LIFE STYLE ~トップを目指して~
第4回 鹿島アントラーズユース 新1年生
新垣祥大・大島瑠空・元砂晏翔仁ウデンバ・吉田湊海

トップチームの主役となるために、日々、切磋琢磨するアカデミーの選手たち。
そんな彼らは、どのようなフットボールライフを送っているのか。
そして、日々の生活において意識していることとは――。
第4回は新たに鹿島アントラーズアカデミーに加わったユース1年生4人のLIFE STYLEに迫る。
GK歴3年、専門的なトレーニングで成長
日本の本島から遠く離れ、南国情緒漂う沖縄県。その地で、小学3年からフットボールに明け暮れる新垣祥大がGKというポジションに目覚めたのは、中学1年のときだった。
「チーム内にGKがいなくて“誰がやる?”となり、とりあえず身長も高いのでGKをやってみたら、楽しかったので続けることにしました(笑)」
県内屈指の名門校である那覇市立小禄中サッカー部の門をくぐり、FWからGKに転身。先輩たちのハイレベルなシュートを止めるための努力を重ねるうちにGKとしての能力が花開き、沖縄県選抜に選ばれるようになった。その一員として参加した九州での大会で、アントラーズのスカウトから「練習参加してみない?」と声をかけられた。

アカデミーハウスのハンモックでくつろぐ、沖縄県出身の新垣
地元から遠く離れたアントラーズのホームタウンは、まるで別世界に見えた。
「芝のピッチでプレーできるだけでもうれしいのに、アントラーズユースは主に天然芝のピッチで練習していることにビックリしました。普通、高校生ならば人工芝じゃないかと……。アカデミーハウスにも筋トレルームがあったり、フットボールに集中するためのいろいろなものがそろっています」
さらに、アントラーズユースの練習会に参加した新垣が驚いたことがもう一つ――。
「もともと僕はレアル・マドリードが好きで、2016年のクラブW杯も見ていました。そのとき、レアルの攻撃をめっちゃ止めるGKがいて、“このGK、すごいな”と思って、気になって調べたんです。それが曽ケ端GKコーチでした。練習会に来てみたら、本人が僕らに指導してくれる……。“自分はなんてすごいところに来たんだろう”と実感しています」
鹿嶋に来てからの日々は刺激的だ。曽ケ端GKコーチ、さらには市川コーチから“GKのいろは”を叩き込まれている。
「中学時代は基本的にフィールドプレーヤーと一緒に練習をして、ゲーム形式になってからGKのポジションに入る流れでした。だから、本格的にGKのトレーニングを積んできたわけではないから、今はGKの専門的なトレーニングができるのがうれしい。GK専門のコーチがいるのも、自分にとっては特別なことです。また、3年生の岸野選手をはじめ、他のGK陣もお手本になります」

曽ケ端GKコーチ(中央)の指導を受け、先輩をお手本に成長する新垣(左)
長身を生かしたセービングとキック力に自信がある反面、課題として「基礎的な技術力と声出し」が挙がる。それらの課題を克服してこそ、まずは高円宮杯プレミアリーグへの扉が開かれると信じて、他のGK陣とも日々、切磋琢磨する。
「もちろん、“プロになる”という目標を持ちつつ、その前にGK陣の競争に勝って、高円宮杯プレミアリーグに出場することが目標。試合に出たときにそのチャンスを生かして、スタメンに定着できるように3年間、頑張っていきたいです」
島人の新たな挑戦が幕を開けた。
“縁”を感じ、多くのオファーのなかからアントラーズへ
兵庫県姫路市出身の元砂晏翔仁ウデンバも、将来を見据えてはるばる鹿嶋へとやってきた。チームメートから親しみを込めて「アントニー」と呼ばれている長身センターバックは、「アカデミーハウスでは仲間たちと楽しく生活できる反面、親がいないので洗濯とかは大変」と新たな生活を迎えている。

