今日の注目プレーヤーは、中村充孝!

「そんなん言うタイプじゃないよね、俺…」

 中村充孝は、そう付け加えて照れ隠しのように笑ってみせた。「ゴールやアシストが欲しいのではないか」との問いに対して、「今はそれよりも」と、やんわりと否定しながら「チームのために」と、言葉を紡いでいた。
「チームのためにプレーすることが一番。自分が点を取る時は、流れの中で自然に来ると思うから。自己チューになると、チームの流れも良くなくなるからね」

 石井監督の就任が、その合図だった。3試合連続先発出場。メンバーの入れ替えが激しい攻撃的なポジションにあって、中村は地位を築きつつある。「選手たちの能力について、セレーゾ前監督とは違った見方をしている部分もあるので、その力を最大限に引き出していければと思っている」。新指揮官の言葉を象徴する存在が、背番号13だ。
 中村は「2列目の選手は、以前よりも流動的にプレーしている。動いた場所で、自然に、やりやすいようにスムーズにできている」と言う。ポジションチェンジが活発になり、プレーエリアがサイドに限定されなくなったことで、もともとトップ下でのプレーを得意とする中村は、その持ち味を出しやすくなった。鳥栖戦や広島戦では、相手の意表を突くループパスも披露。イマジネーションにあふれた右足が、生き生きと躍動している。

「パスが出てこなくても、ボールを引き出し、呼び込む動きを繰り返すだけ。パスが出てくるまで動き直すことが、前線の仕事だから。チームのために、やれることをしっかりとやりたい」

 昨季の終盤、途中出場で存在感を示していた頃、中村は「監督から求められたサイドのポジションで結果を残し続けないといけない。最初からトップ下で出たいという思いもあるけど」と、中央でのプレーへのこだわりを捨てきれずにいた。「やっぱりゴールにこだわりたい。アシストだと、点を決めた方の選手が目立っちゃうし」と、ゴールへの欲求をストレートに表現していた。
 それが今、冒頭のコメントのように、「チームのために」献身的にプレーする姿を見せるようになった。出足の早いプレスや攻守の切り替えなど、守備面での働きも出色の出来だ。言葉1つをとっても、中村は変わった。

「アントラーズは、ボランチではなく、アタッカーが王様にならないといけないチーム」と、中村は言う。王様とは、傍若無人にピッチの中央にたたずむ者ではない。チームのために献身的に働いたうえで、圧倒的な存在感を示し、勝利へ導く存在だ。

 加入から2年半、本領発揮とはいかなかった。ようやく今、その才能を解き放とうとしている。アントラーズの「王様」へ――。背番号13が今夜も躍動する。

試合前コメント

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