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 デビューイヤーとなった昨シーズン、染野唯月は「自分を出せた」と胸を張れる場面を1つ持っている。

 昨季の明治安田J1第10節の神戸戦、途中出場した染野はゴール前で素早く反転すると、密集をすり抜けるかのようなパスで荒木の同点弾をお膳立てした。染野の武器である広い視野と技術力が発揮された場面だった。本人も手応えをこう語る。

「自分でシュートする選択肢もあったけど、落ち着いてパスを出すことができた。周りを使うという自分の特長が出せた」

 昨季はリーグ戦12試合に出場し、ルヴァンカップの清水戦ではプロ初ゴールも記録した。高卒1年目のルーキーの成績としては決して悪くはない。ただ、本人は1年目の出来に微塵も満足していない。「出ている試合数に対して、結果が比例していない。やっぱり自分はFWなので、点を取らなければいけない。もっと貪欲にやってもよかったと思う」と語り、悔しさを滲ませた。

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 そして、プロ2年目の今シーズン。染野は開幕前の宮崎キャンプから課題として「守備の改善」と「得点という結果にこだわること」を掲げた。

「改善しないといけないのは守備の部分。そして、FWとして得点を決めるという部分。それが自分に必要なところ。得点を取れていないところが自分の評価が低い理由でもある。とにかく点を取りたい」

 強力なライバルとの競争に勝ち、出場機会を手にするためには、結果にこだわってプレーする必要がある。トレーニングから意識的に課題克服に取り組んだ。

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 すると、その成果はいきなり発揮される。今季公式戦初出場となったルヴァンカップの鳥栖戦で、染野はいきなり結果を残してみせた。2点をリードして迎えた71分、味方が相手陣内でボールを奪われた瞬間に、染野は素早い攻守の切り替えで相手からボールを奪う。これが白崎のもとへ渡り、白崎から染野へラストパスが送られた。染野はワントラップから冷静にGKの動きを見極めて、右足でシュートを放つ。これが見事ゴールネットを揺らし、試合を決定づける3点目を奪った。

「シラくんからいいパスが出て、本当に決めるだけだった。ただ、一個前の守備のところで、自分が早く切り替えて、ボールを奪えたことが得点につながった。得点を取ってスタートできたことは、自分にとって良い流れだと思う」

 染野は得点場面をそう振り返った。まさにトレーニングで取り組んできた成果が結果となって現れた場面だった。

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 しかし、その後は出場時間が短いこともあり、結果を残せない状況が続いている。味方を活かすプレーはみせたものの、個人としての見せ場はつくれない。直近のリーグ神戸戦でも68分から途中出場したが、チャンスに絡むことはできなかった。

「もっと貪欲にやっても良かったと思う」

 得意とする『周囲を活かすプレー』はチームに大きなメリットをもたらすし、自身の特長としてブレずに持ち続けるべきだ。ただ、今よりもさらに『貪欲さ』をピッチ上で発揮できれば、さらに『周囲を活かすプレー』が活きてくる。

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「自分はFWとして勝負がしたい。点を取って、チームを勝たせられる選手になりたい」

 周りを活かした上で、自らも『貪欲に』得点を狙う。染野唯月がゴールネットを揺らせば、アントラーズはまた新たな武器を一つ手に入れる。

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