PICK UP PLAYER PART4

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「まだまだスタメンに定着し切れていない。そこにしっかり向き合って、今季が終わったとき、『やりきったな』と納得できるようなシーズンにしたいです」

 永木亮太は決意を胸に2019シーズンへ臨んだ。昨季は「最初から出た試合が少なかったので、100%貢献したという実感がない」と不完全燃焼に終わっていた。

 今シーズンは開幕前に設定した目標は十分に達成できたと言えるだろう。本職のボランチのみならず、右サイドバックとして起用され、リーグ戦の出場時間はチーム4位となる2,424分を記録した。ACL、YBCルヴァンカップ、天皇杯でもコンスタントに出場を続け、チームに欠かせない存在として1年間フル稼働した。

 本人もここまでのシーズンを振り返り、「怪我なくできたのが良かったです。リーグ戦もカップ戦も、コンスタントに試合に絡めたのは、自分の最低限の目標でした。自分が鹿島に来てから、一番出場時間も長かったですし、そのあたりは自分も満足しています」と目標達成の喜びを話してくれた。

 だが、話す表情は晴れやかとはいえない。「チームの結果が結果だったので、全く満足していないです。リーグ戦でも、1度首位に立ってからの自分たちの戦い方に関しては、悔しい想いが残るというか、もっとできたんじゃないかなと思います」。シーズン終盤の戦い方に責任を感じていた。チームをもっと変えられたのではないか、そうすれば、得られる結果は変わっていたのではないか。

 今季から副キャプテンに就任した永木は、これまで以上に「周りの選手への声かけ」や「自分自身の立ち振る舞い」を意識していた。苦しいときほど、チームを鼓舞し、まとめ、正しい方向へと導く使命があると感じていた。それだけに、シーズン終盤の失速は、自らの不甲斐なさを感じずにはいられなかった。

 「精神的な支柱になっていた満男さんが抜けたので、自分とかヤスとかが練習中から、声で、姿勢で、引っ張っていくことは、今までで一番できたかなと思います。ただ、この結果だったので...まだまだ足りなかったのだと思います」。悔しさを噛みしめながらも、話す表情は決意に満ちていた。「反省を今後に活かさなければいけない」。その目は天皇杯へと向いていた。

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 そして、永木にはもう一つ負けられない理由がある。大岩剛監督の退任だ。

 2016シーズンに湘南からアントラーズへ加入した永木だが、移籍当初は、古巣とのスタイルの違いに苦しみ、なかなか自らの持ち味を出せない日々が続いていた。「自分の良さは前に出ていくことだったり、守備のときは前からボールを追って奪うところだったりするのですが、鹿島の戦術とは少し合わない部分があるんです」。チーム戦術に合わせると、自分の強みが出ない。だが、自らの強みを出そうとすると、バランスが崩れる可能性がある。なかなか最適なバランス、解決策を見出せなかった。

 そんな迷いの中にいた永木をサポートしたのが大岩監督だった。コーチを務めていたときから永木へ『自分の良さを鹿島の戦術の中で出していけ』、『自分の長所は消さなくていい』と声をかけていた。永木はこの言葉に「自分の中でも少し思い切ってやってみようと思いました」と、勇気をもらったという。いまもなお、そのときの感謝の気持ちは忘れていない。

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「剛さんに有終の美を飾ってもらいたい。剛さんと長くやってきて、いい形で別れたいです。選手たちも、タイトルを獲らないといけないと思っています」

 背番号6は覚悟を決めていた。タイトルを失った雪辱を果たすためにも、指揮官への感謝を示すためにも、絶対に天皇杯を獲る。永木亮太の活躍が、アントラーズを栄光へと導く。



PART1 犬飼智也編はこちらからご覧ください。

PART2 土居聖真編はこちらからご覧ください。

PART3 三竿健斗編はこちらからご覧ください。

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