2014年12月6日。盟友との別れに、闘将が号泣。
「勝つしかない。自分たちができることはそれだけ」。試合前日、背番号40はそう言ったきり、クラブハウスを去った。2014シーズン最終節。アントラーズは首位のG大阪、2位の浦和を勝ち点差2の3位で追っていた。両ライバルが同時に負けることは考えにくかったが、得失点差の関係(G大阪が+28、浦和が+21、そしてアントラーズが+26)もあり、どちらかが負け、どちらかがドローとなった場合、逆転優勝の可能性はぐっと高まる。そんな最終節だった。
そして小笠原にはもう1つ負けられない理由があった。それは、長く苦楽を共にした同期の中田浩二(現C.R.O)がこのシーズン限りでピッチを去ることを決めていたのだ。「何の前触れもなく、『引退する』と言われた」という小笠原にとって、勝つことだけがこの盟友へのはなむけだった。
12月6日午後3時33分。ライバルのG大阪と浦和と同時に、アントラーズは最終節のキックオフを迎えた。スタンドを真っ赤に染めたサポーターの応援が響き渡る中、先にゴールネットを揺らし試合を優位に進めたいアントラーズだったが、開始早々、まさかの先制点を奪われる。6分、右サイドから中央へパスを入れられると、ポストプレーから高橋にミドルシュートを決められてしまった。
鳥栖お得意の速攻での先制を許し1点を追う立場となったアントラーズは勝たなければいけない焦りからか、なかなかチャンスを作り出せない。そして焦れば焦るほど、鳥栖の激しいプレスとスペースをつぶす守備に嵌まっていった。
前半を終えて、0-1。前線の赤崎が何度か最終ラインの背後をつく動きを見せたが、柴崎、土居らが狙ったスルーパスはことごとく鳥栖守備陣に止められ、決定機を作れないまま45分を戦い終えた。
このもどかしい状況を打開すべく、後半、トニーニョ セレーゾ監督は53分と早い段階で豊川(現岡山)に変わり、中村をピッチへ送り出す。すると中村を中心に遠藤、土居が疲れの見え始めた鳥栖を相手にボールをつなぎ、試合を支配し始めた。
しかしこの日のアントラーズにとって、ゴールは遠かった。57分のセットプレーでは植田が得意のヘディングシュートを見せるが、これはクロスバーのわずか上。逆に前がかりになったところで鳥栖のカウンターを食らうなど最後まで後一歩が足りない試合となってしまった。
浦和が名古屋に1-2と負け、G大阪が徳島にスコアレスドローと逆転優勝への条件が儚くもそろった最終節。「どこかふんわりと入ってしまった」と土居が語ったが、最後の最後まで自分たちの力が足りなかった。「負けて学ぶことは、ない。勝たないと分からないことだらけなんだ」。この試合を最後に現役を引退することとなりながら、ベンチにも入れずにスタンドからチームメートたちの敗北を見つめた中田は、そう言った。
試合後、引退セレモニーで笑顔を見せる中田の隣には、うつむいたまま、顔を上げることのできない小笠原の姿があった。「満男が泣いているから、オレが泣けなかったよ」と中田は笑ったが、キャプテンは「これは涙じゃない。汗だ」と強がった。ただ、最後に「勝ちたかった。アイツを勝って送り出せなかったことが悔しい」と唇を噛みしめながら、血を吐くように語った。
そして小笠原にはもう1つ負けられない理由があった。それは、長く苦楽を共にした同期の中田浩二(現C.R.O)がこのシーズン限りでピッチを去ることを決めていたのだ。「何の前触れもなく、『引退する』と言われた」という小笠原にとって、勝つことだけがこの盟友へのはなむけだった。


鳥栖お得意の速攻での先制を許し1点を追う立場となったアントラーズは勝たなければいけない焦りからか、なかなかチャンスを作り出せない。そして焦れば焦るほど、鳥栖の激しいプレスとスペースをつぶす守備に嵌まっていった。


このもどかしい状況を打開すべく、後半、トニーニョ セレーゾ監督は53分と早い段階で豊川(現岡山)に変わり、中村をピッチへ送り出す。すると中村を中心に遠藤、土居が疲れの見え始めた鳥栖を相手にボールをつなぎ、試合を支配し始めた。


浦和が名古屋に1-2と負け、G大阪が徳島にスコアレスドローと逆転優勝への条件が儚くもそろった最終節。「どこかふんわりと入ってしまった」と土居が語ったが、最後の最後まで自分たちの力が足りなかった。「負けて学ぶことは、ない。勝たないと分からないことだらけなんだ」。この試合を最後に現役を引退することとなりながら、ベンチにも入れずにスタンドからチームメートたちの敗北を見つめた中田は、そう言った。
試合後、引退セレモニーで笑顔を見せる中田の隣には、うつむいたまま、顔を上げることのできない小笠原の姿があった。「満男が泣いているから、オレが泣けなかったよ」と中田は笑ったが、キャプテンは「これは涙じゃない。汗だ」と強がった。ただ、最後に「勝ちたかった。アイツを勝って送り出せなかったことが悔しい」と唇を噛みしめながら、血を吐くように語った。


あれから、赤崎、柴崎、土居、昌子、そして植田はチームの主力となるまでに成長した。そして小笠原はまだまだ元気にキャプテンマークを巻いている。2年前の最終節の借りを、このホーム開幕戦で。さあ、リベンジの舞台は整った。
スタッフダイアリー
過去の記憶や勝利への意欲、様々な思いを持って日々練習に励む選手の様子は、毎日更新の「スタッフダイアリー」をご覧ください!友達に教える