2008年J1第8節。開始直後のメモリアル弾。

 1993年5月16日、ジーコが決めた強烈なミドルシュートが、物語の始まりだった。サッカーの神様が刻んだ、アントラーズのリーグ戦初スコア。あれから16年、歓喜に彩られた歴史の中で、着々と積み重ねられてきたゴール数が、ついに大台に達した。
 2009年4月29日、J1第8節。アントラーズは、カシマスタジアムで神戸と対戦した。前節の山形戦でマルキーニョスが決めたPKが、チーム通算999ゴール目。次の1点が、メモリアルゴールとなる。いつも通り、ただひたすらに勝利を目指すスタンスは変わらない。ただ、記念のスコアラーが誰になるのか、否が応でも注目が集められていた。シュートが放たれるたびに、一喜一憂する――、はずだった。
 キックオフ直後、メモリアルゴールの行方は、歓喜とともに早々と決定した。決めたのは、背番号3。野沢が蹴った右CKに反応した岩政が、ニアサイドで打点の高いヘディングシュートを放ち、ゴールネットを揺らしたのだった。岩政にとっては、リーグ通算21ゴール目。秋田が保持していたアントラーズのDF最多得点記録を更新する一撃でもあった。
 開始1分でリードを得たアントラーズは、神戸にわずか5本のシュートしか許さない、鉄壁の守備を披露した。今年と同様、ACLとの連戦の真っただ中にあった選手たちは、動きが落ちる時間帯があっても、集中力を保って要所を締めた。追加点こそ奪えなかったが、1-0で完封勝利。殊勲の岩政について、オリヴェイラ監督は「彼の戦う姿勢や努力は素晴らしい。良い形で、記念ゴールとして反映された。自分としても嬉しく思う」と、賛辞を惜しまなかった。
   メモリアルゴールが生まれた夜を終え、そこから168試合を戦ったアントラーズは、通算ゴール数を1328まで伸ばしている。次の節目はまだ先になるが、今日もまた、物語を紡ぐゴールが、カシマスタジアムに歓喜をもたらすに違いない。

 1つ1つのプレーが、1つ1つのゴールが、アントラーズの歴史を形作っていく。その瞬間に立ち会う喜びを、今日もまた、噛みしめたい。

スタッフダイアリー

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