PICK UP PLAYER

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 学生時代の関川郁万は、常にチームの中心に君臨し、当たり前のように試合出場を勝ち取ってきた。流通経済大付属柏高校で1年生から主力としてプレーし、2年生でインターハイ優勝、選手権準優勝、3年生でも選手権準優勝と輝かしい実績を残した。とにかく負けず嫌いで勝気な性格だ。当然、プロで活躍していく自信もあった。

 しかし、練習前の準備、食事への意識、練習に向かう姿勢、すべてが高校とプロでは桁違いだと思い知らされた。試合に出ることが当たり前だった高校時代から状況は一変し、ベンチメンバーからも外れる。プロ1年目の公式戦出場はわずか3試合のみに終わった。ピッチに立てない日々は「苦しかった」し、「心も折れそうになった」という。

 それでも、持ち前の負けず嫌いを発揮し、努力を続けた。自らのプレーを反省し、どのように改善すべきか考え続けた。「高校では『俺が、俺が』でプレーしていたけど、プロに入ったらそのままでは通用しない。力任せではなく、頭を使った守備をしたい」と意識改革に取り組んでいく。そして、課題と語る「集中力の持続」を克服するために、「声を出し続けること」を意識してトレーニングを行っていた。

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 プロ2年目の昨シーズン、自問自答を繰り返し、課題の克服に取り組んでいた関川に、いきなりチャンスが舞い込んだ。宮崎キャンプで好パフォーマンスを披露すると、ザーゴ監督の信頼を掴み、Jリーグ開幕戦のスタメンを勝ち取ることに成功した。

 だが、新型コロナウイルス感染拡大防止による約4ヶ月間の中断期間が明けると、出場機会は遠のいた。ポジションを取り返した期間もあったが、シーズン終盤はライバルの町田が優先的に起用され、結局、リーグ戦の出場は15試合のみに止まった。本人としても「試合に絡める回数は、プロ1年目より多かったけれど、そのなかでできたこと、できなかったことがはっきりした」と、多くの課題が見つかったシーズンとなった。

 そして迎えたプロ3年目。シーズン開幕前にCBの序列を覆すことはできなかった。それでも、3月3日のルヴァンカップ鳥栖戦で先発し、チームの完封勝利に貢献すると、3月17日の第5節福岡戦で今季リーグ戦初の先発出場の機会を得る。

 しかし、ポジション奪取への強い決意を胸に試合へ臨んだが、その気合いは空回りしてしまった。37分に行ったスライディングタックルが危険なプレーと判断され、一発レッドで退場処分を受けてしまう。チームも0-1で敗戦し、巡ってきたチャンスを活かすことはできなかった。彼がどれほど悔しい思いを味わったか、想像に難くない。

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 ただ、どんな選手でも必ずミスは犯す。そこから這い上がれるかどうか。彼はプロ入りからの3年間、何度も壁にぶつかりながら、地道な努力で乗り越えてきた。困難もすべて成長の糧にして、前に進み続けてきた。一つの失敗で挫けるような選手ではない。

 リベンジの舞台はすぐにやってくる。リーグからルヴァンカップへ大会を移し、再びアビスパ福岡との対戦だ。この試合は、U-24日本代表に招集された町田が欠場するため、関川にとって、自らの存在をアピールする絶好のチャンスとなる。リベンジへの思いも含め、本人も沸々とモチベーションを高めていることだろう。

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「小学生のときに練習を見学したことがあるので、今こうしてアントラーズの一員でいられるのは、不思議というか、すごく光栄なことだと感じる。クラブ創設30周年の節目のシーズン。タイトルを獲らないといけない。その瞬間に、もちろん自分もピッチに立っていたい」

 目標を果たすためには、真価を発揮する必要がある。そして、逆境を乗り越えれば、必ず進化を遂げられる。

「“この1試合が人生を変える“くらいの意識で臨まないといけない」

 誰もが認める“アントラーズのCB”になるためにーー。20歳、関川郁万が“人生を変える“試合に臨む。

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