親元を離れて寮生活を送る元砂。洗濯などの大変さから親のありがたみを実感する
関西で生まれ育った元砂がアントラーズとの接点を持ったのは、突然のことだった。中学2年の夏、所属していたフレスカ神戸のコーチからアントラーズが関心を持っていることを知り、秋に練習参加した。「ピッチもいいし、トップチームの練習場がすぐ隣にあるのがすごい。アカデミーハウスもきれい。すごく環境が良くて“ここでプレーしたい”と思った」とアントラーズへの思いを強くした。
それから間もなくしてU-15日本代表にも名を連ねるようになると、数多のJクラブから関心を持たれたが、元砂の思いはアントラーズ一択だった。「初めて声をかけてくれたのはアントラーズ。フレスカのコーチにも勧められたし、お母さんとも“縁があるね”と話していた」と伝統のエンブレムを胸にする決意を固めた。

クラブハウスのグラウンドでトレーニングに励む元砂
兵庫県を後にして鹿嶋に来てからというもの、アントラーズのクラブハウスに行けば、いつもトップチームの練習にくぎ付けになる。
「アントラーズのCBは、ヘディングが強いイメージがあります。それに、練習を見ていて守備への切り替えのスピード感がすごいことを実感しました。僕も守備でボールを奪うところ、ボールを運んで味方につけるところ、長身を生かしてセットプレーで得点を決めるところを売りにしているので、練習から日々、昨日よりも成長していくために頑張っていきたいです」
アントラーズの歴史に名を残すようなセンターバックへと成長していくために、目下の目標は高円宮杯プレミアリーグ出場だ。「スタメンで試合に出るために、普段から練習に励んでいきたい」と、自ら選んだ道を突き進む。
アントラーズユースで狙うのは“3冠”
吉田湊海も世代別日本代表で活躍する。両手では数えきれないほどのチームからオファーを受け、そのなかからアントラーズユースで戦うことを選択した。
「練習参加してみて、一番良いところに行こうと思っていました。そのなかで、アントラーズが一番フットボールに集中できる環境でした。それに、アントラーズの練習会に参加したときはボランチをやっていた時期で、小笠原テクニカルアドバイザーがいることもアントラーズユースに行きたい理由の一つになりました。すごくいいプレーをしたら褒められるけれど、それに満足しないように厳しい言葉もかけてくれるところがいいんです。プロの世界で戦ってきた人たちに教えてもらうのが、プロへの近道だとも思っています」
出身地の神奈川県大和市からは、横浜FM、川崎F、湘南、FC東京、東京VなどのJ1クラブのユースチームに通うことも可能だ。それでもアントラーズユースでの寮生活を望んだのは「地元の友達が周りにいたら、たぶん遊んじゃうだろうと考えた。だから、環境を変えてサッカーに集中したい」というストイックさからだ。その姿勢でチームを引っ張った中学時代のFC多摩では、夏の日本クラブユース選手権大会を制した。その過程で2度対戦した鹿島アントラーズジュニアユースの印象も、その選択を後押しした。
「アントラーズジュニアユースと戦ってわかったのは、球際の部分で絶対に負けたくない思いが伝わってくること。トップチームの試合でもサポーターが熱くなって戦っている。アントラーズの戦う部分、熱い部分がめちゃくちゃ好きです」

2023年夏には日本クラブユース選手権大会準決勝で鹿島ジュニアユースと対戦した
吉田のいう「幼少期から一番大事にしているのは、戦う相手に絶対に負けない気持ち。メンタルの部分では本当に負けたくない」という特長もアントラーズのクラブカラーに合致する。ここまでの道のりで体験した挫折も、反骨精神を駆り立てる要素となり、今の吉田の血となり肉となっている。
「小学6年のとき、志望していたクラブのセレクションに落ちて、心が折れかけました。フットボールをやめたいと思ったことは何度もある。けれど、僕はやっぱりフットボールをずっと大好きでいられたから、やめることなく続けてこられたんだと思います」
アントラーズユースでの1年目。目指す目標は、謙虚さとどん欲さを調和させた先に待つタイトルだ。
「自分自身はまだまだトップチームに上がることができるレベルの選手ではない。それよりも、まずはユースでしっかりと結果を残したい。柳沢監督が掲げた高円宮杯プレミアリーグ、IFAリーグ、クラブユース選手権の3冠を成し遂げたい。自分自身、昨年もFC多摩で3冠を目指して戦って、結果的に2冠しか獲れなかったので、今年は3冠を取れるように頑張りたいです」
アントラーズユースの新たな歴史を築くために、日々変わらず邁進する。

