ACADEMY FREAKS Vol.1

「感謝」の思いを胸に

LIFE STYLE ~トップを目指して~

第1回 鹿島アントラーズユース 3年生

トップチームの主役となるために、日々、切磋琢磨するアカデミーの選手たち。
そんな彼らは、どのようなフットボールライフを送っているのか。
そして、日々の生活において意識していることとは――。
第1回は鹿島アントラーズユース3年生のLIFE STYLE に迫る。

「プロを目指すにはこれ以上ない環境」

雨にも負けず、風にも負けず――。

鹿島ユースの選手たちが通う鹿島学園高校までは、自転車で片道50分ほど。およそ10キロの通学も、今となっては慣れたものだ。

「すごく強い風のなかでも、雨のなかでも、自転車で登下校しているのは正直つらいときもあります(苦笑)」

交通網の発達した埼玉県さいたま市で中学時代までを過ごしたGK嶋田晄樹は、そう本音を漏らすが、「でも、すべては自分のためです」と言葉に力を込める。さいたま市立南浦和中学校3年のとき、他の強豪Jクラブからも声がかかったが、迷うことなくアントラーズユース加入を決めた。

「自分がより成長できる環境を求めていた。環境やスタッフ陣がすごくて、“アントラーズユースに行くしかない”と思いました」(嶋田)

今では「日頃からこのようなすばらしい環境でサッカーに打ち込めることへの感謝の気持ちを忘れずに、これからも練習に励んでいきたい。鹿嶋は、サッカーに集中できる環境としては一流です」と、その決断が正しかったことを感じる毎日だ。

鹿嶋にやってきて「芝生のグラウンドがすごく多い。地元にはそんなに多くないし、土のグラウンドばかりだった」と驚嘆したのは、福島県いわき市出身のFW馬目隼乃介だ。中学時代はノルテジュニアユースでプレーし、ユースに上がって鹿嶋市での生活をスタートさせた。「いわき市と気候も町の規模も似ていて住みやすい」というように生活環境に馴染んでおり、「プロを目指すにはこれ以上ない環境」と充実したサッカーライフを送っている。

現在、アントラーズユースには10人の高校3年生が在籍している。彼らにとって、アントラーズのトレーニング環境は理想的だ。

特に、「練習が終わってから、ロッカールームに戻る前にトップチームの練習を見たりもできるし、トップチームの選手とすれ違うことも多くてドキドキする」とMF池田健将が話すように、トップチームと近い距離感にあるのは特別なことだろう。センターバックを主戦場とするDF坂本翔汰は「隣のグラウンドに目標とする選手たちがいる。特に昌子源選手と植田直通選手を近くで見られることはすごく勉強になる。周りの選手たちへのポジティブな声がけが印象に残っている」と語り、MF壱岐健斗も「荒木遼太郎選手や土居聖真選手のプレーは映像で見ていても参考になることが多いけれど、実際にその動き方を間近で見ると、より多くのことを学べる」と、映像では伝わりづらいようなプロフットボーラーのすごみも感じている。

また、普段のトレーニングからユースの選手がトップチームの練習に参加する機会も多い。つくばジュニアユース出身のMF小倉幸成は「つくば時代はトップチームの選手が間近にいなかったから、ユースに昇格して鹿嶋に来て、たくさんの驚きがあった」とここまでの2年間を振り返る。小倉や徳田誉(2年)とともにトップチームの宮崎キャンプに参加した馬目は「鈴木優磨選手はユースの選手にも、トップチームの選手と同じように接してくれて、言うところは言ってくれた」と貴重なアドバイスをもらった。

「トップチームの練習場の隣でトレーニングできる喜びを感じる。いい刺激になっている」と話すのは、山形県山形市出身のMF三沢大和だ。視線の先にはいつも同郷の先輩である土居聖真選手の姿があり、「土居選手のようにドリブルなどを駆使してチャンスを作り出したり、見ている人を楽しませるプレーをしたい」と自らの理想像と重ね合わせる。

アカデミーハウスの中庭にあるテックボールを楽しむ大山。寮生は自由にボールを蹴ることができる

幼少期からアントラーズが大好きな長山。トップチームの隣で練習できる環境は理想的だ

“憩いの場”ラウンジでサッカー観戦

選手たちが生活をするアカデミーハウスは、クラブハウスからわずか1キロほどの距離にあるため、坂本が「いつでもサッカーができる、充実した環境がある」と話すように、朝の通学前やトレーニング後など、選手たちはいつでも好きな時間にボールを蹴ることができる。そしてアカデミーハウスに戻れば、疲れた体をケアする設備ばかりだ。「お風呂でリラックスする時間が好き。結構、長めに入ってしまう」と小倉が気に入っている大浴場や、「ラウンジでみんな一緒にスマホでゲームをしたりするときが落ち着く」という広々としたラウンジが選手たちの憩いの場となっている。

ラウンジに備えつけられた大画面のテレビでは、アントラーズなどの試合を見たりすることが日課となった。特に「みんなから“DAZN好き”と呼ばれるほど、いつもサッカーを見ている。サッカーの知識は誰にも負けない自信がある」というMF長山翔真の生活は、まさに“サッカー漬け”の毎日だ。「自主練の量を多くすることを意識している」というように自主練に人一倍の時間を費やしつつ、「ヨーロッパの強豪クラブだけでなく、中位クラブの戦術を見ることも好き」だと話すように、トップレベルのプレーや戦術を頭にインプットしている。

