PREVIEW

photo

「アントラーズファミリー全員で、喜びを共有できるチャンスがあります。私の最後の仕事は、選手たちとともにその頂点に立ち、皆さんに最高の歓喜を与えること、それだけです。すべては勝利のために、一丸となって戦えるよう、最後まで後押しをしてもらえればうれしいです」

 12月11日、大岩剛監督の今季限りでの退任が発表された。「長いようで短かったな...」。クラブハウスで囲み取材に応じた指揮官は、懐かしむように約2年半の在任期間を振り返った。

 今季は怪我人の続出、主力選手の海外移籍など、打つ手のない部分で不運が重なり、チームマネジメントは困難を極めた。ローテーションを上手く活用しながら、チームの戦力を可能な限り維持して、全ての大会でベスト8以上の成績を残したが、あと一歩のところで、タイトルには手が届かなかった。

「アントラーズはタイトルを義務付けられたクラブです。その中で今年、Jリーグ、ルヴァンカップ、連覇を目指したACLを獲れなかったことは自分の力不足であり、本当に申し訳なく感じています」

 2003年に選手として加入して以来、コーチ、監督と立場を変えながら、アントラーズのために戦い続けてきた。この地で求められるレベルが高いことを身にしみて知っている。

「Jリーグのタイトルを獲れなかったというのは、非常に大きなポイントの一つですし、このクラブは常にタイトルを義務付けられていて、2位、3位じゃダメなので。その責任はしっかり受け止めたいと思っています」

 責任をとる必要があると感じた。自ら強化部へ話し合いを申し出て、天皇杯を最後に監督を退任することが決まった。

 選手時代も含めれば、約16年間もアントラーズのために戦い続けてきた。新たな出逢いと別れを激しく繰り返すフットボールの世界に身を置いていても、寂しさを感じずにはいられない。

photo

 選手たちに指揮官との思い出を聞いてみると、「どんな監督、選手であっても変わらない」という前置きの上で、誰もが指揮官への感謝の気持ちを熱く語ってくれた。「剛さんがいたからいまの自分があります」、「本当に感謝しかないです」、「選手としてだけでなく人間的にも大きく成長させてもらいました」...。同じ目標を掲げてともに戦い、同じ時間を共有してきた固い絆が感じられた。

 「剛さんに有終の美で終わってもらいたい。剛さんと長くやってきて、いい形で別れたい。選手たちもタイトルを獲らないといけないと思っています」。永木亮太が選手全員の気持ちを代弁してくれた。

 想いは一つ。様々な思い出と感謝を胸に刻み、指揮官とともに戦う。元日決勝へ。勝利のみを目指して準決勝へ臨む。

pagetop