決勝第1戦のみどころを読む!

 金崎が決めた魂のダイビングヘッドを、チーム一丸となって守り抜いた準決勝。勝利を告げるホイッスルが鳴り響くと、等々力陸上競技場は水色と黒の沈黙に包まれた。そしてビジタースタンドからは、アントラーズレッドの歌声が降り注がれる。敵地で訪れた歓喜の瞬間——。

 しかしそれは、決して満足や安堵を意味するものではなかった。次のステージへ進めること。優勝への道のりを自ら切り開き、ファイナルへの切符を奪い取ったこと。その高揚感と、胸の中に湧き起こる闘志を歌声に乗せた背番号12とともに、アントラーズは川崎の地を後にした。「カシマスタジアムへ帰る」。その誓いを現実のものとして。

 「次に進むことができたけど、まだ何も勝ち得ていない。次で勝ってこそ。満足せずに次へ向かいたい」

 後半アディショナルタイムにベンチへと退き、残り5分間をピッチの外から見守った小笠原は、試合後のインタビューで顔色一つ変えずに淡々と語った。この言葉が全てだろう。「まだ何も手にしていないし、決勝で勝たなければ意味がない。みんなでいい準備をしたい」。普段のリーグ戦とは比べ物にならない数の報道陣が殺到したミックスゾーンで、浮足立つ者も、満足気な表情を見せる者も、誰一人としていなかった。
 さあ、いよいよ決勝だ。相手は浦和レッズ。2ndステージと年間勝ち点の首位に立ち、ルヴァン杯も制した。リーグ戦で積み上げた勝ち点74はリーグ歴代トップタイの数字であり、年間を通じて最も安定した力を発揮してきたと言える。

 そんな強敵と、今季のアントラーズは2度対戦している。結果は1勝1敗。まだ鮮やかな記憶として残る6月11日の1stステージ第15節では、埼玉スタジアムに乗り込んで2-0と会心の勝利を収めた。カイオを起点とする高速カウンター、柴崎のピンポイントクロスに飛び込んだ金崎の先制ゴール。そして鈴木が憎らしいほどの冷静さを見せて突き刺したPK。敵地での完封勝利は、リーグ戦では実に2010年3月以来の白星だった。この勝利で、アントラーズは1stステージ制覇へ力強く前進した。

そして2度目の対峙は7月23日、2ndステージ第5節。3万超の観衆が詰めかけたカシマスタジアムで、アントラーズは60分に均衡を破る。山本のクロスに飛び込んだ土居が、執念のゴールを決めてみせた。沸騰するサポーターズシート。しかし2分後、李忠成にネットを揺らされると、73分には痛恨の2失点目を喫した。1-2。浦和サポーターの歌声が響き渡り、屈辱的な時間を過ごすこととなった。そしてアントラーズは迷路に迷い込むこととなる。この試合が終わった時点で、年間勝ち点は同じ46。しかし全34節を終えた時、15ポイントもの差をつけられたのだった。
 前回の対戦から歩んだ道のりは対照的なものだった。アントラーズは不甲斐なき日々を過ごし続けた。しかし、上昇気流に乗った今、悲観する必要は全くない。タイトルマッチにおいて、今までの戦績など何の意味も持たないのだから。ましてや、決勝はホーム&アウェイ方式。2試合での勝利数、得失点差、アウェイゴール数、その全てが並んだ時は年間勝ち点上位の浦和がタイトルを掴むこととなるが、アントラーズは準決勝のようなディスアドバンテージをほとんど抱えていないのだから。

 2000年と2001年のチャンピオンシップに出場し、2年連続でMVPを受賞した小笠原は「過去は過去のこと」と記憶を辿ろうとはしない。それでも「タイトルを獲った者にしかわからないもの」を知るキャプテンは「互いのホームで1回ずつできることは楽しみ」と、久しぶりに臨むホーム&アウェイでの決勝を心待ちにしている様子。金崎も「何よりもホームでやれることが大きい」と、カシマスタジアムへの帰還を喜んでいた。  
 そう、ホームで戦えるのだ。チャンピオンシップの3試合中、カシマスタジアムで戦えるのはこの試合だけだ。今月3日、ブーイングすら聞こえてきたホーム最終戦セレモニーで、西は「それでも勝てると思っている」と言い切った。「またカシマスタジアムへ戻ってこられるように」と誓った。その約束は果たされた。次なる誓いは「カシマスタジアムで勝つ」ことだ。

 9年前、オリヴェイラ監督は言った。「埼玉では3000人の背番号12が力をくれた。カシマでは30000人の背番号12が待っている」と。情熱の魔法を操った指揮官の言葉をいま一度噛み締める。等々力では3000人の背番号12が力をくれた。カシマでは——。
今回もまた、1人でも多くの背番号12とともに戦いたい。決勝第2戦のビジタースタンド、そのチケットは瞬く間に完売したと聞く。埼玉スタジアムに駆け付けることが叶わない仲間が数多くいると聞く。だからこそ第1戦、万難を排してカシマスタジアムへ足を運んでほしい。

 7年ぶりのリーグタイトルまで後2つ。等々力で道を切り開いた俺たちを止められる者などいない。アントラーズファミリーの力を総結集して、ともに戦おう。聖地・カシマスタジアムで、チーム一丸で勝利を奪い取ろう。
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