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 杉岡大暉にとって、昨季はプロ入り以来、最も苦しい1年だった。公式戦の出場はわずか8試合。移籍前に思い描いた未来にはならなかった。

 ただ、そんな苦しい状況でも、フットボールと真摯に向き合い、ひたむきに日々のトレーニングに打ち込んだ。本人も「プロになって一番試合に出られなかった1年だったけど、ポジティブに捉えて、腐らずにやってきた自信はある」と、その自負を語る。そして、自問自答を繰り返した先で、ある答えへ辿り着いた。

「まずは個の力をチームに示さなければ生き残れないということ。それを学ばせてもらった。そもそも湘南のプレーを見てオファーをくれたわけだし、そのプレーを求められていると気づいた」

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 ふと気づけば、チームに合わせようとするあまり、自分の長所を発揮できなくなっていた。ポジションを争う永戸はキックの精度や視野の広さを武器にする選手だが、杉岡は運動量や空中戦の強さを長所とする。プレースタイルまで変える必要はない。足りない部分を改善しながら、自分の武器を前面に出すことが求められていると気づいた。

「上下動する回数を増やして、サイドを制圧するのが自分の仕事。堅実に守ることだけなく、積極的に仕掛けていきたい。ひと皮むけてチームに貢献したい」

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 2年目の今シーズン、もう迷いはなくなった。すると、徐々にプレーに積極性が生まれ、持ち味である前への推進力をみせられるようになった。そして、ついにYBCルヴァンカップのグループステージ第4節鳥栖戦で真価を発揮する。セットプレーからヘディングで同点弾を叩き出すと、絶好のクロスでチームの2点目をお膳立てした。

「セットプレーで得点に絡んでいきたいと思っていたので、そのプレーをピッチで表現することができて良かった。また、2点目のクロスの質は、加入当初から意識してきた部分。そのクロスが結果に繋がった。試合に出ることができない状況が続いたが、そんな中で僕ができることはチャンスを貰った時に結果を残すことだけだった。これから自分の良さをもっと出して、アピールしていくことが試合に出ることに繋がっていく」

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 この試合で自信はさらに深まった。勢いづいた杉岡は、5月12日のアウェイ名古屋戦で加入後初となるリーグ戦でのゴールも記録する。

「個人的には苦しい時間が続いた。だけど、ひたむきにやってきて良かった」

 試合後のフラッシュインタビューでみせた表情は晴れやかだった。

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「ここを乗り越えた先にある成長は大きいと思っている」

 苦しみを乗り越えた背番号5に、もう迷いはない。プレー同様、あとは前進するのみだ。ポジション奪取へ。強い決意を胸に、杉岡大暉は左サイドを縦横無尽に駆け回る。

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