FC多摩時代に2冠を果たした吉田はアントラーズユースでもどん欲にタイトルを狙う
アントラーズ大好き4兄弟の長男
そんな吉田のアントラーズユース加入を、今か今かと待ちわびていたのが、大島琉空だ。
「吉田選手に来てほしかった。自分が最初にアントラーズユースに入ることを決めて、そのあと吉田選手も来るか、来ないか、みたいな感じだったから来てくれて刺激になります。練習中にも対戦したら負けたくない。彼を超えたいです」
大島も、元砂や吉田、平島大悟とともに世代別日本代表に選出される選手だ。千葉県船橋市で生まれ育ち、地元のVIVAIO船橋で「判断力や、ボールを運ぶ技術」を磨き、今ではDFながら「前へボールを運べる特徴を身に付けられた」という稀有な存在となった。
アントラーズが好きな4兄弟の長男として、弟たちを引っ張る存在でもあるだけに、「当初は自宅から通える範囲のチームに行こうと思っていた」という。
そこで届いた、憧れのクラブからのオファー。胸が高鳴った。
「アントラーズは特別だから、声がかかってうれしかった。他のJクラブの練習にも参加したけれど、Jクラブだったらアントラーズに行きたい気持ちが強かった。アントラーズユースはすごい環境で練習できるし、アカデミーハウスはすごくきれい。そこにも惹かれました」
VIVAIO船橋の指導陣からは、昨年にアントラーズユースの一員として活躍したOBの壱岐健斗(現順天堂大学1年)の話もよく聞いていたという。同郷の先輩に追いつき、そして超えていくために、大島はさらなる成長を期す。
「他の仲間には負けられない。トップチームに2種登録されることを目標にしているので、そのためにまずは高円宮杯プレミアリーグに出場しないと。1年生でもすぐに高円宮杯プレミアリーグに出て、活躍したいです。アントラーズユースはスピード感も違うし、慣れていかなければいけないけれど、そのうえで自分の特長を出せるように、遠慮しないでやっていきたい。また新たな武器を身に付けて、もっといい選手になり、そしてアントラーズのサポーターに支えてもらえるような選手になれるように頑張りたいと思います」
目標とする場所に向かって、一歩ずつ歩みを進めていく。

大島は家族に送り届けられ、3月にアカデミーハウスに入寮した
支えてくれた人たちの思いに応えるために
大島は入寮日、鹿嶋まで送り届けてくれた母親や3人の弟、祖父母などを玄関の前で見送った。「家族と離れるのは寂しいけれど、活躍して恩返ししたい」と決意を新たにする。中学時代まで長年にわたり成長を後押ししたVIVAIO船橋の指導者にも「ケガだけには気を付けて」と送り出されたという。
大島、新垣、元砂、吉田の4人はそれぞれ、地元を離れてすでにアカデミーハウスでの新たな生活を始めている。
吉田の家族は「湊海自身が楽しくプレーできれば、どこでもいい」と寮生活を後押しし、元砂も両親から「離れても、頑張ってね」と応援を受けて鹿嶋へとやってきた。
新垣は「当初は沖縄に残ったほうがいいかとも思った」と明かすが、アントラーズユースへ背中を押したのは、両親の「やりたいようにやってきな」という言葉だった。それだけに、「送り出してくれたからには、自分もその思いに応えたい。まずは試合での活躍を見せたい」とさらなる成長を見据える。
家族、友人、指導者。これまで近くで支えてくれた多くの人々の思いに応えるために、アントラーズアカデミーの新たな才能が、今日もこの地で戦っている。

アカデミーハウスでの新たな生活を送る元砂、大島、吉田、新垣(左から)