2009年、J1第31節。J史上初の快挙。

 優勝争いが佳境を迎えた秋、強烈なインパクトをもって「堅守・鹿島」の復活を宣言した試合があった。2009年11月8日、J1第31節。リーグ3連覇を目指し、2位につけていたアントラーズが、J1初参入のモンテディオ山形をカシマスタジアムに迎えた。

 アントラーズは、8月29日の大宮戦から長い迷路に迷い込み、5連敗を喫した。もがき苦しむ中、第29節のアウェイ磐田戦をスコアレスドローで終えると、第30節の千葉戦では3-0と快勝。7試合ぶりに白星を挙げ、上昇気流に乗って迎えた2戦連続のホームゲームで、盤石の戦いぶりを見せた。
 先制点は20分、小笠原がドリブルで中盤から持ち上がると、絶妙のタイミングでスルーパスを通す。反応したのは興梠だった。飛び出してきたGKと交錯する直前にシュートを放ち、鮮やかなワンタッチゴールを決めてみせた。先制以降も、アントラーズは何度もチャンスを演出。追加点こそ奪えなかったが、主導権を握り続けた。
 1点リードで迎えた後半立ち上がりには、本山からの浮き球のパスに反応した興梠がペナルティーエリア内で倒され、PKを獲得。キッカーを務めたのは、背番号18だった。この日がJ1通算200試合出場のマルキーニョスが、ゴール右隅へきっちりと決め、2-0とリードを広げた。
 「2-0は危険なスコア」とよく言われるが、この日のアントラーズにとっては、セーフティーリードでしかなかった。出足の早いプレスと激しいボディコンタクトで山形に攻撃の糸口さえも掴ませず、終始、主導権を掌握。オズワルド オリヴェイラ監督は、残り10分を切るまで交代枠を使わず、先発11人に試合運びを託した。

指揮官は81分にダニーロ、85分に大迫、88分に青木をピッチへ送り出し、時計の針を進めながら、試合を締めにかかる。そして鳴り響いたホイッスル。アントラーズが3試合連続の完封試合を達成し、2連勝を果たした瞬間だった。
この試合、アントラーズは山形に1本のシュートも許さなかった。Jリーグ史上初の快挙は、野球の表現を借りて「完全試合」とも報じられ、大きなインパクトを残すこととなった。そしてアントラーズは次節の京都戦を1-0で制し、川崎Fをかわして首位を奪回。ラスト2試合ではG大阪、浦和という難敵に連勝し、リーグ3連覇を達成した。

今季、守備の安定に課題を抱えるアントラーズ。しかし、2ndステージでは7試合中3試合が無失点と、少しずつ改善の兆しが見えてきている。今日もまた、あの日のように、鉄壁の守備を――。そう期待しつつ、キックオフを迎えたい。

スタッフダイアリー

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