2009年、J1第33節。圧巻のゴールラッシュ。

　心地良い秋晴れが広がった、カシマスタジアム。ホーム最終戦を前にした聖地は、強敵とのビッグマッチを控えた高揚感、そしてタイトル獲得への期待感に満ちていた。2009年11月28日、J1第33節。アントラーズがガンバ大阪を迎え撃った。

　史上初のリーグ3連覇へ向けて、アントラーズはラストスパートをかけていた。5連敗という長いトンネルを抜け、1引き分けの後、3連勝。首位の座を奪い返し、残りは2試合となった。G大阪戦、そして最終節の浦和レッズ戦。宿敵との2連戦で連勝を果たすことが、優勝へのミッションだ。この日は、その第一関門だった。

　アントラーズの先発メンバーは、GK曽ヶ端、最終ラインは右から、内田と岩政、伊野波、新井場の4人。ボランチは中田と小笠原のコンビで、2列目には本山と野沢が入る。そして高速2トップ、興梠とマルキーニョスが前線に並んだ。ベンチには小澤とパクチュホ、増田、青木、ダニーロ、田代、そして大迫。盤石のメンバーで、大一番に臨んだ。

　上位対決にふさわしく、前半は互いに手堅い試合運びを見せた。決定機はほとんど生まれず、スコアレスで45分間が終了。ハーフタイムを挟み、勝負の行方は後半に持ち越された。1点勝負になるのではないか――。そんな予感をした人も多かっただろう。

　その予感を、アントラーズは良い意味で裏切ってみせる。後半はゴールラッシュとなり、カシマスタジアムは祝祭空間と化した。まずは56分、中盤でボールを奪った小笠原のスルーパスに、興梠が反応。相手DFとの1対1を制し、絶妙のタイミングで右足シュートを放つと、ゴール左隅へと吸い込まれた。さらに2分後には、マルキーニョスのシュートのこぼれ球を拾った野沢が、左足で芸術的なループシュートを決めた。これぞ、“Mr.クライマックス”の真骨頂。スーパーゴールで、アントラーズがリードを2点に広げた。

　2-0となった直後、G大阪も意地を見せる。二川のゴールで、アントラーズは1点差に迫られた。ただ、この場面では、4選手がシュートコースを消すためにスライディングを敢行。惜しくも失点を喫したが、極限まで高められた集中力を示すワンプレーだった。

　立て続けに3ゴールが決まり、スタジアムは騒然とした。そんな雰囲気を打ち消したのは興梠。1点差に迫られた2分後、野沢のクロスに合わせて3点目を決め、再びリードを2点に広げる。その後、退場者を出したG大阪に押し込まれる場面もあったが、終盤には田代とダニーロがゴールネットを揺らした。

　スコアは、5-1。アントラーズがG大阪を粉砕し、力強く優勝へ前進した。そして最終節では、雨の埼玉スタジアムで1-0と完封勝利を収め、リーグ3連覇を果たした。

　優勝するためには、必ず打ち破らなければならない相手。それがG大阪だ。あの日のように、今夜も。カシマスタジアムで、歓喜の時を。

スタッフダイアリー

過去の記憶や勝利への意欲、様々な思いを持って日々練習に励む選手の様子は、毎日更新の「スタッフダイアリー」をご覧ください！