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「学ぶことの多かった1年だった」

 関川郁万は昨年をそう振り返った。練習前の準備、食事への意識、練習に向かう姿勢、すべてが高校とプロでは桁違いだと思い知らされたーー。

 流通経済大付属柏高校では、1年生から主力でプレーし、2年生でインターハイ優勝、選手権準優勝、3年生でも選手権準優勝を果たした。常にチームの中心に君臨し、当たり前のように試合出場を勝ち取ってきた。とにかく負けず嫌いで勝気な性格だ。自信をもってアントラーズに加入した。

 しかし、プロの世界は厳しかった。高卒1年目にして、AFCチャンピオンズリーグの慶南FC戦で先発デビューを果たしたものの、「主力の怪我や出場停止で巡ってきた出番。自分で掴み取ったチャンスじゃない」と、喜ぶことはできなかった。公式戦の出場はわずか3試合のみ。不甲斐なく、もどかしい1年だった。

 試合に出ることが当たり前だった高校時代から状況は一変し、己と向き合う時間も増えた。加入当初は、「試合に出られない、思い通りにならない経験も大事だなと思って、アントラーズを選んだ」と、覚悟を決めて臨んだつもりだったが、想像以上に辛かったと言う。ピッチに立てない日々は「苦しかった」し、「心も折れそうになった」。

 だが、それでも、持ち前の負けず嫌いを発揮し、努力を続けた。自らのプレーを振り返り、足りなかった部分を見つける。どのように改善すべきか考える。そして、課題改善に取り組む。地道に己と向き合う作業を続けた。

 自問自答を繰り返す最中、改善しなければいけない弱点を見つけた。それは『集中力』だ。センターバックは、90分通して、一瞬の隙も見せずに、守り抜くことが求められる。対戦相手のレベルが上がれば、上がるほど、一瞬の隙を突いてゴールを狙ってくる。高校レベルでは持ち前のフィジカルでカバーできた範囲でも、プロでは失点に直結、すなわち、勝敗に大きく繋がってしまう。

 取り組むことは明確になった。「デビュー戦で健斗くんとコンビを組んだとき、声で周りを動かしていた。自分はまだそれができないけれど、声を出し続けていれば、集中力も保てるかもしれない」と、意識改革で少しずつ短所を消していった。

 迎えたプロ2年目の2020シーズン、1年目の弛まぬ努力が飛躍に繋がった。ザーゴ監督の求める後方からのビルドアップにいち早く適応した関川は、指揮官から高い評価を得て、YBCルヴァンカップ名古屋戦、リーグ開幕戦と2試合連続でスタメンの座を掴んだ。公式戦の中断期間明けは、しばらく出場機会を失ったが、第10節神戸戦で先発出場すると、持ち前の足元の技術と積極的な守備を披露し、再び指揮官の信頼を勝ち取った。そして、第12節G大阪戦からここまで4試合連続で先発出場を果たしている。センターバックのポジションを確保する絶好のチャンスが訪れた。

 若くて貪欲なCBは決意に満ちた目で語った。「“この1試合が人生を変える“くらいの意識で臨まないといけない」。19歳、関川郁万。勝利のために戦う覚悟はできている。

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