今日の注目プレーヤーは、土居聖真!

 「苦しい時に、チームを助けられる選手にならなければならない」

  背番号8を纏うことの意味を、土居聖真はシーズン前から繰り返し語っていた。サントス、マジーニョ、小笠原、野沢――。アントラーズを支えてきた、錚々たる面々が背負った8番。その物語の継承者となる責任を痛いほどに感じながら、下部組織育ちの22歳は、「アントラーズの顔になれるように」と、みなぎる決意を隠そうとはしなかった。
 4日前、大雨が降るシドニーで、土居は決意を結果で示してみせた。勝利以外は許されない状況で、アウェイで負った1点のビハインド。まさに崖っぷちの場面で、同点弾を決めた。「苦しい時に、チームを救う」。その言葉通りの、ファインゴールだった。

 今季、土居はリーグ戦とACL合わせて11試合に先発出場し、4つのゴールを刻んでいる。特筆すべきは、そのうち3つが同点弾であるということだ。2月25日のウェスタン・シドニー・ワンダラーズ戦、強烈な右足ボレー。4月12日の新潟戦、後半キックオフ直後の電光石火の一撃。そして、シドニーの夜。劣勢を跳ね返すゴールを決める存在は、チームにとって、この上なく頼もしい。
 開幕後、未勝利が続いた日々を経て、土居は「1つ勝つまでの苦しみを知った」と言う。「自分が下がった時にロングボールを使われる回数が多かったり、自分が裏に抜けて走った時には、ロングボールを蹴らずに短くつないだりすることもあった。試合を重ねるうちに、意思疎通はスムーズになってくると思うけど」と、苦しい胸の内を明かすこともあった。新戦力を加えた攻撃陣にあって、「周りの選手の良さを引き出してあげたい」と、中心選手としての役割を担いつつ、同時に自分の特長を発揮するために、腐心する日々だった。結果が伴わず、悔しさだけが募った。「この経験を糧にする」。もがき苦しんだ時間を経て、土居はさらに逞しくなった。

 長距離移動を経て、わずかな準備時間で迎える今節。簡単な試合にはならないだろう。苦しい時間が訪れるかもしれない。しかし、アントラーズには頼れる背番号8がいる。

 「新たな8番像を作る」道の途中。今日もまた、土居が輝きを放つ。

試合前コメント

試合に臨む選手たちの意気込みは「試合前コメント」をご覧ください!
友達に教える