1993年5月16日。ジーコ、ハットトリック。

 アントラーズファミリーが忘れもしない、そして永遠に語り継ぐ試合。1993年5月16日、Jリーグ開幕戦。産声を上げたばかりのアントラーズが、まだ真新しい聖地・カシマスタジアムで初陣を迎えた。対するは、名古屋グランパスエイト。無数のフラッグが振られ、チアホーンの音が鳴り響く中、16時にキックオフの時を迎えた。

 この試合、何といっても注目は、アントラーズのジーコ、そして名古屋の元イングランド代表FWリネカーだった。大物助っ人対決を制するのはどちらか。幕が開けると、圧倒的な差がついた。サッカーの神様が、これ以上ない鮮やかなゴールショーを見せてくれた。
 まずは25分、ペナルティーエリア手前でこぼれ球に反応し、右足を一閃。強烈なミドルシュートがゴール右隅へと突き刺さった。さらに30分には、敵陣左サイド、角度の浅い位置から直接FKを沈める。左ポストに当たってゴールへと吸い込まれた一撃に、相手GKは全く反応できなかった。

 前半は2-0で終了。歓喜に包まれるカシマスタジアムで、ゴールショーはまだまだ終わらなかった。後半1点目は53分、最終ラインの背後へ抜け出したアルシンドが巧みに相手DFをかわし、冷静に流し込む。これでリードを3点に広げ、アントラーズが早くも勝利を決定付けた。
 そして63分、ついにその時が訪れた。ペナルティーエリア手前でボールを持つジーコ。相手DFとの間合いを計りながら、絶妙のタイミングで左サイドへと展開する。待っていたのはアルシンドだ。一瞬の加速でマークを振り切り、ニアサイドへクロスを送ると、そこへ背番号10が飛び込むのが同時だった。

 会心のボレーシュートがゴールネットを揺らす。ジーコ、Jリーグ開幕戦でのハットトリック達成。もちろんリーグ史上初の快挙だ。アントラーズの歴史は、華々しい幕開けを迎えることとなった。
 さらに直後には、アルシンドが自身2点目となる鮮やかなループシュートを決めた。5-0。名古屋を寄せ付けず、ホームで圧勝したアントラーズ。「99.9999%、Jリーグ参入は不可能」と告げられていたクラブが、衝撃的な勝利で開幕戦を飾った。それはまさに、奇跡と呼べるものだっただろう。
 あれから22年以上の時を経て、アントラーズは今日、ゴールラッシュを目指す。あの時と同じ相手、同じ場所で。あの日のような、奇跡を。ステージ最終戦が、いよいよ始まる。

スタッフダイアリー

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