない熱量で活動していきたい

杉本コーチとともに、高橋覇気コーチも新たに加わった1人だ。

2023年までは栃木シティFCのアカデミーGKコーチを務め、母校・上武大学の先輩である芦田仁スカウトからの声がけで「Jリーグのトップクラブのアカデミーでチャレンジしたい」と新天地を求めた。

「アントラーズは、日本のフットボール界を引っ張るクラブ。そこで自分の力がどれだけ通用するのか、そして、どれだけ成長できるのか。ワクワク感もあり、不安もありました。実際に来てみると、GKコーチがすごく多くて刺激に満ちた毎日です。トップチームのトレーニングもすぐに見に行ける素晴らしい環境があり、他のコーチも気さくに話しかけてくれてとてもありがたいです。トップレベルでプレーされていた方々の言葉には、重みがあります」

東京都八王子市で生まれ育った高橋少年は「GKのポジションをやりたくてフットボールを始めた」というほど、幼少期からGK一筋。元日本代表の川口能活選手にあこがれを抱き、「もともと目立ちたがり屋なので、一人だけユニフォームの色が違うし、手を使えるし、かっこいいと思った」と、その特別なポジションに惹かれていった。

そして上武大学で2人のGKコーチに出会ったことをきっかけに、指導者の道を歩み始めた。

「大学の先輩がGKコーチになり、1年生のときから良くしてもらいました。その人の影響もあって大学時代に通った指導者講習会では、現在U-16日本女子代表でGKコーチを務める白井貞義さんからも多くのことを学びました。2人は僕が指導者の道へ進むにあたって、とても大事な存在です。共通するのは、選手やスタッフとの良い距離感を保ち、指導に対する熱量がありもっと成長したいという向上心を備えているところ。僕もそんな指導者になりたいと思いました」

アントラーズアカデミーにたどり着き、伝統的なそのエンブレムを背負うことになっても、高橋コーチの向上心が尽きることはない。

「ここに来る子どもたちは本当にフットボールが大好きで、うまくなりたいという意欲がある。子どもたちの気持ちを尊重し、自分自身も上を目指すうえで誰にも負けない熱量で活動していきたい。人間性、指導の質、適切な振る舞いや行動を意識して、より多くの人たちを魅了できる指導者になっていければと思っています。そのために、選手たちと一緒に頑張っていきたいです」

フットボールの喜びと飽くなき向上心。それらを体現しながら、鹿島エリアの子どもたちとともに、高橋コーチ自身も成長を見据えている。

鹿島エリアスクールでアントラーズアカデミーでの第一歩を踏み出した高橋コーチ

クラブハウスのような環境があるのは幸せなこと

高橋コーチと同じく2024年から鹿島エリアスクールで指導する西畑瞭コーチは、フットボールの“環境”を重要視して指導にあたる。

「言葉で伝えすぎず、そのメニューに取り組んでいれば自然と上達するようなトレーニングを心掛けています。ピッチ外では細かいところまで一つひとつ勉強する必要性がありますが、ピッチ内ではできるだけシンプルに」

2021年にアントラーズアカデミーのコーチとなり、3年間、ノルテエリアで活動してきた。心機一転、チャレンジ精神を持って鹿島エリアへ転籍し、新天地でフットボールの喜びを子どもたちと分かち合っている。

「アントラーズのクラブハウスが仕事の拠点となり、いつもフットボールに囲まれた感覚を持っています。ノルテエリアの事務所でもフットボールの話をするけれど、このクラブハウスにはトップチームの選手たちが練習しているピッチがあり、それを間近で見られる環境がある。それはものすごく幸せなことだと感じています」

緑の芝生のピッチ、トップレベルの選手たちの鼓動。そんな環境に身を置く幸福を人一倍に感じるのも、西畑コーチだからこそ。

「鹿島エリアの子どもたちは、この環境が当たり前だと思っているのかもしれませんが、僕たちはこの恵まれた環境は決して当たり前のものではないことも伝えていきたい。地域の少年団などもそうだと思いますが、ノルテエリアでは土のピッチでの活動も多かった。この鹿島エリアは、まさに生活のなかにアントラーズがある。そんな特別な地域なのです」

振り返れば、鹿島エリアから北に数十キロも離れたノルテエリアでは、「アントラーズにも好影響を与えられたら」とクラブの普及にも尽力した。ノルテエリアのチーフコーチになってからは、鹿島エリアやつくばエリアの活動にも目を配ることで、ノルテエリアのさらなる発展を志した。そんな3年間の経験は、確実に“今”にもつながっている。

「フットボールに向き合う環境が変わり、一緒に働くメンバーも変わったので、今はまったく新しい気持ちで目の前のことに一生懸命になっています。ノルテエリアで培った経験を大事にしながら、質でも量でも他のスタッフに負けないように、頑張っていきたいです」

アントラーズでの第2のスタートラインに立ち、再びゴールを目がけてひた走る。

従来の指導陣に加えて、新たに鹿島エリアにやってきた3人の新鋭スタッフ。さらなる地域の発展に向けて、選手たちにその熱意を伝えていく。

ノルテエリアで経験を積んで鹿島エリアにやってきた西畑コーチ