PICK UP PLAYER

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 YBCルヴァンカップ グループステージ第4節のアウェイ鳥栖戦。小泉慶は初めてトップ下に抜擢された。ほとんど経験のない不慣れなポジションだ。試合前には少なからず戸惑いを覚えていた。

「トップ下のポジションはヤスさんや聖真君、タロウがプレーしている。僕がトップ下のポジションに入って同じようなプレーというのは求められていないはず。相手の選手間でボールを受けなければいけないポジションだが、そのプレーを求められているわけではないと思う」

 自分をトップ下で起用する意図とは。何を求められていて、どんなプレーをすればいいのか。試合前に考えていたとき、ある一人の先輩の姿が目に止まった。

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「亮太くんから学んだことがあった。ボランチに加え、サイドバックやサイドハーフ。どこで出場しても、全力でチームが勝つためにプレーしている。ああいう姿を見てきて、自分もそうならないといけないなと思っていた。難しく考える必要はない。亮太くんみたいにやろうと思えた」

 永木が示し続けてきた姿勢は小泉の道しるべとなった。自分の武器はなにか。勝利のためにどんな貢献ができるのか。冷静に整理すれば、答えは見えてきた。

「ボランチと同じ感覚でやると少し違う部分がある。僕が使われる意図というのは、前線からのプレスやセカンドボールを拾うというところ。トップ下だから守備をしなくてもいいというわけではない。攻め込まれている時に前線で眺めているのではなく、懸命に戻って守備をするのが僕の役目。そういう部分を監督からは求められているのではないかと思う。試合中は色々なところに顔を出して、背後に抜けて、プレスもかけてと、自分のプレーでチームを助けていきたい」

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 この試合は2-2の引き分けに終わった。ただ、小泉は攻守両面で高い強度を示し、チームに大きく貢献した。これで指揮官からの信頼を勝ち取った。

 その後、ルヴァンカップの福岡戦でも高いパフォーマンスを披露すると、リーグ戦でも先発起用されるようになり、5月12日の名古屋戦や5月26日のC大阪戦でも勝利に大きく貢献する。相馬監督が求める「前線からの強度の高い守備」を誰よりも体現し、チーム全体へ進むべき方向を示した。チームを復調に導いた立役者の一人だ。

 しかし、第17節川崎F戦では思うようにチームが機能せず、小泉は前半のみで途中交代となった。以降はチーム事情もあり、トップ下での起用が減少。チームは復調する一方、小泉は再びボランチやサイドバックで連戦のローテーション起用が主となった。

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 ただ、どんな起用法でも彼は勝利のために戦い続けた。複数のポジションで起用される違和感も「言い訳にしてはいけない」ときっぱり言い切り、「どこで出場しても勝つために、どのようなプレーをすればいいのかを考えてやりたい」と力強く語る。

 そして、たとえ先発の機会が減りようとも、「スタメンで出れる選手、出れない選手がいるけれど、一体感をもってやれているし、出ている選手が出ていない選手の分まで頑張ろうという空気がある」と話し、「一つひとつの練習メニューに対して、100%で取り組むこと」と前を向いていた。

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 アントラーズでプレーした選手は口を揃えて語る。「頑張っていれば必ずチャンスは訪れる」。「必ず見ていてくれる」。もちろん小泉はそれを理解している。

「『球際を強く』と相馬監督は強調して話している。高いプレー強度を続けていれば、アントラーズは強い。チャンスも多く作ることができる。その球際の部分や、セカンドボールを拾うという部分が普段のトレーニングからも、ベンチから試合を見ていても、途中から出場しても、今まで以上に強くなっているなと感じる」

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 天皇杯3回戦、カテゴリーは下の相手だが、決して油断は許されない試合だ。ただ、どんなときでも全力を尽くし、チーム全体に戦う姿勢を示せる彼であれば、その心配はいらないだろう。

「相馬監督になって、選手全員の戦う意識がより強くなった。このチームは球際や空中戦、セカンドボールの部分で戦えれば、絶対に負けることはないと思う」

 起用されるかはわからない。ただ、ピッチに立てば、彼はどんなときでも勝利のために全力を尽くす。背番号37、小泉慶。これからも熱く激しく戦う姿を見せてくれ。

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