ラウンジの大画面テレビでサッカー観戦する“DAZN好き”の長山と嶋田

人工芝が敷き詰められた中庭は開放感があり、選手たちの憩いの場ともなっている

小倉は広々とした浴槽のある風呂場でリラックスする時間が一番好きだという

筋トレが好きなストイックな選手たち

常にストイックな選手たちにとっては、トレーニングルームも大人気だ。どの選手も頻繁に利用し、筋力トレーニングにも時間を割いている。池田が「筋トレが好き。トレーニングルームが一番のお気に入り」というように、さまざまなトレーニング器具が備わっており、それぞれの鍛えたい部分を強化することができる。馬目にとっては懸垂や逆立ちもお手の物。「よく食べて、トレーニングをして、よく寝ること」を実践し、プロになるための体作りに励んできた。

トレーニングルームでは、器具を使わなくとも広い室内にマットを敷けば体幹トレーニングも行える。「プロになるために、フィジカルコンタクトや空中戦の強さを武器にしたい」と語るDF大山幸路は「そのために毎日、体幹トレーニングをしている。ケガの時期にトレーナーから教わったトレーニング方法をアレンジして、自分で考えたメニューをこなしている」と、自ら考案したトレーニングメニューで自身の肉体を鍛えている。

現在、右腕を負傷している嶋田は「電気治療やアイシングをして、なおかつ下半身の筋トレをしっかりやって、より早く復帰できるように準備している。専属トレーナーもサポートしてくれるのでありがたい」と再びピッチに立てる日に向けて治療を続けている。そのようにトレーニングルームはそれぞれの目的に応じて多様な形で使われている。

筋トレが大好きな池田は軽々とバーベルを持ち上げる

昨年はケガに苦しんだ坂本だが、ピッチに立てなくてもトレーニングルームで汗を流した

トレーニングルームで逆立ちを披露する馬目。バランス感覚も磨いている

勉強面でもチームプレー

ただし、アントラーズユースの選手であるのと同時に、彼らはそれぞれ1人の高校生でもある。そのため、サッカーのトレーニングばかりに夢中になるのではなく、学業を疎かにしないことも大切だ。「高校生になってから勉強をやるようになった。良い点数を取れたらうれしいし、周りのみんなも勉強しているから、自分もやらなければと頑張れる」と小倉が言うように、テスト期間の前になると選手たちの生活はより“勉強モード”へと切り替わる。それぞれ、得意な科目と不得意な科目があることは当然のことだろうが、長山が「同じ学年の人に教えてもらったほうがわかりやすかったりもするから、テスト前はみんなで協力し合いながら猛勉強する」と明かすように、サッカーの試合と同様に勉強面でもチームプレーを披露。長山は自らの部屋で得意な数学をチームメートに教え、自身も「教えることで、自分にとっての復習にもなる」と相乗効果を生み出す。全員が学業にも励んでおり、嶋田は「勉強面で劣っている選手はいない」と胸を張る。

「プロになることもそうだが、世界に出て活躍する選手になりたい」という夢を持つMF平山京吾は、「1人部屋だからこそ集中して勉強できる」と日常的に英語の学習に取り組んでいる。「世界で活躍するために、夜などに最低30分は英語の勉強をしている」というように、サッカーと同様に英語学習でも重要視するのは日々の積み重ね。3月にオーストラリアへ遠征に行った際に、英語のネイティブスピーカーとコミュニケーションを取り、「英語をもっと勉強しないとダメだと痛感した」とさらなる語学力の向上に努めている。

テスト前には長山が小倉に数学を教えるなど、それぞれが協力し合って学力向上に努める

海外で活躍することを目指す平山は毎日の英語学習を欠かさない

必要不可欠な“家族の支え”

そんな選手たちは皆、中学校卒業と同時に親元を離れてアカデミーハウスに入寮した。大山は「家族が好きなので当初はちょっとホームシックみたいになった」と入寮当時の自分自身を懐かしみ、「今はもう大丈夫です(笑)。ここでは自分のことは自分でやらなければいけない。自立できる環境がある」と自身の成長を振り返る。小倉も「小学生や中学生のときは、サッカーの準備などはほとんど親にやってもらっていた」と実家では頼り切りになっていたことを明かし、「親がいないことで、自分でやることの大事さを感じている。最初は大変だったけれど、もう慣れた。自立や成長につながっている」と実感する。

三沢は中学時代に山形県からアントラーズアカデミーの門を叩き、当初は母親とともに鹿嶋へと居を移してアントラーズジュニアユースでの3年間を過ごした。ユースに昇格し、入寮するとともに母親は山形へと帰り、今では「親がいないので自分ですべてやらなければいけないから、親のありがたみを感じている」と話す。「両親と頻繁に電話で話し、6匹の愛犬の状況も確認して癒やされている」という池田は、オフの日になると「両親を呼んだら地元の千葉県から鹿嶋に来てくれる。一緒に買い物をしたりして過ごす」と家族団らんのひと時を楽しむこともあるようだ。

プレミアリーグ昇格、クラブユース選手権優勝、そして、トップチーム昇格――。アントラーズユースの3年生10人がこの地で高校時代を過ごす目的はそれぞれが多く持つが、その一つに「感謝」や「恩返し」という言葉も発せられた。

「親や、これまでに指導してくれた人たちがいつも応援してくれることに対して結果で恩返ししたい」(壱岐)

「親はわざわざ鹿嶋に引っ越してきてくれて負担もかけたから、絶対にトップチームに昇格したい」(三沢)

さまざまな思いを胸に、それぞれの夢と目標を実現させるために――。雨にも負けず、風にも負けず、アントラーズユースの3年生が高校生活最後の1年間に全力を注ぐ。