ACADEMY FREAKS INTERVIEW

U-15ドイツ遠征・第1回 世界を知り、アントラーズを磨く。ボルシアMGとの提携から始まった新たな挑戦

 

ボルシア・メンヒェングラートバッハ(ボルシアMG)との提携によって生まれた、新たな世界との接点。鹿島アントラーズアカデミーは、その機会をU-15年代のドイツ遠征へとつなげた。求めたのは、日本向けに整えられた特別なトレーニングではなく、現地の選手たちが日常的に触れている育成を知ること。鹿島はなぜ世界を見るのか。提携から遠征実現までの背景と、その先で始まった新たな挑戦をたどる。(第1回/全4回)

 

 

 ボルシア・メンヒェングラートバッハとの提携が、鹿島アントラーズのアカデミーにとって何を意味するのか。

 答えは、最初から決まっていたわけではない。

クラブ間の提携という新たな接点が生まれ、そのなかでアカデミーとして何ができるのかを考えていく。そこで具体化していった取り組みの一つが、U-15年代のドイツ遠征だった。

 提携が正式に発表される以前から、その準備は進められていた。

 今回の遠征に事業側から関わった佐藤によれば、「前年の夏ごろにはボルシアMGとの提携を計画しているという話があり、その初期段階から、フットボールの強化や育成における連携は一つのテーマになっていた」という。

 夏明けごろには、翌年3月にアカデミーの選手たちをドイツへ連れていく計画が具体化。アカデミー側でも、鈴木修人を中心に遠征の準備が始まった。

 提携先そのものをアカデミー側が選んだわけではない。だが、新たな接点が生まれたことで、これまでとは違う世界へ選手たちを送り出せる可能性が生まれた。

 カテゴリーを検討するなかで、鈴木が希望したのがU-15だった。

「最初は個人留学に行けるよという話があったり、『どのカテゴリーで行きたい?』と聞かれたりしていました。そのとき僕は『U-15の遠征として行きたい』と答えました。ユースだと日程が詰まっているところもあるし、U-15が一番いいんじゃないかなと」

 鹿島アントラーズアカデミーにとって、海外へ出ること自体が初めてだったわけではない。それでも今回は、これまでの海外遠征とは異なる意味があった。

 大会に参加し、海外のチームと試合をすることだけが目的ではない。一つのクラブのなかへ入り、そのクラブが普段どのように選手を育てているのかを知ることができる。そこでアントラーズ側のリクエストは、日本から来た選手たちに合わせて現地の日常を変えてもらうことではなかった。できる限り、ボルシアMGが普段行っている育成をそのまま経験することだった。

「日本人が来るから日本食を出してほしいとか、日本人が過ごしやすいようにしてほしいというのはなくて。トレーニングに関しては、ドイツのボルシアMGがやっているメソッドを知ることで、それに対して私たちが勉強するものがあると思っていました」(佐藤)

 

 

 知りたかったのは、日本向けに整えられたボルシアMGではない。

「ありのままというか、向こうの子どもたちがやっている、そのものを知りたい。この年代におけるドイツの育成現場を生で見たいという思いがありました」

 何かを取り入れることを、最初から決めていたわけではない。自分たちとは違う環境で、同じ年代の選手たちは何を求められ、どのように育てられているのか。

 まずは、それを見る。そこに今回の遠征の大きな意味があった。そして、その希望にボルシアMG側も応えた。

 遠征のプログラムを作る段階から、アントラーズアカデミーが現在どのような育成を行っているのか、現地で何をしたいのかを確認しながら調整が重ねられた。

 当初提示されたスケジュールに対し、アントラーズ側からトレーニングの機会を増やしたいと要望すれば、グラウンドなどの調整を行いながら対応する。佐藤は、準備段階から「選手たちにとっても、コーチたちにとってもプラスになるような受け入れ方をしてもらった」と感じていた。

 その印象は、現地へ入ってからも変わらなかった。

 鈴木も今回の提携を振り返ったとき、最初に挙げたのはボルシアMGの受け入れ方だった。

「まずボルシアMGについて感じたのは、めちゃめちゃ歓迎してもらったことです。いろいろなところでマネージメントしてくれて、合宿においても、練習においても、僕たちにとっていい効果が出るようにしてくれました」

 食事やホテルだけではない。ピッチ内外で何か困ったことがあれば即座に対応し、日々のコミュニケーションでも選手やスタッフが活動に集中できるような支えがあった。

「海外遠征はこれまでに何度も行っていますが、特定のクラブに入って、こういう形で受け入れてもらうというのは初めての経験だったので。そういう意味でも『いい関係だな』というのは感じました」

 クラブ同士が提携する。言葉にすれば、それだけのことかもしれない。

 しかし、その関係があったからこそ、単に海外で試合をするだけではなく、ボルシアMGという一つのクラブの内側へ入り、その日常に触れる機会が生まれた。

 

 現地に入ると、ボルシアMGの拠点にはスタジアムがあり、いくつものグラウンドがあり、医療施設や宿泊するホテルもあった。充実した環境を目の前にしながら、鈴木が感じたのはスケールの違いだけではなかった。

「ちょっと田舎だったんですよね。本当に鹿嶋みたいな街で、すごく似ているところもあるなと思いました」

 遠く離れたドイツで出会った、どこか鹿嶋にも通じる風景だった。

 一方で、実際にボルシアMGの育成現場で目にしたものは、鈴木が事前に思い描いていたドイツサッカーのイメージとは違っていた。

「レッドブルとかザルツブルクみたいな、ゲーゲンプレスのイメージがありました。クロップさん(現ドイツ代表監督)のサッカーみたいに、前から行って、すごくアグレッシブなサッカー。そういうものを想像していたんですけど、正直、全然違いました」

 繰り返し選手たちに求められていたのは、単純な激しさだけではない。見ること。考えること。そして、自分で判断すること。アントラーズがこれまで大切にしてきた育成とは、異なるアプローチが目の前にあった。

 世界へ出れば、自分たちに足りないものが見つかる。それだけではない。違うものを見るからこそ、自分たちがこれまで積み重ねてきたものにも気づくことがある。

 ボルシアMGとの提携から生まれた、最初のドイツ遠征。アントラーズの指導者たちはそこで、「選手を育てる」ということを、これまでとは違う角度から見つめることになる。

 その違いは、選手たちが実際にボルシアMGのトレーニングへ入ったとき、さらに鮮明になっていった。