今日の試合のみどころを読む！

　金崎のヘディングシュートで、アントラーズは再び走り始めた。前節の甲府戦、なかなかチャンスを生かせない苦しい展開の中で、背番号33が決めてみせた、気迫の決勝弾。失意のG大阪戦から嫌な流れを引きずることなく、しっかりと3ポイントを掴んでホームへと帰還した。そして今日、宿敵相手の重要な一戦を迎える。J1 2nd 第12節、カシマスタジアムに迎え撃つは、浦和レッズだ。 　甲府での90分間は、我慢の戦いだった。再三の決定機をゴールへと結実できず、もどかしい時間が続く。それでも集中力を切らすことなく、一瞬の隙を突いて先制すると、しっかりと最少得点差で勝利を収めることができた。山本は「自陣に引いた相手に対して、90分トータルで考えて勝つということを、しっかりと達成できた。このような勝ち方も大事」と、手応えを掴んでいる。 　守備を固めてきた甲府との対戦から一転して、今日はボールポゼッションを得意とする浦和との激突だ。ボール保持率では、相手を下回る可能性もあるだろう。前節とは異なる類の「我慢」を強いられるかもしれない。赤崎は「マークを明確にして、いつもよりも神経質にプレーしないと後手を踏んでしまう」と、警戒する。多くの人数をかけて攻撃を仕掛ける浦和を、徹底して封じなければならない。

　そんな戦いを前に青木は「相手にボールを“持たれている”のではなく、“持たせている”という気持ちでプレーをして、安定した守備ができれば」と、展望する。「ボール保持＝優勢」とは限らないのがサッカーだ。心理的な優位に立ちながら、試合を進めていきたいところだ。 　今日の決戦に向けて、準備期間は1週間。シルバーウィークのクラブハウスには連日、数多くのサポーターが詰めかけた。天候にも恵まれ、選手たちの表情は明るかった。練習見学者との記念撮影、そしてスタジアム来場の呼びかけ。「チーム一丸」という雰囲気は、日を追うごとに強くなっている。競争意識が高い水準で働き続ける中、このチームはいつしか、「誰が試合に出ても大丈夫」というフレーズを、誰もが口にする段階にまで到達した。互いへの信頼と敬意がなければ、決して発せられない言葉だ。

　石井監督も、選手たちに呼応するように「チーム状態の良さを、皆が実感していると思う」と言う。そして「ミーティングで選手たちにも伝えたが、個人戦術においてもグループ戦術においても、今週の練習は期待以上に良い出来だった。本当に、今週は良いトレーニングを積めた」と、自信を見せた。前日練習後にはミーティングを敢行し、最後の確認も行った。ホームでの必勝を期し、準備に抜かりはない。 　さあ、いよいよ勝負の時が来た。幾多もの名勝負を繰り広げてきた“レッド・ダービー”に向けて、選手たちは静かに闘志を燃やしている。ダヴィは言う。「この試合に勝つことで、大きく一歩前進できる。タイトルへ向けて、一歩近づける。非常に重要な試合だ」。

　そして背番号12も、埼玉から押し寄せる赤きサポーター集団に負けるわけにはいかない。熱い応援の応酬になるだろう。意地と意地がぶつかり合う90分になるだろう。遠藤は「アントラーズサポーターの声だけを聞いて、プレーするからね」と、静かに語った。ここはホームだ。スタジアム全体で、浦和を飲み込んでやろう。

　1stステージ王者を倒し、次なるステージを制するのはアントラーズだと、高らかに宣言する。その時が、来た。