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 今年でプロ4年目に突入した関川郁万は、背番号を「5」に変更。新たな覚悟を胸に新シーズンへ臨んだ。

「アントラーズで1桁の番号を背負えるのは、ものすごく光栄なことだし、結果や責任感、覚悟は強くなってくる。主力だった2人のセンターバックが抜けた。その2人の穴を感じさせないように、自分自身もっともっと向上していきたい」

 しかし、開幕直後に思わぬ試練に直面した。2月26日のリーグ第2節川崎F戦、試合開始からわずか2分のこと。自陣でボールを奪われると、そのまま知念にシュートを決められ、失点を許してしまった。この試合は2万7千人を超える多くのファン・サポーターがカシマスタジアムに駆けつけ、特別な雰囲気に包まれていた。そんな中で生まれた痛恨のミス。その後、試合中に落ち着きを取り戻すことができず、前半のみで途中交代を命じられ、チームも0-2で敗戦した。彼がどれほどの悔しさを味わったのか、想像することもはばかられる。

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 ただ、そんな経験も郁万は成長の糧とした。助けになったのは、岩政コーチの存在だ。

「郁万を起用する選択をしたのは、私。最後まで迷ったが、彼にこの試合を経験させたいという思いが勝り、試合に出場させた。この経験をどう活かしていくかが、彼の今後に繋がっていく。そこは郁万が乗り越えるべきところだと思っている」

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 岩政コーチは現役時代に同じ「アントラーズのCB」としての看板を背負った。求められるレベルの高さや重圧の大きさは重々承知している。だからこそ、厳しくも温かい言葉を郁万にかけた。この逆境を乗り越えなければ、真の「アントラーズのCB」に辿り着くことはできない。高いポテンシャルを持ち、可能性を信じているからこそ、乗り越えて、進化して欲しい。そんな彼への期待が、岩政コーチの言葉から感じられた。

 そして、リーグ第3節柏戦。郁万は岩政コーチから「ラストチャンス」と告げられ、先発起用された。

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 すると、この試合で郁万は見事期待に応えてみせた。最終ラインでどっしりと構え、1対1で圧倒。恐れることなく、長短のパスを繰り出した。チームに安心感をもたらし、1-0での完封勝利に貢献。苦しみを乗り越えて掴んだ大きな1勝に、郁万も感情を爆発させた。

「川崎F戦は自分のミスから崩れて、チームが負けてしまい本当に悔しかった。ルヴァンカップでも試合に出られず、本当に苦しい1週間を過ごした。岩政コーチからラストチャンスと言われていたので、それに応えて無失点で勝てたのは自分のなかで大きく、チームにとっても、勢いが出る。素直にうれしかった。自分のなかでは、意味のある試合になった」

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 岩政コーチも試合後に郁万への賞賛を惜しまなかった。

「乗り越えるのは、いつも彼ら自身。僕が何を話したからというのはないと思っている。ミーティングの中では、彼らにやってほしい点を指摘したこともあるし、今日については「リセットしよう」という話もたくさんして、いろいろなアプローチをした。試合後にどんな声をかけたかは覚えていないが、彼らと抱き合って泣いている選手もいたので、涙をこらえるのに必死だった。僕自身も彼らの苦しみがまだ分かる歳で、まだ記憶に残っている。このクラブが持つCBに対する期待、クラブの中にある『勝たなければいけない』というプレッシャーが、かなりのしかかっていた。それをよく乗り越えたという話をした。0が一つ入るだけで、選手たちの心理はまったく変わってくるもの。そこを乗り切ってくれた」

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 その後、ルヴァンカップ大分戦、リーグ第4節神戸戦は欠場したが、リーグ5節湘南戦で先発復帰。勝利に貢献すると、直近のルヴァンカップG大阪戦でも先発し、セットプレーから貴重な追加点を決めてみせた。この活躍の裏側には、やはり岩政コーチの存在があった。

「大樹さんから、セットプレーの際のゴール前への入り方などを教えてもらって、みんなで聞いた。それを実行したら、フリーになって、ボールを頭に当てたら入った。そんな感覚だった。セットプレーで多くのゴールを取っている人のアドバイスは、やっぱり違う。大樹さんはアントラーズの『3番』を背負ってきたし、歴代の中でも最高のセンターバックだと思っている。尊敬しているし、身近にいてくれるなんて、こんな良い経験はない。話を聞いて、吸収できるものはたくさんある。一緒に戦えて楽しい」

 試合を重ねるごとに、CBとして求められるさまざまな要素がレベルアップした。「例えば、センターバックの前に落とすボールの出し方とか、守備における予測、準備、連係。そういったところは、今まで教わってこなかった部分。日々、新しいことを学んでいる」と、本人も成長の実感を嬉しそうに語る。

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「今まではコンビを組むCBに頼っていた部分があった。でも、これからは自分がディフェンスリーダーとして引っ張っていかないといけない」

 威風堂々たるCBとしての存在感を身に纏うが、今年でまだプロ4年目の21歳。ここからどれほどの飛躍を遂げるのか。関川郁万の活躍から目が離せない。

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