2009年、J1第25節。前代未聞の再開試合。

  豪雨に霞むカシマスタジアムが、異様な雰囲気に包まれた。74分、スコアは1-3。約30分の中断を経て、下された決定は「試合中止」、そして、「74分からの再開試合」。Jリーグ発足後、前代未聞の出来事だった。

 2009年、9月12日。首位の座を走り続けていたアントラーズは、J1第25節で大一番に臨んだ。対するは、川崎フロンターレ。両者の勝ち点差は7。アントラーズとしては、勝てば優勝へ大きく前進する一戦だ。
 しかし、アントラーズは劣勢を強いられた。前半を終えて、1-2。さらに66分には、のちに鹿のエンブレムを纏うこととなる、当時の天敵ジュニーニョにゴールを許し、2点ビハインドを負うこととなった。そして、雨脚はどんどん強くなっていく。視界が霞む中、アントラーズは必死に応戦した。そして迎えた、74分――。

 岡田正義主審が、ボールをピッチへ落とし、コンディションを確認する場面を、覚えている人も多いだろう。大きな水溜まりに放たれたボールが弾むことはなく、水しぶきを上げて着地した。岡田主審は、プレー続行不可能と判断。試合中止を告げられたスタジアムは、騒然となった。
 それから、約1か月。10月7日、カシマスタジアムで、74分からの再開試合が開催された。アントラーズは、8月29日の大宮戦から、4連敗中。チーム状態は、最悪だった。

 プレー再開は、自陣でのFK。ここで、奇跡的なゴールが生まれる。伊野波が蹴り込んだボールに対して、ダニーロが競り合ってゴール前へ。そこへ飛び込んだ岩政が、気迫のゴールを決めてみせた。相手選手に触れることなく、一度もピッチに着地することなく、ボールはゴールへと吸い込まれていった。
 ファーストプレーで1点差としたアントラーズ。最後まで、圧倒的に攻め込んだ。ただひたすらにゴールを目指す姿勢は、自らを覆う闇を振り払うかのようだった。結局、次のゴールを奪うことはできず、2-3で敗戦。記録上は5連敗となったが、この試合で、再浮上への光を見出したことは確かだ。アントラーズは、次節の磐田戦で0-0と引き分けて連敗を止めると、ラスト5試合で5連勝。リーグ3連覇を果たした。
 試合中止がもたらしたインパクト、敗戦の悔しさ、再浮上への転機。様々な記憶が交錯する、忘れ得ぬ一戦だ。
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